天狼院書店はオワコンなのか?《超☆三浦書店》
記事:天狼院書店店主 三浦崇典
いつもありがとうございます。
天狼院書店店主の三浦でございます。
先日、SNSなどで、「コロナで実質的に休眠していた池袋の一店舗目、天狼院書店東京天狼院を”超☆三浦書店”として5月1日にリニューアル・オープンする予定です」と告知しておりましたが、5月1日のリニューアル・オープンを断念致しました。
この日に、期待をかけて待ってくださっていた皆様には誠に申し訳なく、お詫び申し上げます。
近日中に、新しいオープンの日程など、ご報告できればと思っております。
期待されていた方には大変申し訳ありませんが、実は、問題なのは、オープンできなかったことではなく、”オープンしなかったのに、ほとんど波風が立っていないという現実””の方です。
肌感覚として、または客観的事実として思うことは、書店としての天狼院に期待してくださっているのは、天狼院のファンの皆様であり、世の中的には期待は薄いということです。
たとえば、僕がマーケティングのコンサルタントとして、今の天狼院に入ったとしたら、客観的にどう考えるだろうかと考えました。
有り体に言ってしまえば、天狼院書店は、コロナ前からゼミや部活や旅や演劇など、イベント方面に力を入れて成長を遂げてきました。利益率の観点からすれば、資金が潤沢ではなく、頼りない僕の個人貯金から始まった業態を持続可能にするためには、粗利率が高い事業に戦力を集中すべきだろうという結論になるだろうと思います。
すなわち、粗利率が高い事業とは、カフェであり、イベントということになります。当然ながら、粗利率が極めて低い書籍に注力しては、持続可能性が十分に担保できると言い切れません。
理想論としては、書籍のみで、全従業員の給与を確保し、その他販管費も、銀行からの返済も賄うことでしょうけれども、財布を持った人の往来数が、直接的に売上や配本に影響する書店業を本腰を入れてやろうとしても、当然、後発であり、資金がない天狼院書店では、必要な往来を担保できる不動産も、膨大になる当初在庫の費用も、そして、実績にも影響される配本も確保することができません。
当初から、正攻法では持続可能性が保てないことがわかっていたので、2013年9月に新業態としてオープンした「天狼院書店」は、”READING LIFEの提供=本だけではなく、その先の体験までも提供する書店”をストーリーに据えました。そして、2022年の現在も、このストーリーを継続して使っています。
当初、このモデルは、メディアにもてはやされました。
今でも、メディアの方々に取り上げられることは多くありますが、オープン当初は今の比ではありませんでした。
書店にこたつを置いたら、テレビが来て、こたつを冷やしたら、テレビが来るという有様でした。
書店の新業態ということで、珍しく、アクティブであり、挑戦も続けていて、取り上げやすかったのでしょう。
冷静に判断するに、天狼院書店オープンから数年間は、このメディアの素材になることによって、まともにマーケティング的恩恵を受けました。テレビや雑誌、ラジオなどで当たり前のように毎月取り上げられることによって、決して往来がある立地でなかったとしても、新規のお客様が来店され続けました。
ただ、当時から、僕は気づいていました。
その熱狂は、長くは続かないと。
冷めないうちに、持続可能な業態、つまりは、お客様に絶対的に必要とされる業態へと成長し、それを維持できる組織を構築しなければならないと考えていました。
成長のポイントとして、僕が勝負をかけて設定したのは、2020年でした。
2019年まで天狼院書店は出店で経費を大きく計上しながらも、指数関数的に成長していました。
2020年は東京オリンピックも予定されており、インバウンドのお客様が爆発的に増えることも予想され、ここがチャンスだと考えました。
ここに新しい店舗を4店舗一気に投入して、組織も拡大し、持続可能性を確保してしまおうと考えましたーー
言うまでもなく、このときに襲ったのが、新型コロナでした。
この静かなる災害は、およそ2年という長期間に渡って、天狼院書店とその業態に対して、大きなダメージをもたらしました。最悪想定としてとして、コロナ禍は2年続くという数値想定もしましたが、それはどこかファンタジー的であり、1年ほどで終息するはずだと、今思えば、楽観しておりました。
正直、今なおピンチの只中にいますが、その災害の中でも、天狼院書店は全国のお客様からのご愛顧とスタッフの奮闘によって、何とか全店存続できる見通しが立って参りました。我々は、コロナ禍でズタズタになった財務状況を立て直しつつ、未来に新しい手を打つ必要があります。
その一つが、回復後の未来に投下予定の、新型統合店舗のプロトタイプ「超☆三浦書店」のプロジェクトです。
このプロジェクトの骨子が、「本と読書を販売することを中核に据える」というもので、聞く限りにおいては、真新しいものが何一つないでしょう。ただし、この2年間コロナ禍で苦しむ中で、光明のように見出してきたことがありました。
それは、それでもなお、本を売りたい、ということでした。
弱小ながら持続可能性を担保するために、粗利率の低い書籍の販売は、どうしても優先順位を下げざるを得ませんでした。
これでも、僕がそもそも売りたかったのは、こたつでもカフェでもありません。
本、でした。
これを中核に据えた天狼院の新しい業態が、未来に存続するかもしれない、と日々、計算とシミュレーションを繰り返しました。今、その構想をまとめるために使用した手書きのシートが手元にありますが、その数は、ほとんどA3の大きさで、実に172枚に及びました。
そのシートを客観的に眺めると、自分のことながら、もはや、狂気としか思えません笑。
ただし、そのモデルはあまりに業態として新し過ぎて、すぐに業界には受け入れられることはないでしょう。
天狼院書店の構想が、当初、理解されなかったように、これが浸透するにはちょっと時間がかかるかもしれません。
ただ、僕が信じていることがあります。
天狼院書店の現在のお客様と、まだ見ぬ未来のお客様なら、理解してくれるだろうと。
なぜなら、業態や仕組みを変えるのは、業界の人間ではなく、常に実際に購買してくださるお客様だからです。
業界や仕組みは、遅れてそれに対応するだけでしょう。
未来の新型統合店舗のプロトタイプ「超☆三浦書店」のプロジェクトは、天狼院の10周年、つまりは2023年9月26日以降にオープンする店舗を前提として想定しています。
天狼院の10周年での変革に関しては、すでに走っている、
読書量を200%にする「天狼院読書クラブ」のプロジェクト
副業を受け入れる「解放区」のプロジェクト
があります。それに匹敵するか凌駕するプロジェクトが「超☆三浦書店」のプロジェクトとなります。
なぜ、変革をしなければならないのか?
理由は簡単です。どんなに新しいことをやっているからと言って、10年もすれば、”オワコン”だとみなされるようになると考えるからです。その前に、天狼院書店は自己変革を遂げる必要があります。
まったく資金もないのに、この時代にまがいなりにも書店として船出をして、10年も持てば立派なものだと、自分でも思いたくなります。けれども、人生はまだまだ続きます。また全国の多くのお客様は天狼院に期待してくださっています。そして、天狼院書店にできることは、まだまだ無限にあると、至極冷静かつ客観的に考えています。
僕らにしかできないことがある、と。
この記事は、迷い、壁にぶち当たりながらも正直に、「超☆三浦書店」のプロジェクトについて、主に自分の頭を整理するために、不定期で書いていこうと思っております。
5月1日にオープンを想定していた業態は、契約・交渉等が思うように進んでおらず、変容すると思いますが、面白い形とモデルを必ず創り上げようと思っています。
皆様に公開する日は、そう遠くないと信じております。
これからも、天狼院書店と「超☆三浦書店」のプロジェクトをどうぞよろしくお願いします。