毎月、秘本を売ればいいじゃないか《超☆三浦書店》
記事:天狼院書店店主 三浦崇典
いつもありがとうございます。
天狼院書店店主の三浦でございます。
天狼院書店には、2014年の谷津矢車先生の名作『蔦屋』に始まり、現在12代目まで発売している「天狼院秘本」という大人気オリジナル商品があります。
歴代の秘本は、ありがたいことに1,000冊の販売数を超えることは当たり前で、2,000冊を超える作品もあります。
そういうと、数値に強い方からは、
「それなら、毎月秘本を出せば、かなり儲かるじゃないか」
と言われることがあります。
スタッフから、
「店舗ごとに、秘本を出したい!」
と言われたことは、一度や二度のことではありません。
たしかに、送料手数料をいれると、2,000円を超える天狼院秘本を毎月発売できれば、かなりの売上になるのは間違いありません。
けれども、僕はそれらに対して、首を横に振り続けて来ました。
天狼院秘本は、天狼院書店の”ブランド”だと僕は考えるからです。
”ブランド”を薄める行為は、未来の自分の首を締めることになります。
名匠リドリー・スコット監督の映画『アメリカン・ギャングスター』で、デンゼル・ワシントン扮する麻薬王が、安くて純度が高い”ブルーマジック”を薄めて”ブルーマジック”として売っているキューバ・グッディング・ジュニアが扮するマフィアに、こう言うシーンがあります。
「”ブルーマジック”を薄めて売るのはやめてくれ。そのまま売っても、十分に稼げるはずだ。それ以上を望むのは欲深というものだ。薄めて売るなら、名前を変えてくれ」
当然、麻薬は犯罪ですが、ここにビジネスの要諦が詰まっているように思えるのです。
秘本を薄めてしまえば、秘本ではない。
見た目は秘本だが、それは薄められたカルピスのようなものだ。
未来の新型店舗のプロトタイプ「超☆三浦書店」を、今、まさに僕は準備している最中ですが、「超☆三浦書店」では、本と読書を売ることがビジネスの核になります。
秘本を薄めて売らないのだとしたら、どうやって、本を売り伸ばすのか?
お客様に勝ってもらうのか?
秘本ではない、新しい概念を複数一気に投入しようと考えております。
当然、在庫数でいえば、近隣のジュンク堂書店池袋本店さんや三省堂書店さんに比べるべくもないでしょう。
それでもなお、「超☆三浦書店」にお客様がいらっしゃる理由を、僕は構築しようと考えております。
すべては、見たことも聞いたこともない仕掛けだろうと思います。
そのすべては、いつか店長になったときにやろうと考えていたことです。
ん? 店長?
と思った人もいるかもしれません。
おかしいですよね、社長が店長になるのは、ある意味、降格人事ですよね笑。
でも、コロナ禍が過ぎ、ビジネスとしての天狼院書店が安定してきたら、小さな店舗で、自分が選書した本だけを置く、書店の店長をやりたいと前々から思っていたのでした。
ある意味、僕の夢です。
原点回帰とも言えますが、実は、そうではないんです。
2013年9月26日に、天狼院書店の1店舗目、天狼院書店「東京天狼院」を池袋にオープンしたその日から、一度も、自分が納得した店舗を作ったことがありませんでした。
思い返せば、8年半以上前、慌ただしくオープンを迎えたあの日も、正直言えば、
「まだ、やり残した途中なのに、仕方がないからオープンしよう」
と、オープンしました。
話題になり、マスコミに取り上げられても、新店舗をオープンしても、僕が店長なら、こうやるのにな、こうやりたいな、というのが尽きたことがありません。
いつか、理想の本屋を作ろうと思っていました。
幸か不幸か、天狼院書店は、生まれた瞬間から拡大する宿命を追った業態でした。
それは、天狼院がオープンする際に、
「お客様のご要望に応じて、iPS細胞のように自在に進化する書店」
を標榜したからでした。
僕の理想の本屋を創る理想は、実は、果たされていません。
2025年以降の新型統合店舗にその本格的な実現を託すことになるでしょうが、その前に、実験室として、「超☆三浦書店」である程度、その可能性を試してみたいと考えております。
本が飛ぶように売れ、本がアクターのように輝き、本で人生が変わり、読書量が絶大に向上する書店ーー
考えれば考えるほど、ワクワクします。
実現まで、少々、お時間をいただければと思っています。
どうぞよろしくお願いします。