布一枚を広げたら
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小桜(ライティング・ゼミ集中コース)
我が家のダイニングテーブルには、布が一枚かけられている。テーブルクロスというやつだ。
「なんか気取った家だな」なんて思わないでほしい。
お客様がくるわけでも、気取っているわけでもないのだが、ただなんとなくテーブルクロスをかけたくなるのだ。
元々実家の食卓にはテーブルクロスがかかっていた。さらにはそのテーブルクロスを保護する透明のビニールクロスもセットで。よくあるあれです、昭和の風物詩的なあれです。あの頃のクロスってなぜか大体チェックか花柄なんだよな。
ともかくそんな食卓にテーブルクロスを欠かさない母親のもと育った私は、食いしん坊なことも乗じて、テーブル回りのあれやこれやに興味を持つようになった。ヨーロッパの歴史ある洋食器、味のある和食器。食卓を彩る器やカトラリーはなんとも多種多様で見ていて飽きない。母も同類だったのだろう。お陰で実家の食器棚はあふれかえっていた。
ある時知り合いからチケットをもらったことをきっかけに、テーブルコーディネートの催事に行くことがあった。
普段はスポーツのイベントが行われる広大な敷地内に、所狭しとテーブル回りにまつわる様々なものが展示販売されているのだ。
入口のスタンド席最上階からその光景を見下ろして、わくわくした。と同時に「これはお財布の紐を締めてかからんとえらい目にあうな」そんな予感がよぎった。
そしてそんな自分への忠告はあっさりと忘れ去られ、ほどなくして両手いっぱいに戦利品を抱えた私は、満足感いっぱいにその会場を後にしようとしていた。
その時だ。ひらひらと、たくさんのカラフルな布が目に飛び込んできた。
「きれい……」歩き疲れた足が自然と吸い寄せられていく。
そこはテーブルクロスを売っているお店だったのだ。
家でいつも見るあれとなんか違う。こんなにかわいくてきれいなテーブルクロスがあるんだ! 胸が躍った。
これが、“昭和”のテーブルクロスが“平成”に塗り替えられた瞬間だ。
この体験をきっかけに、実家を出て一人暮らしをするようになってからも、自然とテーブルクロスをかける習慣が身についた。
使ってみると、こんなに手軽で、絶大なイメチェン効果を発揮するインテリアは他にないのではないかと思う。
布一枚をテーブルに広げる、それだけ。だけどその色や柄が部屋の中で占める割合が大きいので、存在感を発揮するのだ。
カーテン替えようと思ったらこうはいかないだろう。フックの付け替えは面倒だし、そもそも替えを用意するにも金額がバカにならない。何より洗うのが重労働だ。
食卓に広げるテーブルクロスは、料理のスパイスにもなってくれる。
今日はもう何も作りたくないそんな時、お惣菜を買って帰ったり、「今夜私がいただくのは……」とポチッと届けてもらった時だって、サッとテーブルクロスを広げるだけでちゃんとした食事になる。
まとめて作りすぎた肉じゃがを、三日三晩食べ続けなくてはならない時だって、クロスやランチョンマットを変えるだけでなんだか違う味付けに錯覚できる。
たかーいとこからコショウやオリーブオイルを振りかけなくても、テーブルファブリックがいい味だしてくれるのだ。
これは最高の手抜きアレンジなのでは!? なんて半分冗談、半分本気で思ったりもする。
楽することばかりに目がいってしまったが、特別な食事や季節感を演出してくれるのに役立つのもテーブルクロスだ。というか本来こっちがメインなのか?
春には桜のようなピンク色のクロスを広げよう。白い器に春野菜を盛りつければ、鮮やかなグリーンがきっと映える。少し季節が進んでラベンダーが咲く頃、淡い紫色にイエローを差し色に加えたら、気分は南仏プロヴァンスだ。
夏はやっぱり涼し気なブルーがいいな。ガラスの器ふんだんに使って「涼」を演出したら、夏バテ気味で減退していた食欲も復活するかもしれない。
秋はオレンジやプラムカラーのこっくりとした色に、黒を効かせてメリハリをつけよう。ハロウィンのご馳走や、ボジョレヌーボーをおいしくいただくにはピッタリだ。
冬は一年で一番テーブルコーディネートのやりがいのある季節! クリスマスカラー定番のグリーンとレッドもいいが、ここは少し大人っぽく、ブルーとシルバーでまとめようか。グリーン×ピンクのポップな組み合わせもかわいいかもしれない。
年の初めのお正月は、初心に帰って白を基調にゴールドを利かせよう……。
テーブルの上一つで、こんなにもカラフルに楽しめるのだ。
そしてそこにはいつも、おいしい食事が待っている。腕によりをかけた料理だろうが、コンビニのお弁当だろうが、一人だろうが大勢だろうが、おいしいスパイスを加えてくれるのだ。
「いやいや、テーブルクロスでかいじゃん。面倒じゃん。」そう思うあなたは、ランチョンマットから始めてみよう。十分な彩りを添えてくれる。
布一枚を広げたら、食事がちょっと豊かになる……気がする。
少なくとも私には、秘伝のスパイスになっている。
***
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