メディアグランプリ

嗚呼、私は梅干し界の大谷翔平も知らないで苦手だと抜かしていた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F(ライティング・ゼミNEO)
 
 
なぜか、梅干しに目が止まった。
10粒で3640円。
超高級な、その梅干しに。
 
別に好きではない。
むしろ苦手だ。
弁当に入っていたら真っ先に味覚を消し種ごと飲み込む。
おにぎりの具の選択肢からは抹消されている。
自分では絶対に選ばない食品だ。
 
しかし、それでも惹かれてしまった。
この梅干しに、大谷翔平の姿を見たから。
 
大谷翔平。
もはや説明不要のスーパースターである。
メジャーリーグで二刀流として大活躍しているが、彼の凄さは全国民に知れ渡っているのではないか。
それほどの選手だ。
 
だから当然、年俸も凄い。
現在は都合により安すぎる値になっているが、数年後には世界屈指になるだろう。
 
このように金額はたいてい、その価値と比例して増大する。
つまり、目を止めた梅干しも同じなのだ。
10粒3640円だから、1粒で364円もするのである。
普通の梅干しが1パック購入できる額だ。
よって、それもやはり大谷翔平のようなポテンシャルを持つわけだ。
 
考えてみれば、これまで食べてきた梅干しは名前も知らない物ばかりだった。
いわば草野球レベルの小物だけを食べていたのである。
 
しかし、それだけで全てだと思っていた。
野球と同じように、梅干しにも大谷翔平がいるはずなのに。
それなのに、最底辺だけを見て苦手だと抜かしていた。
 
おかしい。
自分が恥ずかしくなってきた。
そんなこと、あっていいはずがないだろう。
 
梅干しにも人生を懸けて打ち込んだ職人がいるのである。
ならばその味を判断するのは、最高級を食してからにすべきではないか!
そう覚悟を決めた私は、勇気を振り絞り購入の決意を伝えた。
 
「これ、賞味期限が短いんですよー」
その意志を折ったのは、店員のこの一言だった。
なんでも通常は3ヶ月だが、今は在庫の都合上1ヶ月しかないという。
 
それについては問題なかった。
私は半額で買った賞味期限ギリギリのチーズを1ヶ月以上ほったらかす男である。
だから3ヶ月だろうが1ヶ月だろうが別に気にしない。
 
しかし、店員がしつこいのである。
ダッシュで在庫を取りに行き、息を切らした状態でも「賞味期限が短い」と警告してくるし、終いには「物が古いんですよ」とオブラートにすら包まなくなった。
 
ここまでされると、流石にわかる。
いくら人の気持ちに鈍い自分でも。
 
間違いない。
この店員は、店頭に並んでいるこの3640円の梅干しを売りたくないのである。
だから再三、賞味期限でネガティブアピールをしていたのである。
 
正直、頭が混乱していた。
資本主義の原則から考えると常軌を逸した行動である。
この世界のどこに、店の商品を売りたくない店員がいるだろうか。
おかしい。
なにかがおかしい。
私は「そういうのは半額で売った方がよいのでは」と一言絞り出すので精一杯だった。
そして忠告に従い梅干しではなくセロリの漬物だけを購入し、この場を去った。
 
普通ならば、なんて酷い店員なのかと激怒するだろう。
商品を売りたがらないなんて論外だ。
そう厳しい罵声を浴びせられても仕方がない。
 
しかし私は逆に、梅干しに対する興味をさらに深めていた。
なぜならこの店員の行動こそ、大谷翔平である証明だからだ。
 
思い出してほしい。
大谷翔平がプロ入りしたときのことを。
当時は彼の二刀流に対し「非常識だ」、「片方に専念しろ」と多くの罵声が浴びせられていた。
 
それでも成功できた理由は、栗山英樹監督の常軌を逸した覚悟があったからである。
自分の采配がどれだけ非難されても構わない。
それでも彼の可能性に賭けたい。
この鋼の意志で二刀流を実現させたから、今の大谷翔平がいるのである。
 
ならば、あの店員の行動も同じなのである。
この梅干しは賞味期限が1ヶ月しかなく、本来のポテンシャルではない。
かといって半額で売り出し、ブランドイメージを下げるわけにはいかない。
だから、どれだけ自分が非難されようとも、今は購入をやめてほしい。
真価を発揮するその時まで待ってほしい。
この思いを込めて警告したのである。
 
つまり、大谷翔平なのだ。
これまでの認識を吹き飛ばすポテンシャルを持っているのだ。
そして日常を何段階も華やかにする存在なのである。
もしかしたら苦手意識を払拭するだけでなく、大好物にしてしまうかもしれない。
こういう伝説級の可能性を秘めているのである。
 
そして店員に確認したところ、梅干しの全盛期は御歳暮シーズンとのことである。
今は5月だから、約1ヶ月後になる。
オススメの食べ方は、ご飯の上に乗せるのではなく、そのまま食べることだそうだ。
一体どんな味がするのだろう。
これまでの人生で最も楽しみに夏の訪れを待っている。
 
きっと梅干しは魅せてくれることだろう。
全世界に名を轟かせる大谷翔平のように。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:10:00~20:00
TEL:029-897-3325



2022-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事