着て、食べて、復興支援しちゃおうよ!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:田盛稚佳子(ライティング・ゼミNEO)
毎朝、スマホの目覚ましが鳴り、何度かスヌーズを繰り返してやっと起きる。
その日、大あくびをしながらテレビをつけた瞬間、衝撃的な映像が飛び込んできた。
テレビの画面には真っ赤な炎で覆われ、黒煙を上げる見覚えのある街が映っている。
「旦過市場(たんがいちば)が燃えています! 出火からすでに4時間が経ちましたが、火の勢いは衰えることを知りません!」
アナウンサーの緊迫感ある声だけが部屋に響く。
「あ……、ああ……!」
人間は本当に驚くことがあると、声を出せなくなったり、思うように体が動かなくなることがあるとは聞いていたが、まさにそれが自分の身に起こっていた。金縛りにあったようだった。
私は布団の中からしばらく動けずに、声にならない声を出していた。
なんで?
なんで、こんなことが起きているの?
4月19日の午前2時40分ごろ発生した北九州市小倉北区にある旦過市場の火事は、約1600平方メートルまで広がり、40店舗以上が焼失したという。
北九州市で長年、「市民の台所」として親しまれてきた市場は、私にとっても非常に身近なものである。
母親が新婚時代によく食材や惣菜を買いに行った思い出深い場所であり、私も社会人になってからふらりと旅行する時には、旦過市場に寄って昔ながらの昭和レトロな雰囲気を味わうのが好きだった。
「奥さん! 今晩のおかずにどう?」とか「今、揚げたてだから美味しいよ!」など、あちこちから威勢のいい声が飛び交う。
「奥さんじゃないけど、家族用に3つずつちょうだい」
とできたての商品を買って帰ったことも一度や二度ではない。
実は「WEB READING LIFE」で、今年の2月に開始した旦過市場にある老舗商店の連載が、ちょうど4月4日に終わったばかりだった。
私は、テレビを呆然と見ながら正直どうしていいかわからなかった。
店主やご家族の安否が気になるものの、何かと対応に追われているかもしれない。
スマホのメッセージを何度も下書きしては消し、送信するのを躊躇した。
今連絡したら逆に迷惑じゃないだろうか? と思ったからだ。
しかし、通勤の支度をしていても、駅に向かう途中も、ずっとお店のことが頭から離れない。
えいっ! とメッセージを意を決して送ってからも、店主からの返事がくるまでの時間がいつもの何倍にも感じられた。
1時間後、店主から返信が来た。
「うちの店自体は大丈夫そうです。ただ、市場の事務所が燃えてしまっているため、厳しい被害です。まだ中に入れないので詳細がわかりません」
幸い、火元からその店主の店までは距離もあり、無事であることがわかった。返信があったおかげで、ほっと胸をなでおろして自分の仕事に取りかかることができた。
とはいえ、仕事中も鎮火したかどうかが気にかかり、ネットニュースを見ては、まだ鎮火していないのか……と心配になりながら1日を過ごした。
最終的には4月21日の午後7時30分に火が消し止められたことが確認された。実に鎮火までに65時間を要したことになる。
旦過市場は通路が細いために、消防車がアーケードの中まで入れなかったり、鎮火したかと思っていた箇所から再度くすぶり始めたりして、消火活動が難航したことが報道されていた。
近くのビルから放水してもすべてをカバーできるほどの規模ではなかっただろう。
鎮火した後も、しばらくは焦げた匂いが辺りに充満していたと近所の住民が話されていた。
現場には規制線が張られ、関係者以外は立入禁止。そのニュースを見るたびに、戦前から続いた歴史ある市場の様子が痛々しく感じられた。
1ヶ月近く経って、規制されていた一部エリアがようやく解除された。
さぞや市場の人は悲しみに暮れていることだろうと思いきや、私の予想は大きく覆された。
短期間で二つの復興への行動がすでに開始されていたのだ。
一つめは、クラウドファンディングの開始だった。「北九州の台所・旦過市場火災復興プロジェクト」という、インターネット上で金銭支援と応援メッセージが送れるというものである。
二つめは、ユニクロとのコラボでチャリティーTシャツの販売開始だった。
当初は「UTme!」サイト内の販売のみだったが、現在は小倉駅での店頭販売もされている。
この行動力の速さに驚くとともに、「ちょっと楽しみながら復興支援してほしい」という旦過市場の人々のたくましさに私は感銘を覚えた。
実は、ユニクロが今回のような一商店街の復興支援として活動することは、前例のないことらしい。通常、前例がない場合は、より慎重になるため時間がかかりそうなものだ。
しかし、前述の老舗の店主に聞いてみると、火災の翌日からユニクロ小倉駅前店と連絡を取り、その翌々日にはユニクロ本部とのオンライン会議が開かれ、おおよその支援の方向性が決まるというスピードで話が進んだという。
ゴールデンウイークをはさむ中、実質10日程度で契約から店頭販売まで漕ぎつけられたということは、旦過市場がいかに市民に愛され、大企業も動かしてしまうほどの魅力があることの証拠ではないだろうか。
火災や災害は、いつどこで起こるかわからない。
そして、時間が経過するにつれ、人々の記憶から徐々に忘れられて、やがて風化していくこともよくある話だ。
直接の被害に遭わなかった私たちができること、それは火災や災害の記憶を忘れずに、復興のめどが立つまで支援を続けていくことだ。
私は、今後も老舗の商品を食べながら、ある時は小倉駅と旦過市場に立ち寄って、復興への道のりを、微力ながら応援していきたいと強く思っている。
ちょっと楽しみながら復興支援、よかったらあなたもやってみませんか。
***
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