早起きの猫への対策
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：鈴木 千弥（ライティング・ゼミ4月コース）
「何とかならないかな……」
朝起きると、旦那が仏頂面で言ってきた。何の事かと聞いてみると、最近毎朝四時に猫に起こされるという事だった
猫の名前はパン君と言って、結婚前から私と暮らしていた猫だ。当然、結婚時に一緒に連れて来て夫と同居を始めた。そして大人の猫にしては珍しく、夫に三日で慣れたパン君は夫が大好きだ。
何故なら……パン君にものすごく甘いからだ。
猫じゃらしで遊んであげ、やさしく呼びかけ、お腹が空いていそうな様子があれば、すぐにカリカリご飯をあげる……もしや……
「うん、ご飯くれって、寝ている俺の頭を手でちょいちょいって叩いてくるんだよ、朝四時に」
おかしいな。私とパン君だけで暮らしていた時は、私を朝四時に起こすようなことはなかったのに。しかもちゃんと私の睡眠欲求を理解してくれていて、遅く起きる土曜日の朝は、朝ご飯が欲しくても諦めて、二度寝する私に付き合って一緒の布団で寝てくれるという、とても良い猫だったのに。もしや……
「しょうがないから起きてご飯あげて、それからまた寝るんだけど、眠い……」
原因はそれだ！
夫はパン君に、「起こせば朝早く起きて、ご飯をくれるヤツ」認定されたのだ。猫の要求通りの時間に、人間は起きてはいけないのだ。
朝方はトイレでも絶対起きない私は、起こしても起きないタイプ。夫は三秒で眠れるが、ちょっとの刺激で起きてしまうタイプ。
小腹が空いたら、どちらを起こせばよいのか。パン君の選択は正しい。
パン君の食欲が満たされ、幸せなら私も満足だ。だが、本人の意思ではなく朝四時に起こされる夫はさすがに可哀そうだ。といって、自分が朝四時に起きるつもりは全くない。何か良い方法はないのだろうか……あった！
「自動給餌機～！」（ド〇えもん風に読んでください）
自動給餌機は、タイマーを設定した時間に、セットしたカリカリご飯が出てくる夢の機械。しかも世の中に同じような行動をする猫様はいるようで、スマホで検索すると沢山の種類が出て来るので選び放題だ。
パン君を連れ子として連れて来た責任として、私は自動給餌機を購入することにした。
自動給餌機は買う人（と猫）のニーズに応じて色々な機能が付いていて沢山種類があるように見えるが、簡単に分けると二種類になる。
１． ストッカータイプ
タンク内に1㎏程のご飯を入れておき、設定した時間になるとタンクから設定した量のご飯が出る。
メリットは、1日数回の給餌が可能、数回分をタワーに入れられるので、1回1回ご飯をタワーに補充する必要がないこと。
デメリットは、カリカリご飯だけしか入れられないので、ウェットタイプをあげている場合は使用できないこと。
２．トレイタイプ
トレイに蓋が付いたもので、設定した時間が来ると蓋が開く。
メリットは、カリカリご飯だけでなく、ウェットタイプのご飯がセットできること（スペックは機種によって違うので確認が必要）。
デメリットは、トレイ１つについて1回1回ご飯をセットする必要があること。
我が家はカリカリご飯だけのため、迷わずストッカータイプを選んだ。
導入初日、試運転で動作を確認してみる。時間になると、ガラガラ！ と大きな音がして、カリカリご飯が機械にセットされたお皿に吐き出された。
パン君は大きな音に驚き、最初は近づかなかったが、しばらくすると恐る恐る近づいて匂いを嗅ぎ、がつがつご飯を食べ始めた。これはいけそうだ。
ただもっと音に敏感な猫の場合は、慣れるのに時間がかかるかもしれないなと思った。
そして朝四時にタイマー設定をし、ドキドキしながら眠りについた。
翌朝、給餌機を見に行くと、セットされたお皿の上には何ものっていなかったが、お皿を舐めた跡があった。夫に聞くと、今朝は起こされなかったとのこと。自動給餌機作戦は成功した。
こうして朝四時に起こされる問題は解決されたが、タワー型の自動給餌機を使う場合に一つ注意点がある。それは、自動でご飯が出るのはタワーに入っている分だけ。タワー自体にご飯を入れるのは自動ではなく人間が入れなければならない、ということだ。
自動給餌機が来て安心した私達は、タワーの中のご飯の残量を確認することに思い至らなかった。そしてある朝、怒りの表情を浮かべたパン君に咬んで起こされて、ようやく気付いたのだった。
タワーにご飯を補充するのは人間の仕事だった！
不思議なことに、咬んで起こされたのは夫ではなく私だった。パン君は自動給餌機を購入し、タワーに補充する担当は私だと知っていたのだろうか……。
とにかく私はタワー内のご飯の残量を定期的に確認するようになった。
その後、人間も自動給餌機も誠実に働き、七年程経った現在もしっかり動作はしている。ただ肝心のパン君が年齢のせいなのか早朝にご飯を食べなくなり、朝は人間と同じ時間に食べるようになったので、先日お役目を終えることになった。
猫が朝早く起こしに来る理由は、朝食の催促以外にも、遊びやトイレ掃除の催促も含まれている場合があるので、すべて自動給餌機が解決するわけではないのだが、我が家の睡眠は自動給餌機に救われた。
私はお役目を終えた自動給餌機を掃除しながらつぶやいた。
「お疲れ様」
＊＊＊
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