禁酒国イランで酒を追い求めたOLの結末は
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記事:よしかたよしこ(ライティング・ゼミ4月コース)
「酒、酒が欲しい……」
「ここにもビールはないのか……」
アル中ではない。OL2人の会話だ。
イランに来ていた。聞いてはいたがこの国には本当にお酒がなかった。イスラム圏には他にも行ったことがある。だがこんなにも徹底的にお酒が存在しない国は初めてだ。
毎年一緒に海外旅行をする私たちは、大のビール好きだ。旅の醍醐味の半分はビールといっても過言ではない。深夜や早朝のフライトであっても、機内サービスが始まるとむくりと起き「ビア、プリーズ」必ず乾杯。
町ではわざわざ観光スポットに行かず、カフェでビールを飲んで過ごすこともある。その土地のビールに出会うのも楽しいし、ハイネケンやカールスバーグなど世界中で飲めるビールはどこで飲んでもおいしい。ビールは裏切らない。
酒がないとはいってもどこかでこっそり出しているんじゃないか。そう期待していた。インドでも、メニューにお酒がない店でも頼んでみるとこっそりテーブルの下にボトルビールを置いてくれた。事前に高野秀行さんの「イスラム飲酒紀行」も読んで予習した。希望はあるはずだ。だがどこへ行ってもだめだった。
ノンアルコールのビールテイスト飲料のようなものは多く、レモンだのラズベリーだの色んなフレーバーがある。試しに飲んでみた。「まずっ! 甘っ!」全然無理。
イランは厳格なイスラム教国家だ。女性は外出時に頭をスカーフで巻くのが決まりだが、それは旅行者にも適用される。私たちもテヘランの空港に到着するとおもむろにスカーフを取り出し、お互いの巻き姿にニヤニヤしながら飛行機を降りた。
それだけ厳しい国だ。やはり飲酒は絶望的か。でもこんな日差しが強く暑い国を旅しながらビールが飲めないなんて、拷問に等しい。イラン人はお酒がなくて本当にやっていけるのか?
そんな時、現地のイラン人と知り合った。日本語が堪能でお金持ちの、サイードという男。もしかして、彼といればお酒に巡り会えるのでは? こっそり期待した。
イランはアメリカと仲が悪く、アメリカのものは排除されている。だが彼の家に招待された際、テレビを見て驚いた。アメリカのMTVが流れているではないか! お金持ちの家ではこっそりアンテナを立てて受信しているらしい。やはり自由に憧れる感情は持っているのだ。厳しい規制をくぐり抜ける術もある。やはり、サイードなら酒が手に入るのではないか? 私たちの思考はどうしても酒へと向かう。
だが、彼と行動を共にして知った。イラン人は酒の代わりに水タバコを吸うようだ。食事の後は水タバコの店に行く。雰囲気は薄暗くバーに近い。そして水タバコを吸うと、ほろ酔い気分になるのだ。何人も集まってみんなで吸っていると、なんだか楽しく饒舌になってきて、まさに飲み会気分だった。
こうしてお酒に出会えないまま、明日にはイランを出てジョージアに行く。ワイン発祥の地と言われる国だ。ジョージアに着いたらたらふく飲もうじゃないか。諦めかけた頃、サイードが言った。「明日娘の5歳の誕生日パーティをやるんだ。みんな来るからおいでよ。ジョージアへのフライトは夜でしょ? 空港まで車で送るからさ」
パーティ! もしやお酒が出るのでは!? 行く!
会場は借りているという。どこかの大きな邸宅かしら。サイードの車に乗りいざ出発。車はぐんぐん走る。町を出てどんどん郊外へ走る。
え、どこまで行くの……? 大丈夫? これ、今夜空港まで帰ってこれる?
ついに車は山を登っていく。こんなところにパーティ会場なんてある? 不安で焦り始めた頃、車は止まった。「着いたよ」
山の中に、大きな別荘のような場所がぽつんとあった。門を開き長い通路を行くと、大きな庭園に円卓が並んでいる。もうすでにたくさんの人が来ていた。ガーデンパーティだ。料理が並ぶスペース、水タバココーナー。庭の真ん中にある屋根付きのステージでは、スモークの中ミラーボールが光り、DJが爆音でクラブミュージックを流している。お姫様のようなドレスを着た主役の娘は、同じく着飾る子供たちとステージに上がり踊り出した。
テーブルに着くとフルーツの皿が用意されている。
そして、ハッ! このボトルは! 酒! 酒じゃないか!?
それはウォッカだった。ついに、ついにイランで酒に出会えた!!
私たちの興奮は言うまでもない。1週間ぶりのアルコールだ。ガブガブ飲んだ。同席したイランのおじさんもノリノリで飲んでいた。やっぱり飲酒するんじゃん。
女性たちも、いつものようなスカーフは頭に巻いていない。体のラインがしっかり出るセクシーなワンピース、バッチリメイクできめ、こなれた感じで楽しんでいる。
そうか、この秘密の遊びをするために、こんな山奥まで来なければならなかったのか。
イラン最後の夜。無事酒に出会えたOLたちは喜びに満ち、久しぶりのアルコールに酔い、皆とステージで踊った。もしかして夢だったんじゃないかと思うようなひとときだった。
その後私たちはこの秘密の山から空港まで車で爆走し、アルコール臭プンプンだったが無事イランを出国して頭のスカーフを脱いだ。
もちろんジョージアに着くとすぐ店に行き言った。「ビア、プリーズ」酒を愛する私たちに乾杯。
***
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