メディアグランプリ

仕事はテトリスだ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:bajio(ライティング・ゼミ 2月コース)
 
 
「この前お願いしてた件、もうできた?」
「えっ、まだです」
「じゃ、あの件は?」
「それもまだ……」
「……しっかり頼むよ」
 
最近、いつもこんな感じだ。おしかりを受けているのは私の方。
4月に新しい職場に異動して1ヶ月。仕事は溜まる一方。異動により、これまでの仕事内容がガラッと変わり、ただでさえやり方や言葉の意味など分からないことが多い中、業務の依頼がどんどんとくる。
わたしの前任者が大変仕事が出来る方だったらしく、その流れでわたしへの依頼がどんどんと来てしまうのだ。
ひとつのことに取り掛かっていると、別の至急案件が入ってくるので、取り掛かっていたものは中断。またやり直し。そうこうしてるうちに、また別の業務の依頼がくる。
仕事のことを皿回しに例える人がいるが、それは一度に何個も皿回しをしているようなもの。1つの皿が止まって落ちないように、皿を回し続けないといけないのだが、他の皿に取り掛かっている時に別の皿が落ちてしまうのだ。
仕事が積み上がりすぎて、何を依頼されているかすら、分からなくなってしまう。
 
まるでテトリスのよう。
わたしは40歳男性。同じ世代の方なら分かってくれるのではないだろうか。この一世風靡したテレビゲームを。
上から落ちてくる様々な形のブロックをうまく組み合わせ、1列並べられるとその列が消える。子供の頃にハマりにハマった。レベルを上げていくと、ブロックが落ちるスピードが早くなる。うまくブロックを回転させて組み合わせようとするも対応しきれず。列を消せなくなり、無常にブロックが積み上がってくる、あのやるせなさ。あきらめて、ただただブロックが落ちるのを見ながら、最上段まで積み上がりゲームオーバー。
 
それは、ただただ、降ってくる仕事に対応出来ず、業務が積み上がって来るのと同じ感覚だ。
 
テトリスなら、ゲームオーバーになればやり直し。ゼロからスタートできるのだか、仕事はそうはいかない。積み上がった仕事に途方に暮れながら、また次の日を迎えるのだ。
 
そんなこんなで、途方に暮れた日々を過ごす、私を見かねたのだろう。
同じチームの同僚が手を差し伸べてくれた。
 
「この仕事は私がやっとくよ」
 
業務を引き取ってくれると、物の見事に短時間で片付けてくれた。
 
それは、テトリスで言うと、巧みにブロックを組み合わせ、テトリス(4列消し)を完成させたような鮮やかさだった。
 
その人が私の仕事を引き取ってくれたおかげで、その間に、別の仕事をすることができ、なんとかひとつ仕事を終わらすことができた。それは、テトリスで言うと1つの列を消したに過ぎないが、業務がひとつ終わり、ほっとすることが出来た。
 
わたしはお礼とともに、どうしてそんな早く、見事に仕事を終わらせられたのか、聞いてみた。
 
「そりゃあ、あなたとはこの業務をやっている期間が全然違うんだから。むしろ来たばっかりで同じスピードで出来るんなら、私がいる意味はないよ」
 
と軽やかに言う同僚。
 
それはテトリスマスターの金言だった。
 
そうだ、テトリスにハマった子供の時。レベルが上がり、初めは直ぐにゲームオーバーになってたけど、やり続けるうちに、そのスピードに慣れ、うまく出来るようになったじゃないか。
 
今は出来てなくても、続けていれば、いつか出来るようになれるような、そんな希望をかんじられた。
 
その同僚はこうも言ってくれた。
 
「せっかくチームで仕事をしているんだから、みんなでできることをやればいいんだよ。もっと頼ってもらっていいよ」
 
チームで仕事をしている。
わたしは自分で仕事を片付けないと、という思いでやっていたが、結果的にうまく出来なかった。もっと早くチームメンバーに相談してきれば、こんなに苦しまずに仕事が終わっていたかもしれないのだ。
テトリスだったら、ひたすら自分でブロックを消さないといけないが、仕事なら、そのブロックを得意な人に引き取ってもらう。そして、チームでブロックを消すこともできるのだ。
 
「この前お願いしてた件、もうできた?」
「はい、誰々さんのお力も借りてここまでは出来ているので、あとでこれをやれば終わりです」
 
テトリスマスターへの道はまだまだ遠い。だが、やり続けるうちに、少しづつスピードについてこれてある感覚も出てきた。
仕事を一緒にやっているチームの同僚のように自分、そして、チームのブロックを消すために、引き続き、業務に取り組んでいく。


2022-05-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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