人生の目的は「Discover yourself(自分自身を発見すること)」
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記事::佐竹宏範(ライティング・ゼミ4月コース)
ある本で読んだ。
「優れた陶芸家は、最初は何をつくりたいのか自分でもわからず、まずは泥をこね、ろくろを回し、次第に自分でつくりたいものがわかってくる」
とのことだ。
「自分のやりたいことがわからない」と悩み、踏み出せないひとがいる。
わかってから踏み出そうとするのは、無茶なことかもしれない。
数年前、グァテマラという中米の国に旅行した。そこには、古代マヤ文明の遺跡があり、ピラミッドに登ることもできる。その遺跡の観光の際に、マヤ民族の方にガイドをお願いした。
ガイドしてもらっている途中、突然彼が
「古代からマヤの村に伝わる人生の目的とは何か知っているかい?」
と、言いだした。
なんだろう? と、思っていると
「Discover yourself(自分自身を発見すること)」
と、言った。
そのとき、なるほどな、と思った。
古代マヤの時代から、自分自身を発見することは人生の目的になるようなことだったのだ。
簡単に自分が見つかるわけがない。
自分のやりたいことというのは、一生かけて求めていくものなのだ。
では、どうするのがよいのか?
きっと、“優れた陶芸家”と同じように、まずは泥をこねてろくろを回してみることだと思う。
やりたいことというのは、そのときそのとき変わってもよい。
限られた自分の世界のなかから探そうとしても、限られたものしか見つからない。
なぜなら、知らないからだ。
プロ野球の存在を知らければ、プロ野球選手になりたいと思うことはない。
限られた情報のなかで、そのときそのときやりたいことが見つかる。
例えば、私は高校生のとき、数学が大好きな特異な少年だった。
将来は数学者になりたいとすら思っていたくらいだ。数学の成績は抜群によかった。
でも、いまは、その面影もない。
「私、大学は数学科だったんです」
というと、必ず
「え、意外」と言われる。
それくらい、面影もない。
きっと当時は、自分の限られた世界のなかで、一番面白いのが数学だったのだと思う。
でも、広い世界を知ったとき、それよりももっと面白いものが見つかった。
私が大学を卒業して初めてついた仕事は、物流部門だった。
大学でマーケティングを学んでいたこともあり、希望していたのはマーケティング部門だった。当然ながら、まったく希望しない部門への配属であった。
でも、私は一生懸命働いた。課題は山積。ひとつひとつ解消に向けて取り組んでいるうちに、興味も湧いてきて、どんどん詳しくなっていった。扱っているものが特殊だったこともあり、その業界の物流のある部分については、日本有数に詳しいのではないかと自負している。
高校生のときに大好きだった数学も、活用できた。
やっているときは、これは天職かもしれない、とも思った。
でも、あるとき、私はその分野を去ることにした。
他の世界が見てみたいと思った。
次に私が就いた仕事は、あるサービスの責任者だった。そのサービスは立ち上がったばかりで、サービスのめずらしさから、導入が進んでいた。一方で、めずらしさからの導入のため、解約も多かった。問題山積である。
問題山積の割には、何をすればいいかわからない。あらゆることを試した。
「世界で自分がはじめて解決しなければいけない問題はない」と信じて、いろいろな本を読みまくった。いろいろなひとの話を聴いた。世の中にありそうな解決策はすべて試してみた。
おかげで、そのサービスは、なんとかお客様に愛されるサービスに成長した。
そして、その過程で、私は「どうしたらサービスを成長させることができるか」について、世の中にあるあらゆる手法に詳しくなった。
そのようなことをするのは、私のやりがいだった。
でも、そこには、その昔愛した、数学や物流のことはなかった。
そしていまは、その経験を活かして、新規事業の立上げ支援を仕事にしている。
現時点では、「これが天職」と思う。
でも、きっと、またすぐに変わるだろう。
「自分のやりたいことがわからない」というひとのなかには、「いま自分が所属する組織のミッションと自分のやりたいことがマッチするのか」と悩んでいるひともいる。
そのような方におすすめするのは、「まず、目の前のことに必死に取り組んでみる」ということだ。
やっているうちに、世界が広がる。どうしてもやらなければいけないことならば、いろいろ調べるし、いろいろ試してみる。きっとそのなかから、やりたいことが少しずつ見えてくるはずだ。
“自分が所属する組織のミッション”というのは、そのとき与えられた制約条件だ。制約条件があったほうが、そのなかでの偶然の出会いがある。
例えば、「今日は赤」と決めて、一日を過ごしてみてほしい。
いつも歩く道であっても、きっといつも意識しないようなことに目が向くはずだ。
「自分のやりたいこと」というのも、そのような偶然によって見つかる。
そのとき自分が置かれた状況は、新しいものに目が向く良い刺激だ。
「優れた陶芸家は、最初は何をつくりたいのか自分でもわからず、まずは泥をこね、ろくろを回し、次第に自分でつくりたいものがわかってくる」
まずは、自分の置かれた状況のなかで、精一杯行動してみることだと思う。
やっているうちに、新しいものが見えて、どのようなことをしたいのかが、少しずつ見えてくる。
その積み重ねが、マヤ民族の人生の目的「Discover yourself(自分自身を発見すること)」ではないかと、私は思う。
***
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