文章を書くときは誠実であれ!《週刊READING LIFE Vol.177 「文章」でしかできないこと》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2022/07/11/公開
記事:山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
人の書いた文章で励まされることがたびたびある。
たった数行で心が揺さぶられるときもあるし、ページをめくる手がとまらなくなるような感動に出会うこともある。
たとえばそれは、自分の気持ちをまるで代弁してくれているかのような文章に出会ったとき。
たとえばそれは、まったく別の世界へと連れて行ってくれる文章に出会ったとき。
たとえ、育った環境がまったく違っていても、たとえ、時空を超えた偉人の言葉であったとしても、私たちは文章を通じて、共感し、偉人たちとさえも距離を縮めることができるのだ。
最近、私が共感した言葉に、シェイクスピアの言葉があった。
そう、『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』、『マクベス』などの作品で有名な、イギリスを誇る劇作家のウィリアム・シェイクスピアだ。
私は彼のこの言葉が印象に残っている。
悲しみが来るときは、単騎ではやってこない
かならず軍団で押し寄せる
まさしく!!
私はこの言葉をよく仕事で痛感することがある。
仕事で何か大きな問題が一つ発生すると、その問題とは別の種類の問題もポコポコと一斉に湧き上がってくるのだ。
「今、このタイミングで言わなくても……勘弁してください」
そう言いたくなるほど、その日にアラームでもセットして計画したかのように、グワーっと面倒なことが押し寄せてくるのだ。
なぜ、今日に限って面倒なことが重なって起こるのだ!
そして、そんなときは意外とまわりも同じように他の対応に追われて慌てていたりする。
まさに負の連鎖だ。
そう、やつらは単騎ではやってこない。
たいてい、面倒な問題は大群で押し寄せてくるのだ。
まあ、「悲しみ」を「面倒なこと」に変換しているのは許されよ。
こんなとき、私は思う。
シェイクスピア、すごい……と。
そのときの自分の気持ちを代弁してくれているかのような名言だ。
時代も生まれた国も違う、伝説の偉人の言葉に、
「わかる!」
と馴れ馴れしく心の中で連発しながら、一つずつ問題の対応にあたる。
きっとシェイクスピアも、「こんなことって結構ない?」的なノリでこの言葉を残したのかな……なんて考えると、偉大な劇作家に親近感を勝手におぼえるのだ。
この数行で、シェイクスピアに心をつかまれた。
シェイクスピア……実はあまり作品を読んだ記憶がない。
『ジュリアス・シーザー』と『マクベス』は遠い昔に読んだ記憶はある。
その他の作品もちゃんと読んで、彼のメッセージを受け取りたいと思った。
落ち込んだときに目に入る文章には、偉人や有名な人の文章よりも、まったく知らない人の文章に背中を押されることのほうが多いかもしれない。
頑張っている人の文章を読んだり、自分と同じような問題を抱えている人の文章を読んだりすると、
「まだやれるかもしれない」
「もう少し頑張ってみよう」
「そういう考え方もあるのか!」
そんなふうに思ったりして、何とか自分を奮い立たせるときもある。
ただ、その人たちの言葉も、自分のことを見てくれる人の言葉にはかなわないのだが……。
自分のためだけに書かれた文章だから、さらに心打たれるのだろう。
何度もくじけそうになったとき、いつも励ましてくれるのは友人からの文章には私はいつも救われていた。
文章から気持ちが伝わってくる。
それは長文じゃなくても、相手を思う文章は、相手にちゃんと届くのだ。
しかし、光があれば闇がある。
文章はポジティブに働くこともあれば、ネガティブに働くこともあるのだ。
言葉というのはとても繊細な生き物のようだ。
人を励ます癒しのアイテムとして使われる場合と、人を傷つける武器として、かなりの殺傷能力のあるアイテムとして、使われることもあるのも現実だ。
とくに活字になると冷たい印象を与えるので、注意をしないと誤解を与えかねない。
行間を読むというのが日本にはあるが、何気ない一言でも、人によっては印象がガラリとかわる。
親しい間柄だと文章のクセもわかるのだが、基本、文章の捉え方は人それぞれだから丁寧に伝えないと、知らない間に人を傷つけてしまう可能性もある。
まだ学生の頃、
「今、めっちゃバカにされてたよ!」
と友達が怒ってくれたことがあった。
どうやら私に対して失礼な言い方をした子がいたらしいのだが、鈍いからなのか、言われた本人は、バカにされていることに気が付いていなかった。
これが、活字になっていたら、悪意のある文章は気が付くと思う。
あまり人の言葉を聞いていなかった私は、友達の言葉をきいて初めて、バカにされていたということに気がついた。
「悔しい」という言葉が遅れてやってくる。
後から「悔しい」という気持ちは湧き上がってきたのだが、「悔しい」という気持ちを考えていると、自分で気が付いていなかっただけに、何とも微妙な感じがした。
私のことを傷つけようとして言い放った言葉だったかもしれないし、そんな意図はなく、ただ単に、その子の言い方に問題があっただけかもしれない。
言葉が足りずに誤解されるような言い方をしてしまうことは誰しもある。
私がピンときていないので「その言い方はないんじゃない?」なんて言えるわけもなかった。
言葉というのは、人それぞれ、捉え方が違うのだ。
ただ、活字になると、会話で素通りできていたものでも立ち止まるようになる。
些細な悪意も浮かび上がってくる。
明らかに人を傷つけようとしている文章は、素通りできずに立ち止まる。
そして、その言葉は長い間心の深いところに留まり続け、いつまでも違和感として残ることになるのだ。
文章というものは文字から始まる。
文字というものを知り、文字が集まり文章になる。
文字は「目」を入り口にして脳に入り、言葉として理解する。
文字が音となり、「耳」を入り口にして脳に入り、言葉として理解する。
「手の指」の感覚を入り口にしてインプットされる場合だってある。
脳にインプットする文章は一つだとしても、解釈は人それぞれだ。
感動の仕方は人それぞれ異なったりする。
人の数の分だけ、答えはある。
だから、人にものを伝えるということは難しい。
丁寧に伝えようとしないと、間違った認識を与えてしまうことになる。
感動の仕方は人それぞれだが、文章というもので気持ちを一つにすることもできる。
文章は、人の心を動かすことができるので、長い世界の歴史の中で、文字を人々から奪って考えることを取り上げようとした歴史もある。
それぐらいすごいものを、私たちは手にしているのだ。
文章を生業にしている人だけではなく、LINEひとつで人の気持ちを左右することができる。
言葉を知っているというだけで、私たちはとてつもない武器を備えていのを忘れてはならない。
「文章力がないから」
そんなことはさほど関係ない。
伝えたい気持ちがあれば、気持ちを相手に伝えることができるのだ。
文章でできること。
それは、自分の考えを相手に伝えることができることだと私は思う。
私の友人が以前、こんなことを言った。
「文章には人柄がでるんだよ」
自分の考えを人に伝えるときは、私はこの言葉を思いながらいつも書いている。
ときには嫌味だって言いたいときはある。
そんなときは友人の言葉を思い出す。
「素直に書くこと」が一番だ。
変に格好つけたりせず、自分の伝えたいと言う気持ちに従って素直に書く。
伝えたくないことを書こうとすると、嫌々書いていることが文章に出てしまう。
「どうしてこれを書いたの?」
という問いに対して、胸を張って答えられないなら、それは書くべきではない。
文章を書くときは、誠実であれ!
そう思いながら私は書いていく。
□ライターズプロフィール
山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
2021年12月ライティング・ゼミに参加。2022年4月にREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に参加。
1000冊の漫画を持つ漫画好きな会社員。
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