私のお腹には原子炉がある – 擬物化のすすめ
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記事:木田 和廣(ライティング・ゼミ4月コース)
「擬人化」という言葉は、よく耳にします。耳にするだけでなく、比較的頻度高く使われてもいるように思います。イソップ童話の一つで、有名な「北風と太陽」の話は擬人化そのものです。最適なルートを表示しないカーナビに「うちの子、バカだから」などという人がいたり、私も、自分の飼っている犬のことを「うちの子」と呼ぶことがよくあります。一方、人をモノに例える「擬物化」は言葉そのものとしてもあまり使われないし、一般にも、擬物化して話す、つまり、人をモノに例えることはあまりしないのではないでしょうか?
私も、日常において、擬物化して何かを話す。ということはほぼありません。しかし、実は、思考の中ではよく使っています。例えば、自分のお腹に原子炉があるイメージを持っています。自分のお腹を原子炉というモノに例えているのです。この原子炉は毎日、毎日、大量の熱を作り出しています。そして、その熱が私を日々のタスク処理や、新しいことへのチャレンジに駆り立てています。この熱を何かに向かわせないと、お腹の原子炉は熱がたまりすぎて爆発してしまう。だから「熱を向かわせる新しい何か」、「情熱をもって取り組める何か」をいつも探しています。自分を新しいチャレンジに向かわせる原動力になっているのです。また、困難なタスクに直面した時は「この原子炉さえ動いていれば大丈夫。絶対になんとかなる」とも思えます。
そのように、私は自分のことを擬物化して考えることがよくあるのですが、あるとき、この擬物化は「自分の心を守る」のにとても役にたっているということを発見しました。ニュースなどで「コロナ禍でメンタル不調が増えている」と報道されていますし、実際、「メンタルをやられてよく眠れない」、「メンタル不調で休職せざるを得なくなった」という知人、友人がときどきいます。今、自分で自分の心を守り、メンタル不調にならないようにする技術やコツはとても重要なのだと思います。そして、それが、考え方一つで実現するなら、安いものです。
なぜ、擬物化が自分の心を守るのか? 一つは私のように自分のお守りとすることができるからです。お腹の原子炉さえあれば大丈夫。と思えるので、しなくてよい心配はしなくて済むのです。例えば、ライターを職業とする人が、「私の頭の中には、こんこんと湧き出す、アイデアの泉がある」と擬物化できたなら、それはライターを続けていく上での大きなお守りとなるでしょう。「自分は優秀なライターだ」と考えて自分を励ますよりも。泉というモノがあった方が自分の強みや武器をクッキリとイメージしやすいのです。
こちらの方がより重要なのですが、別の方向性としては、擬物化をすると、擬物化したモノと自分の心を分けて考えることになり、「心」をむやみに傷つけないで済むということです。例えば、どうしてもやる気が出ないとき、「俺は今日、やる気がでない」と思うでしょう。擬物化がなければ、人によっては「俺は、やる気のない奴だ」という方向に考えが進んでしまうかもしれません。それは心を傷つけます。
「俺は今日、やる気がでない」と思った時、擬物化していると「原子炉の調子が少し悪いみたいだな」と思います。つまりやる気がでないのは「俺」のせいではなく「原子炉」のせいです。心は傷つきません。そして「最近、原子炉をすこし手荒に扱っちゃったせいかな?」とか「原子炉にもっと良い燃料をくべよう」とか「原子炉を一時的に停めて、メンテナンスした方がいいな」という方向に考えが向かいます。
そして実際、やる気がでないのは健康状態のせいだったり、気に病むことがあるせいだったり、長時間、激務にさらされたからだということも多い訳です。心さえ守られていて元気だったら、疲れが取れたらまたやる気が戻ってきます。
別の例ですが、私は自分の心には「感受性を上げ下げするつまみ」があると思っています。例えば、満員電車に乗る時、厳しい上司から叱責を受ける時、苦手なお客さんと話す時、そのつまみを最小限にしぼります。時には実際に、こっそりと、胸の前でボリュームつまみを絞る動作までします。すると、満員電車で触れる隣の乗客の汗ばんだ肌の感触、ネチネチと小さな失敗を繰り返し指摘する上司の声、性悪説に基づく、ほとんど起きもしない事象への対策を求めるお客さんの要請は私の心を傷つけません。感受性が低くなっているからです。100%のまま直接受け止めないようにしているからです。
一方、なんでもない毎朝の犬の散歩のとき、感受性のつまみを最大限にまで回します。すると、肌をなでる、まだ夜の気配を残す風を構成する空気の一粒一粒、夏の早朝の朝日に照らされる雲の輪郭の青からピンク、オレンジの混じったグラデーション、生きている喜びを隠そうともせず、凛として前を向き歩みを進める犬の吐息。そうしたものを心一杯に受け止めることができます。なんでもない毎朝のルーチンの時間を心の栄養とすることができるのです。
あなたのお腹には、頭には何が入っていますか? あなたの心にはどんなつまみがついていますか?
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