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「I love you」を「You kill me」と訳したい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「I love you」を訳しなさい。
そう問われたら私は「You kill me」と答える。
 
面倒くさそうな奴だと思われたかもしれない。
確かに生まれてから32年間ずっと彼女がいないから色々こじらせている。
その結果この捻くれた回答になった面もあることは認めよう。
しかし深く考えてみても、私の中で「愛する」とは「自分を殺す」ことである。
なぜなら、相手のために自身の意思を捨てる必要があるからだ。
 
例えば、自由に使える時間が減る。
これは独り暮らしを10年以上続けていると結構なダメージとなる。
だって誰かと付き合っている状態で休日全て10時間ゲームする生活なんて絶対できないだろう。
彼女も他にやりたいことがあるはずだから、その時間も確保しないといけないのは当然だ。
サウナに行っても2時間ずっと男湯に居られるとは限らない。
このように相手と行動を共にする都合上、自分の思い通りの生活ができなくなってしまう。
これは「自分を殺す」レベルの覚悟が必要な行為となる。
 
それに本音も押し殺さなければならない。
「俺の意見が絶対だ」なんて男が抜かしている状況は時代錯誤も良いところであり、私も嫌だ。
だから人を愛する為には相手を優先して我慢すべきである。
ただ、これも独り身ならば考えなくて良いことだ。
そのため今更それができるかどうかは不安である。
 
しかしこうして考えてみると、今まで彼女がいない理由もうなずける。
常に自分が最優先の日々を過ごしていたからである。
休日にすることは自由に決めたい。
仕事で稼いだお金も思い通りに使いたい。
協調性なんてクソ喰らえ。
完全に自分ファーストな人生である。
この具合に相手が入る余地を1ミリも空けていなかったのだ。
結果、独身生活を長年続けることになってしまったのである。
 
だがこの文章を書くくらいなので、人を愛することにも当然憧れがある。
映画を見た後は特にそう感じる。
私だってコナンの感想を誰も見ていないSNSに投稿なんてしたくない。
やはり隣に座った愛する人と語り合いたいのだ。
そのため独り身の生活に満足する一方で、出会いを求める自分もいる。
 
ただ今はマッチングアプリ全盛期である。
これが私の結婚欲求をゴリゴリと削り倒す。
アプリの性質が嫌で仕方ないからである。
なぜなら会うかどうかの判断を、年収や学歴、自己紹介などの無機質な文字情報だけで行う必要があるからだ。
それが第一印象になることが受け入れられないのである。
 
だって最初の出会いは重要ではないか。
素敵な書店で同じ本を手に取ろうとした。
カフェでコーヒーを飲んでいる姿に心を奪われた。
これらが恋愛漫画でベタな展開になっているように、好きになるキッカケの99%は初めて会ったときに生まれるのである。
それがマッチングアプリだと真実かどうかわからないデータになるのだ。
おまけに月数千円も払わなければならない。
勘弁してほしい。
そのため一度も利用しようとすら思ったことはなかった。
 
だが、そうではない出会いはどうすれば生まれるのだろうか。
これはやはり、対面で会うのに限ると思う。
情報量が多いからだ。
見た目、仕草、話し方、いずれも文字だけでは決して表現できない要素だ。
そして「この人だ!」と思った時は感じる電流にも差が出てくるだろう。
おそらく言葉に変換すると500字以上は軽く書けるパワーになるのではないか。
この感動は絶対にマッチングアプリでは起こらないはずだ。
だから合コン形式が最低条件である。
 
もう1つ条件があるとすれば、そこに作品が絡むと嬉しい。
最も彼女がいたらなあと思う場面もこれだ。
映画を見た後、一緒に語りたい。
ゲームもマンガもそうだ。
きっと私には絶対に気づけなかったポイントが出てくることだろう。
このように同じものを見た時の感動を共有したいのである。
そのため付き合うかの判断基準として、作品にどういった感想を持つのかは重要な要素だ。
それが出会いの場で把握できれば最高である。
 
そして、最近見つけたこれらを全て叶えてくれる最強イベントが『BOOK Love』だ。
 
『BOOK Love』は天狼院書店が開催する婚活サービスである。
各々が自分に似た人物の出てくる本を持ち寄って、書店内で語り合い親睦を深める会だ。
スタッフが「出会い系書店を目指します!」や、「俺は絶対にこの会でカップルを生みたいんだ!」など叫ぶ常軌を逸したモチベーションを持つことも特徴である。
その甲斐もあって、初回は全国で90名も参加したらしい。
どうやら同じようなキッカケを求めている人は多いようである。
 
私も当然参加したが、これまで体験してきた婚活サービスの中でも特に充実度が高かった。
その場にいた女性のほとんどが他イベントで何回か話したことがある状況だったが、それでも知らなかった側面が結構伝わってきたのである。
「イメージとメチャクチャ合う本をチョイスしていらっしゃる!」
「好きな本と俳優をここまでラブ全開で語れるのは凄いなあ」
いずれもこれまでは感じたことのない印象である。
そして何回か会った人に対してもこの威力なのだから、これに第一印象のインパクトが合わさったらもう確定である。
後世まで語り継ぎたい運命的な出会いになる予感がする。
よって「この『BOOK Love』はリピートすべきだ」と本能が語りかけている。
少なくとも8/20の第2回目は絶対に行くだろう。
 
しかし、改めて思う。
本の力とは、なんて大きいものなのかと。
例えば「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した夏目漱石は時代を超える作品を生み出した。
その原動力もきっと本だったはずだ。
日本語の作品から英文学まで、彼は大量に読み漁ったことだろう。
こうして大量の言葉に触れ、それでも表現できない事象があることに苦しみ抜いた過程の中で、彼の思考の強度が凄まじい勢いで鍛え上げられたのである。
その力があったからこそ後世の人まで揺さぶる表現を生み出したのだ。
 
それはきっと、現代でも変わっていない。
本を読まない時代と言われている。
TikTokやYouTubeと動画情報が大量に溢れているから、それは仕方がない。
私も昭和の人々に比べたら全然読んでいない。
だが、それでも本が持つ力は全く衰えていないと思う。
 
なぜなら動画の感想も言葉から生まれるからだ。
Netflixで見た映画だろうが、YouTuberのネタだろうが、感じたことは言葉で表現しなければならない。
だから動画にコメント欄があるし、Twitterでの考察も盛んなのである。
そして、この練度は知っている言葉に比例する。
優れた表現をできるほうが、より深いところまで内容を掘り下げられるからだ。
そのため最も言葉を仕入れることができる本の価値は、今も健在なのである。
 
これは、恋愛の場でも同じだ。
今もプロポーズの言葉は超重要である。
ここで上手いことを言えるかは、今までどれだけ読んできたか次第だろう。
その意味でも本は偉大なのだ。
 
更に言えば「愛すること」自体が「本」を一緒に探す行為なのかもしれない。
この世界には多くの言葉にできない存在がある。
日曜日にサザエさんが終わった後の空気。
レストランで飲んだワインの味。
美術館で絵を見た時。
考えてみれば、どう表現すればいいか見当もつかないことだらけである。
しかし、この場面こそ最も一緒に時を過ごす人がいてほしい瞬間なのだ。
仕事が上手くいかずに絶望しか感じていない状況で、心がスッと軽くなるようなフレーズをかけてもらいたい。
ものすごく美味しい料理を食べてニヤニヤが止まらない私の顔を見て笑いながら何か言ってほしい。
愛する人から最も頂きたいものは言葉なのである。
そして共に紡いだ表現を集めて唯一無二の本を作り出したいのである。
ならば、そのキッカケは本であって欲しい。
 
だから「BOOK Love」に可能性しか感じていないのである。
なぜなら本の力を熟知した書店が開催しているからだ。
この場に満ち溢れた言葉のオーラは、きっと最高の出会いを演出してくれるはずである。
 
「I love you」を「You kill me」と訳した。
しかし、私の中ではそれくらい重い行為であることも事実だ。
1人でいるときに持っていた可能性を相手に捧げなければならないので、その意味で「kill」の要素はどうしても捨てられない。
 
だが、その先に生まれ変わった自分がいる。
それは愛する人と過ごす私だ。
きっと独身では決して味わえなかった幸せが待っているだろう。
 
そして、この始まりは「BOOK Love」にあるのかもしれない。
なんてったって、「人生を変える書店」である天狼院書店が開催しているのだ。
この標語が真実であることは「ライティング・ゼミ」で十分すぎるほど感じている。
よって本イベントもそういうパワーを秘めているのである。
 
なにより本屋には夏目漱石など多くの本が存在している。
それら数多くの言葉に惹かれた人々が参加するのだ。
この中には、20年後くらいに「月が綺麗ですね」と言いたくなる人もいるはずである。
その人こそ当たり前の風景と言葉のやり取りでも十分幸せを感じることができる理想の相手なのだろう。
 
「I love You」
「愛しています」
何度も聞いているが具体的にはわからない。
しかしこの解明こそ、本が最も力を発揮する場面である。
きっと数を重ねる毎に表現できなかった感動を教えてくれるだろう。
今までなかった出会いも演出してくれるはずだ。
この効果を信じて、今後も多くの本を読み続けたい。

 
 
 
 
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