メディアグランプリ

相手がハッピーになる呼び方でいこーう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Pauleかおり(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
孫が産まれた。
「なんて呼ばれたいですか?」
すかさず、私の夫は「じいじ」 と嬉しそうにいった。
うーん、私は…… どうしよう。
 
聞いてきたお嫁さんに聞き返した。
「実家のお母さんは?」
「うちの母は、まさよちゃんだそうです」
お母様自身の名前。
そう言った呼び方は、私の知り合いでもよく耳にする。
ここ30年ぐらいの間に親子間でも、名前で呼んでいる子供たちは増えているよう。
 
どう呼んでもらいたいか…… よく考えたら、そんなふうに聞いてもらったことがなかったな。
 
思い返すと、反対に、私も「どう呼んで欲しい?」なんて誰にも聞いてないや。
自分の息子が生まれた時、義父や義母のみならず、夫にも。
どこでも、誰でも使うよくある呼び方を使っていただけ。
 
夫と出会った頃は、ニックネームで呼んでいた。
そして子供が生まれると同時に「パパ」 と呼ぶようになった。
あの時の思いは、「あなたは父親になったのよ! だからこれからは、しっかりしてね!」
無意識のメッセージをこめていたような。
また、「パパ」 は、実家で自分が使っていた馴染みのものだから。
 
しかし、待てよ?
こちらが無意識に呼び始めた呼び方が、相手を不快にさせていることはなかったのか?
もしかしたら相手は、別の呼び方を望んでいたかもしれない。
 
息子が幼稚園の頃、ママ友と集まって話をしていた時のこと。
自分の夫からどう呼ばれているかの話題になった。
多くの家では、「ママ」 「お母さん」 が主流。
するとAさんは言った。
「子供を介しているときは仕方ないけど、夫婦2人の時にもお母さんって、なんか嫌じゃない?」
Bさんは「うちはどんな時も ねえ! っていうの。だから私は、『ねーじゃないし!』 って言ってやるけどね」
Cさんは「うちなんて2人になると おばはん! よ」
おー、自分だけじゃなかったか。
 
そうなのだ1 私にも不快な呼ばれ方があったのだった。
初めて耳にしたのは、結婚してすぐの20代後半の頃。
夫が会社の人に私を紹介した時だった。
「これ、うちのかあちゃん!」
え? かあちゃん? あまり耳にしない言葉にポカン。
イメージは、鼻水垂らした子が、母が着ている割烹着の端を引っ張る姿。
で? 誰が、誰のかあちゃん?
私は、あなたのおかあさん役ということ?
あの時から、この呼び方で呼ばれた時には、「返事はしないぞ!」 と無言で怒りの空気を漂わせている。
 
私にとっては、このかあちゃんというラベルには、なんでも許してもらえるとか、大目に見てもらえるなどの依存イメージがあったのだ。
だから、それを押し付けられているようで、虫の居所が悪くなるのだ。
 
だけどよく考えてみると、夫の実家では、それが当たり前の呼び方ルールだったよな。
親戚の人たちも、近所の人たちも、女房は「かあちゃん」 と呼ばれるし、主人は「とうちゃん」 と呼んでいるのだ。
きっと夫の中では、何にも意図するところなく、するっとでるフレーズだったんだろう。
そう呼ぶのが癖になっていただけ。
全く悪気もなかったろう。
 
とはいえ、やはり呼び方には心を配った方がいい。
呼ばれている側は、想像外のところで不快反応を発令しているかもしれない。
その言葉が持っているイメージは人それぞれだから。
呼ばれている人のテンションが上がるようなイメージならば最高だけど。
 
私も夫に対して、勝手に呼んでいた「パパ」 は本当は不快だったかもしれない。
別の呼び方にしてくれと思っていたかもしれないし、2人の時は名前の方を希望していたかもしれない。
呼ぶ側で振り返った時、そこにフォーカスすることなく、何十年も「パパ」 と呼び続けている。
それこそ今では、もう子供も巣立って、2人だけしかいないのに。
「俺はお前のパパじゃない」 耳を塞ぐムンクの叫びの絵が浮かぶ。
 
お嫁さんに聞かれた「どう呼ばれたい」 の質問は、立ち位置を変えてくれる素敵な質問だ。
これまで、呼ぶ側に決める権利でもあるように、尋ねもしないで呼んでいた。そして呼ばれていた。
当たり前と思っていた壁に風穴が開いて、もやもやしていたものがスッとした。
それと同時に、相手を主役にする思いやりと愛を感じた。
 
「なんて呼ばれたいですか?」
私は「おばあちゃま」 こう呼んでもらうことにした。
 
ちょうど孫が生まれる4ヶ月前。
電車に乗っていると、なんとも上品なお婆様が中高生くらいの女子2人と仲良く話している光景を目にした。
ぼーーと眺めていると、可愛らしい中高生が、「おばあちゃま」 と呼んで話をしていた。
3人の関係は祖母と孫2人だったのだ。
センスが光る祖母は、ただ穏やかな眼差しで彼女たちを見つめながら、髪の毛や腕など愛おしげに摩っていた。
孫たちの方も、祖母のつけているピアスに指を添えながら、「高い?」 なんて聞いていた。
3人の心の距離感は近く、祖母は孫たちを尊重し、孫たちは祖母を信頼している、そんなふうに感じられた。
親子とは違う空気感で、解放された子供たちと、許しながら見守る祖母の姿はとても印象的だった。
 
それが蘇ってきたのだ。
あー。こいうおばあちゃんになれたらいいな。
孫とこういう感じでお出かけできたらいいな。
その憧れから、ついて出てきた言葉が、「おばあちゃま」 だった。
 
呼び名は、自分への大切なラベルの一つ。
それが他の人から見て、おかしいか、正しいかではないのだろう。
気持ちが下がる呼び方はされない方がいい。
そして、できれば自分も、相手のモチベーションが下がるような呼び方は避けたい。
多様性の時代だから、今後、今の自分の想像を遥かに超えた、受け入れ難い呼び方が出てくるかもしれない。
それでも、呼ばれるほうが主役だという意識は大切にしたい。
 
さっそく夫に聞いてみよう! これからは、なんて呼ばれたい?
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事