私がモテない理由を本気出して考えてみた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:川端彩香(ライティング・ゼミNEO)
「なぜこんなにも彼氏ができないんだ!」と私が叫び続けて、どれくらい経っただろうか。会社の先輩に「だからお前はモテへんのや!」と罵られ続けて、どれくらい経っただろうか。かれこれ1年は経っているような気がする。
以前お付き合いしていた人に振られて、その振られた恨みやら執念やらを原動力とし、1年かけてダイエットやら見た目改造やらに取り組んだ。取引先の40代女性に「外見ばっかり磨いてないで中身も磨きなさいよ! 本を読め、本を!」と言われ、書店へ飛んでいきウェイトレスさながら手のひらに気になった本を片っ端から積み上げて大人買いし、ひたすら読書に励んだ。外見も内面も磨き続けて1年が経過しているのだ。2022年現在の私は30年間生きてそれはもう文字通り「最高」の私のはずなのだ。
なのに、なぜだ。私にはいまだ彼氏がいないのだ。
いや、おかしいだろ。毎週合コン! 友人からの紹介! ぐらいアクティブに動いているわけではないが、2~3カ月に1回は出会いの場に行ったりデートしたりしている。なのに、なぜだ! なぜ私にはまだ彼氏がいないんだ! 彼氏候補もいねーじゃないかよ! 数打っても当たんねーじゃないかよ! どうなってんだ世界!!!
あらゆる出会いの場をそれなりに経験したつもりではある。だがしかし、何度も参加していると、会う人は違えどマンネリ化してくる。そこで私は新たな出会いの場に参加してみることにした。天狼院書店主催の恋愛目的読書会・ブックラブである。
こう言ってはなんだが、本屋で出会うなんてめちゃくちゃ聞こえが良いと思うのだ。
街には相席居酒屋やバーがあり、街コンも開かれている。ここ数年でマッチングアプリが出会いの主流になり、周りでもアプリで知り合った人と結婚に至るケースをよく聞くようになった。ちなみに私も、ダイエットするきっかけとなった元彼はアプリで出会った人だった。
好きな人と出会えるならば、正直方法はなんでも良いと思う。思うのだが、いくらアプリが主流になっているとはいえ「アプリで出会いました」と言うのと「本屋で出会いました」と言うのであれば、断然後者の方が聞こえが良いように感じる。なんといっても、昭和な考えの親に言いやすいし、「どこで出会ったんか聞かれたらどうしよう……」という余計な心配をする必要もないのだ。
参加前にメールが送られてきた。前日までに21の質問にできるだけ回答してね! というものだった。その中の質問に「あなたは周りにどんな人だと言われますか?」という質問があった。その日、ちょうど会社の同僚と飲みに行く約束をしていたので、私はその席で聞いてみることにした。週末に恋愛目的の読書会に参加すること、事前に質問に答えなければいけないこと、そして、私ってどんな人? と。
すると、酒飲み仲間で仲の良いの38歳おじさんが「俺、お前のこと漢字2文字で表現できるで!」と即答してきた。なんと! たった漢字2文字で! 私を表現するのにぴったりな2文字がこの世に存在するとは!
教えて~と少しワクワクしながら言う私に向かって、38歳おじさんは決め顔で言い放った。「狂犬!」と。言い終わった後の顔は、とんでもなくドヤ顔だった。いや、狂犬て……。それ若かりし頃の加藤浩次やないか! 心の中のツッコミは、思わず口を飛び出していた。
仕事の時とプライベートの時の私は、少し違うらしい。おじさんいわく、私は真面目で正義感が強いらしいのだが、仕事の時はそれが10倍増しになっているらしい。穏便に済ませばいい事案も、「それ、違うんじゃないですか? こうした方が良くないですか?」などとつっかかってしまう。殴りはしないものの、結構ヒートアップしてしまい不穏な空気を流してしまうことが少々。いや、多々だな。とりとめのない話を業務中にされることも嫌いだし、時間配分ができておらず延々と延長されゆく会議も嫌いだ。そんな時も自分が進行している会議であれば、話者を遮って「その話、あとどれくらいで終わりますか?」と突っかかってしまう。周りの視線やピリッとした空気を感じてはいるが、言わずにはいられない気質なのだ。
見た目が実年齢より若く見られることが多く、初対面ではナメられることが少なくない。そういった経験が私をそうさせてしまったのではないか、と自己分析している。
「見た目が背が低くて顔も童顔やから、余計にそのギャップがすごいよね。ロールキャベツ的な? 心に狂犬飼ってる的な? あ、もちろん良い意味やで?」と38歳おじさん。
あ、良い意味なん? ほなまぁええか……とはならない。いや、狂犬が良い意味なわけないやろ。狂った犬やぞ? 絶対褒めてないしそのギャップが良いギャップなわけない。決してない!!!!
不服な私を前に、26歳女子が「あー、まぁでも。乙女要素はありますよね。たまに乙女ですよね、すごく。うん」とフォローを入れてくれた。そうなると、私は「乙女要素のある加藤浩次」ということになるが、果たしてそれはどうなのだろうか。
ちなみに、どのあたりに乙女要素を感じるのか深掘りしてみると、「うーん、そうですね……。うーん……」と悩ませてしまった。せっかくのフォローを無駄にしてしまって、申し訳ない気持ちになった。
ひとまず、ブックラブの質問に関しては「真面目」「正義感が強い」と回答した。「乙女要素のある加藤浩次」と書くべきではないということだけは、いくらお酒を飲んでいたとは言え、私にもわかった。
そして迎えた当日。ブックラブだけではなく、読書会というイベント自体に初めて参加するので、果たして選書はこれで間違っていないのか、ちゃんと説明できるだろうか、など恋愛目的云々の前に、そういった細かいところが気になった。緊張していたのだが、他の人が紹介する本がどれも面白そうで、それを聞いていると単純に楽しく、緊張は少しずつなくなっていった。
会が進んでいき、男性陣が入れ替わり、グループのシャッフルがあり、男女問わずいろんな方と話すことができた。たくさん話してはいたつもりなのだが、ふとした時に、シーンと沈黙になってしまった。
関西人の方ならわかっていただける方が多いのではないかと思うのだが、関西人としては、どうもこの沈黙が怖いのだ。「あ、沈黙になってしまった」と認識する前に何か言葉を発することができたなら良いのだが、「あ」と思ってしまってからではもう遅いのだ。それhもう芸人がネタをしてスベって客席がシーンとなってしまったのと同等の、謎の焦りがあるのだ。芸人ではないのだが、幼い頃どころか物心がつく前から吉本新喜劇を強制的に視聴させ続けられた英才教育を受けた身としては、5秒以上の沈黙は、劇場でネタ見せして大スベリしたのと同じなのだ。劇場に立ったことはないけれど。
「あ」と思ったはいいものの、どうすればこのスベりきった空気感から脱出できるのかわからない。誰か、助けてくれ……と考えていると、お世話役のスタッフさんが通りかかった。私はまっすぐ綺麗な挙手と共に「話のネタが尽きてしまいました!」と元気に宣言してしまった。ウケるかな、と思ったのだ。ちょっとバカなフリしてこう言ったら、「あいつ何言ってんだ」ってみんなちょっと笑うかな、それで空気変わるかな、と思ったのだ。芸人でもないのに、笑いをとりたいと思ってしまうのだ。
何にも、誰にも迫られていないのに、私は「笑いを取らなければ」という謎の脅迫概念に迫られている。
会社の営業部で行った飲み会では、おじさんたちの頭皮のニオイをなぜか嗅がされたこともあった。出るとこ出たら勝てそうな事案な気もするが、周りが爆笑していたので「ウケたウケた」と満足していた。帰宅して顔は念入りに洗った。
別の機会に行ったカラオケでは、誰も盛り上がる曲を歌わないので「これはもしやフリなのか……?」と勝手に、変に深読みし、歌ったのは湘南乃風の『睡蓮花』だった。普段大きな声を出さない私が、手を振り回しながら叫ぶその姿を見て、ある人は「ストレス溜まってるの?」と心配してくれ、ある人は「社長が泣くからやめなさい」と言われ、ある人は「睡蓮花いいよね~、私もよく歌うよ」と言った。睡蓮花を自主的に歌ったのはその1回だけだったのだが、その後社内で私の十八番が睡蓮花であるというデマがあれよあれよと広がってしまい、そのまた別の機会に同僚たちと行ったカラオケでは勝手に『睡蓮花』を入れられ、誰かが歌うのかしら、とボーっとしていたらマイクを渡されたのだった。もちろん全力で歌った。
もうこれは、関西人の悲しい性なのだ。他地域出身の方からするとどうってことない間でも、関西人にとっては恐怖に感じてしまうのだ。あわわわ、なんか喋らな……! って脳がもうそういう考えになってしまうのだ。
恨むなら、父だ。吉本新喜劇を強制的に私に見せて育てた父を恨むのだ。私がこんな行動を取ってしまうのも、すべてお前のせいだクソ親父。お前のせいで、私はこんな立派でややこしいこじらせ女になってしまったじゃないか。どうしてくれるんだよクソ親父。
せめてもの救いは、挙手による宣言によって少し笑いが起こったことである。思い返せば空気の読めない行動であり、ライティングゼミの提出課題でご法度とされている「ネタがないことをネタにする」と同じようなことをやってしまっているなと気が付いた。そうだよな、ちゃんと自分が提供できるネタをストックしておくべきだよな。それはライティングだろうとこういう場であろうと一緒だよな。別格の美女以外は微笑んでいるだけではダメなのだよ。家で鏡を見て思った。私は微笑んでいるだけではダメな人種だ。ネタをストックしなければ。
結論。私がモテない理由は、漢字2文字で表すと「狂犬」、もう少し詳細に表すと「乙女要素のある加藤浩次」であること。まずはこの加藤浩次要素を薄めていかねばならない。そして飲み会の時ははぐらかされてしまったが、25歳女子の後輩に「私のどこに乙女要素を案じるのか」という点について聞きださねばならない。
そしてもう1つ、笑いに走りすぎている。クソ親父の英才教育の賜物で、沈黙やスベるということに底知れぬ恐怖を感じる人間になってしまった。英才教育を受けてしまっているゆえ、これはちょっとやそっとじゃ治せない。長期戦になることは織り込み済みだ。笑いを取らなければという脅迫概念も、加藤浩次要素と共に少しずつ薄めていくことが私の目下の課題である。
この課題をクリアする頃には、果たして彼氏はできているだろうか。そしてこの課題をクリアするにはどれくらいかかるのだろうか。
願わくば、課題をクリアせずとも、この面倒くさくて、ややこしいこじらせ非モテ女を受け入れてくれるイケメンが現れますように。
***
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