死にいくもの、残されるもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:未来(ライティング・ゼミ8月コース)
先日、おじいちゃんが亡くなった。100年という人生だった。
大往生ではあったが私はもっともっとおじいちゃんとの時間を過ごすべきだった。
私のおじいちゃんは誰もが知るアメリカの外食チェーン店の社長だった。大正生まれで戦争も経験し70年以上前に海外赴任をし、日本の外食産業に貢献して来た。
私は幼少期からそんな偉大な業績を成し遂げたおじいちゃんが自慢だったし、大好きだった。私が初孫ということもあり本当に可愛いがってもらった。一緒に国内外旅行に行ったり、食事もよく行った。
私は現在、40歳。この年齢までおじいちゃんが健在な方はあまり多くないだろう。だからたくさんの時間をおじいちゃんと過ごせた私は幸せだと思うけれど、おじいちゃんの命の灯が消えかかった時に私は「もっと一緒の時間を過ごすべきだった」と悔いが残った。
2020年の夏。おじいちゃんとおばあちゃんが自分たちで生活するのが難しくなり、介護施設に入ることになった。コロナの影響で面会規制があり、3ヶ月に1度くらいのペースでしか会いに行くことが出来なかった。そんな中、おばあちゃんの容態が悪くなり、2021年の6月に他界した。
おばあちゃんが他界してからおじいちゃんは施設で1人で過ごすようになった。おばあちゃんのいなくなった部屋はぽっかりと空間が空いていたようだった。施設の方が親切にして下さっていたがきっとおじいちゃんはおばあちゃんがいなくなってからの時間は寂しさともどかしい気持ちでいっぱいだったと思う。50年以上も一緒にいたパートナーに先立たれ、身体も老化に伴い以前のようには動かなくなり、遊びに行くと「つまらない。早く死にたい」と冗談混じりで言っていたが、今思うと本音だったのだと思う。
東京オリンピック以降はコロナによる面会規制も緩み、予約をすれば会いに行けるようになった。私の家からは施設までは電車とバスを乗り継いで1時間かからない距離だった。それなのに私はおじいちゃんの所に行こうと思ってスケジュールを立てても遊びの誘いが入ると「行くのまた今度にしよう!」とおじいちゃんのことが気にかかりながらも自分の都合を優先してしまい、結局2-3ヶ月に1回くらいの頻度になってしまっていた。おしゃべり好きなおじいちゃんは行くと嬉しそうに色んなことを話してくれた。
おばあちゃんが他界してから1年後の2022年の6月末におじいちゃんは100歳になった。コロナも少し落ち着いていたタイミングだったので、家族みんなでホテルでお祝いのパーティーをした。これがおじいちゃんとの最後の食事になった。この時はまだ介抱は必要だったものの外出も食事も会話も楽しく出来た。
それからわずか2か月後、おじいちゃんの様態があまりよくないとの連絡を受けた。連絡をもらってすぐおじいちゃんのところ行ったがその時はまだかろうじて会話は出来る状態だった。その時、おじいちゃん自身も最後なのを分かっていたのかもしれないが弱った声で「ありがとう」「ありがとう」と何度も言ってくれた。涙が止まらなかった。
そこからわずか2週間でおじいちゃんの状態がみるみる悪化していった。お医者さんからは「もういつどうなってもおかしくないです」と告げられ、私はおじいちゃんが亡くなる最後の1週間は毎日、面会に行った。もう会話は出来なかったが、声をかけるとうなずいたりと反応はしてくれた。その時になって私は本当に後悔の気持ちでいっぱいだった。行こうと思えばいつでも顔を見に行ける距離だったのに、会いに行くことをおろそかにしてしまい1人ぼっちの寂しい時間を過ごさせてしまった。おじいちゃんと会話出来るうちにもっとたくさん話ししておけば良かったと、悔やむ気持ちでいっぱいだった。最後はきっと伝わっているという思いで私はおじいちゃんに「ありがとう。もっと元気な時に来れなくてごめんなさい」と伝えた。
2022年8月末日、おじいちゃんは他界した。とても安らかな顔立ちだった。ずっとおばあちゃんに会いたいと言っていたので無事におばあちゃんの所に行けたのだと思う。施設から搬送の際、施設の方たちがおじいちゃんの顔を最後見に来てくれて涙を流しながらお別れをしてくれた。最後までみんなに愛されたおじいちゃんだったことがとても嬉しかった。
また明日、また今度と思っても「また」は来ない。毎日同じように時間は過ぎていくけれど、同じ毎日なんて来ない。家族、友達、恋人、ペットなど大切な人との時間は永遠ではない。今、もしあなたに大切な人たちがいるのであれば必ず別れの時が来ることを忘れずに大事な人たちとの時間を過ごして欲しいと思う。もし、明日あなたの大切な人と会えなくなったとしたらあなたは何を思いますか? ちゃんと顔を見て声をかけるべきだった? もっと会っておけば良かった? もっと連絡しておくべきだった? 悔やまない人はいないと思いますが、出来るだけ後悔しないように今出来ることは私自身も日々の中で意識して行い、毎日を大切に生きていきたいと思います。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325