匂わせが日々を潤す
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:鈴木あかね(ライティング・ゼミ10月コース)
私はとあるアイドルグループを推している。
推しを推す日々は、毎日が宝探しクイズ大会のようで、とにかく楽しい。
そのグループはSixTONESという。
ジャニーズの若手グループだが、いわゆるキラキラ王道系アイドルとは若干異なっている。どう異なっているか、詳しくは彼らのYouTubeチャンネルを見ていただければお分かりいただけるはずだが、端的に言うと「自由に勝手に、自分たちのやりたいことをやり抜いている」のだ。
そのずば抜けて異端児なエピソードは山ほどあるが、特に好きなのがライブMCの話だ。よくアーティストのライブでは、曲と曲の間にトークをする時間が設けられている。彼らのライブも同様で、おおよそ15分ほどの時間が予定されていたという。だが、メンバー6人とにかくおしゃべりな彼ら。喋るのが楽しすぎて止まらなくなり、15分を超えて、20分、30分・・・・・・時折、メンバーが耳につけているインカムへスタッフより注意が入るが、全員無視。結局45分も喋り続け、ライブの終了時刻を大幅超過。会場の延滞料金が発生し、MCタイムの倍以上の時間、スタッフに叱られたそう。それでも懲りず毎度喋り過ぎ、罰としてライブ後の弁当が、白米に海苔文字で「MCナゲエヨ」(スタッフからのクレームが1弁当1文字ずつ切った海苔で記されている)のみだったり、トークの途中でマイクや照明の電源を落とされ、強制終了させられたり。周りに怒られようが迷惑をかけようが、「今これがやりたい!」を好きに貫いてしまうのだ。もちろんそれはファンが喜ぶという前提の下であり、それを彼らの個性として、愛をもって(半ば呆れながら)受け止めているスタッフとの信頼関係も垣間見える、そんなところも好感ポイントなのである。
そして、そのやり抜いていることの1つに「匂わせ」がある。
彼らはとにかく匂わせが好きなのだ。だいたい大きな告知ごとがあるときには、その雰囲気をふんわり、だがわざとらしく漂わせてくる。
例えば直近では、こんなことがあった。
メンバーのジェシー・京本がそれぞれ10月から始まるドラマの主演を務めるが、そのドラマの公式SNSでの投稿に、それぞれ異なる文面で「Good Luck」「ふたり」の言葉が含まれるものが同日投稿された。
この匂わせは初級で、ファンはすぐに「それぞれのドラマの主題歌名だ」と勘づいた。
そして翌日、両A面シングル「Good Luck/ふたり」のリリースが発表され、見事答え合わせができてスッキリ、気持ちいい! そして新曲楽しみ! と盛り上がる。
ある時には、SNSに投稿されたメンバーの集合写真で、1人だけ指を7本立てていた。「7ってなんだ?」「7日後に何かの発表?」「新曲か?」などと、ファンの間では推測の嵐。そして確からしい結論まで辿り着けないまま、7日後にメンバーのゲスト出演の発表があった。「それはわからなかった!」「でも出演嬉しい!楽しみ!」「本当SixTONESって随所で匂わせてくるよなー」と盛り上がったのだった。
この、匂わせを嗅ぎ取り考察し、答え合わせからの爽快感と期待感までがワンセットのアトラクションなのだ。まるで、ミステリー小説を読んで、終盤に怒涛の伏線回収をされるように。どこに転がっているかわからない宝を探し、見つければ宝が何物かを当てるクイズのように。
ちなみに、主題歌が匂わされた2つのドラマは、異なるテレビ局で放送される。つまりこの匂わせは、事務所とレーベルのみならず、局を超えた強い協力体制だったと言える。周囲もストレートに事を進めていくのではなく、一種のエンタメとして匂わせを活用してしまっているところも、「自由にやりたいことをやり抜いている」彼らと相まって効果を生み出しているように思う。
今まさに考察の答え合わせ待ちなのは、8月に公開されたYouTube動画内で「66」の2桁が小さく出たり消えたりしているものがあった件。彼らの大切にしている数字「6」ではなく「66」であったことがさらに謎を深めており、「66日後に何かあるのでは?」「アルバムの発表か?ツアーの発表か?」とざわついている。ここ半年ほど熱心に情報を追っている私が感じるに、この伏線回収案件は高難易度だ。そもそも「66」の文字が小さすぎて、動画から初見で見つけられた人は数少ないはず。そこからその数字の意味を考察するが、正解候補がありすぎる上、今のところヒントとなるような追加の匂わせも見つけられず、結論づけるには安心感がない。はっきりしないモヤモヤと、どんな嬉しい答え合わせが待っているかというウキウキを共存させながら、ここ数ヶ月を過ごしている。
彼らも彼らで、ファンがこのように考察していることを知っている。知っているので、どんどん仕掛けてくる。かと思いきや、匂いを嗅ぎ取る隙もなく唐突に、ラジオの冒頭やドラマの劇中で新曲を公開し、意表をついてくることもある。そうするとファンは「前触れもなく!」「このタイミングで?!」とまた騒ぐ。そのリアクションを彼らが「へへへー、わからなかっただろー」とニヤニヤしながら喜んでいることも、私たちファンは知っているので、悔しがりながらも楽しんでしまう。
彼らを推していなければ、この複雑な感情にはならなかっただろう。モヤモヤの先に楽しみがあるとわかっているのだから、喜んでモヤモヤの種、すなわち宝となる伏線を探しに行ってしまう。「ムカつくけど推してて楽しい!」の気持ちが、彼らのファンを続けざるを得ない、SixTONESの沼にハマる理由なのだ。
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