fbpx
メディアグランプリ

焼き鳥が第一走者にふさわしい理由(わけ)


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:紫月 涼帆(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたのは2013年だ。私が20代の頃は、日本を「魚を生で食べる」野蛮な国だとか、海苔巻きの海苔の黒さは食欲を萎えさせるとか、味噌汁からは雑巾のニオイがするなど、いろいろ言われていたのを思い出す。
 
今でこそ生魚の握り寿司は和食の代表格になり、繊細な出汁文化も認知されるようになった。サルモネラ菌に対する懸念から、多くの国や地域で抵抗感の残る「生卵」を食す「玉子かけご飯」でさえ、最も先進的な訪日市場の香港では、旅行雑誌で特集が組まれるほどにファンも増えた。一般的な和食の中でラスボスとして残るのは納豆くらいか。
 
外国人観光客の誘致に関わる仕事をしていた頃、海外の旅行会社から関係者を招き、観光地を見せて訪日旅行商品の造成催行を促す視察旅行に同行する機会が多々あった。対象市場や顧客の属性により好みや関心は分かれたが、欧米のハイエンド層をクライアントに持つ会社をアテンドすることも多かったように思う。
 
彼らの多くは、物見遊山やショッピングより、日本の伝統文化や自然、そして何より和食に高い関心を寄せる傾向があった。そして、そんな彼らに日本の食文化を見せたいとき、私が決まって使ったのは焼き鳥専門店だったのだ。それも、できるだけ滞在日程の最初のほうで連れて行く。
 
和食の特徴の一つに食材を丁寧に捌く調理方法があると思う。中華や地中海料理のように大皿でサーブする文化がないことも大きいが、やはり食べやすさや食感を揃えることも目的の一つだろう。そしてその結果、部位それぞれを最も美味しくいただける調理方法の探求につながってきた。それを説明しやすいのが焼き鳥なのである。
 
牛や豚、マグロではなく、ニワトリであることがベストなのは、小さな体であること、そして、世界にはあまり魚を食べない国もあり、自国の食文化と比較してもらいやすいという2点にあった。
 
まずは、手羽先(チキンウイング)やモモ、つくねなど、比較的、馴染みのあるものからオーダーする。ビールや日本酒もすすみ、少し気が大きくなりだした頃を見計らって、食感を楽しむ砂肝やヤゲン軟骨等、抵抗感の低そうなものも混ぜていく。一羽のニワトリを事細かに部位分けして捌いていることや、串は部位ごとに揃えられて味付けや焼き加減を変えていること、そして日本人が臓物をかなり好むことなど、多くを理解してもらうことができる。
 
最骨頂は、専門店ならではの鳥刺しだろう。「チキン、サシミ? No! No! 」と最初は怖がっても、勇者は必ず一人はいるもので、一口頬張れば「まるでツナ(まぐろ)だ! 美味しい」と驚き、後に続いた猛者たちがチキンサシミの写真をFacebookに投稿すると、「今すぐ医者に行け」というコメントが海外から殺到する。それを皆で笑いあうのも、食材の新鮮さを大切にする日本食への好感度を上げるきっかけになっていると思う。
 
加えて、昔からあるような地元の専門店の店構えも、外国人にはかなりエモいだろうと思うのだ。大抵、もうもうとあがる煙の中で店主が甲斐甲斐しく串を焼いている姿があり、シャッターチャンスの格好の的になっている。
 
また、庶民の店らしく、とても狭い店内に、小さめのテーブルや椅子が所狭しと並んでいたり、ガタイの大きい西洋人を連れて行こうものなら、椅子が2つ以上ないとお尻を支えきれなかったり、そもそもテーブルと壁の間に彼らのビール腹が入らないなんてこともあって、焼き鳥専門店は彼らにとって十分に「ディープ・ジャパン」を楽しむコンテンツになっていると思う。
 
焼き鳥のあとなら、焼肉レストランで和牛を食べさせる際も説明を端折ることができる。「たかがバーベキューなのに、なんでビーフだけでこんなにメニューが多いんだ」というのは、外国人からの質問あるあるだが、これは舌、これは肋骨のあたり、これは心臓と説明を始めると、「オッケー、オッケー、もうわかったから、おススメを頼んでくれ」 あの小さなニワトリでさえそうだったのだから、それより大きい牛であればなおさら丁寧に捌いているのだろうと、簡単に納得してくれるようになる。
 
日本の食文化を見せる切り口は様々あれど、繊細さや手先の器用さ、食材への半端ないこだわりを伝えるには、やっぱり焼き鳥が一番いい仕事をしてくれるように思う。あなたが次に焼き鳥店に行く時は、ぜひ一度、外国人たちの目線を想像してもらえたら楽しいと思う。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事