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「病は気から」で学んだこと


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:TOMOMI(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「病は気からってことばがあるでしょ。気持ちの問題だよ」
 
友達のA子は会うと必ずこの言葉を私に投げかける。
それも、自信満々に言い切る。
そのたびに、私の中にモヤモヤした感情が現れる。
そのことを信じている彼女には何を言ってもわかってもらえないだろう。
彼女は病気を経験したことのない健康な人なのだと思う。
悪気はなく、私のことを励ますつもりで言ってるのもわかる。
だから、言い返したくても、言い返せない。
でも、私の心はその言葉で深く傷ついている。
 
私は、数年前に難病といわれる膠原病なってしまった。
病院で、確定された時は目の前が真っ暗になり、谷底に落とされたような心境だった。
しばらくは、落ち込みながらも、なんとか治す方法はないかとネットで調べまくった。
 
その日から、ずっと病気とむきあう毎日を過ごしている。
朝起きたとき、これが夢だったらよかったのにと何度思ったことだろう。
体に良いといわれるものは、なんでも試してきた。
「断食」「鍼治療」「サプリ」「ヘルストロン」「食事改善」「睡眠改善」「Bスポット治療法」「運動」「あいうべ体操」「漢方薬」「ホルミシス療法」「マインドフルネス瞑想」など。
かなりたくさんのことを試してきた。
お金も使った。
良さそうな病院には、遠くても新幹線や飛行機で診察を受けに行った。
「この病気が治るためなら、なんでもする」
そんな思いで必死だった。
苦しくて悲しくて辛い。
おそらく、病気を抱えた人はみんな同じような心境だろう。
 
膠原病という病気は、自己免疫疾患で、なぜそうなるのか原因がわかっていない。
自分の免疫が、自分の臓器を攻撃する。
原因がわからないから、西洋医学では、あらゆる症状を抑えるための薬を飲む対処療法しかない。
日々、強い薬を飲み続ける恐怖と症状のつらさに苦しみながら病気と戦っている。
そして、残念ながら薬で抑えたとしても進行してしまう難病なのだ。
 
そんな病を抱えた私に彼女は冒頭の「病は気からだよ」という言葉を会うたびに投げかけてくる。ほんと、やめてほしい。
気持ちだけで病気になるわけではないし、正直、今現在、病気を発症している人にとって、
この言葉はかなりキツイ。
病気で苦しんでいるのに、この言葉を聞くとメンタルまでやられてしまう。
「私の気持ちが病気をひきおこしたってこと?」
「病気になっているのは、私が前向きじゃないってことなの?」
「治らないのは、まだ、気持ちが良くないのが原因ってことがいいたいわけ?」
こんなことが頭をよぎる。
 
必死で病気を克服しようとたたかっているのに、「あなたの気持ちのもちようが良くないから治らない」と言われているようで、すごく嫌な気持ちになる。
それと同時に、「やっぱり、私の気持ちのもちようが悪いから治らないの?」と、原因を自分に向けてしまう。自分の性格をせめてしまうことさえある。
「私はネガティブ人間なんだ」と自分を否定することにもつながる。
 
たしかに、ストレスは体に影響をあたえることは事実であると私も思う。
私は、嫌なことや悲しいことがあると、眠れなくなる。自律神経が乱れやすいようだ。
だから、大きな辛い出来事で病気になることがよくあった。
 
妊娠中、切迫早産で2か月間点滴入院した時は、毎日辛くて泣いていた。無事出産はできたが、その後、食道アカラジアというめずらしい病気になってしまった。
これも、原因がわからない病気で、ストレスが関係しているのではないかと言われた。
 
子供の中学受験の時には、メニエールを発症してしまった。
これも同じように原因がわからない病気だが、やっぱりストレスが関係していると言われている。
耳が難聴になってしまい、いよいよ補聴器をつけることになるのか? と思っていたら、中学受験が終わったと同時にすっかり治ってしまった。
 
膠原病の血液数値も、メンタルの状況で良くなることも悪くなることもあった。
自分の経験からも、ストレスが自律神経に影響をあたえているのはわかっているし、自分の考え方でストレスを小さくすることができるのも理解している。
 
だから、病気を治すためメンタルの勉強も始めた。
メンタリングや心理学、アンガーマネージメントを学び、自分の考え方やとらえ方をかえようと努力している。
そんな私の状況など知らないのに、得意気に「病は気からだよ」という彼女の発言に私はイライラする。病気になった人の気持ちもわからないくせに。
 
でも、まてよ。私も、過去に同じ事してなかったか?
 
私が30代だったころ、友達からだんなさんの浮気について相談されたことがあった。
私は、彼女を心の底から心配していた……はずだった。
彼女に「不倫するような男、今後信じられないからわかれた方がいい」と私は言った。
しかし、夫から冷たくされているのにも関わらず、彼女は離婚しないことを選んだ。
その時は、「なぜ、離婚しないのか?」と思った。
 
その後、私の身にも似たようなことがふりかかった。
友達と同じようなことを経験した私が選んだ道は、彼女と同じ離婚しないことだった。
辛いけど、悲しいけど、怒りでいっぱいだけど、悩みに悩んで離婚しない選択をした。
 
人には離婚をすすめたくせに、自分の時は離婚しなかった。
結局、自分が経験してはじめて当事者の気持ちがわかるのだ。
正論をふりかざして経験してもないことを、安易にアドバイスしてはいけなかった。
私は、あの時、彼女に寄り添い、気が済むまで話をきいてあげるだけでよかったのかもしれない。
結論を彼女自身が決めれるようになるまで、とことん話を聞いてあげるだけでよかった。
アドバイスなんてしなければよかった。
彼女の気持ちをわかったつもりになっていただけだった。
自分が夫婦問題を経験して初めて、その時の彼女の思いや離婚を選択しなかったことが心底理解できた。
簡単に離婚なんて言葉を出しちゃいけなかった。
 
人それぞれ考え方は違うから、どう寄り添うかの正解はないのかもしれない。
でも、いつもそばにいて話を聞いてくれる人がいるってことは、なによりの励ましになる。
少なくとも私の場合は。
 
自分が経験してないことについて意見する時は、慎重に言葉をえらばなくてはいけないし、
求められるまで意見しない方がいい。
気持ちを理解したつもりになるのもよくない。
辛さや悲しさは、経験しなければわからない。
そのことを肝に銘じよう。
 
「病は気から」と言われモヤモヤした気持ちは、そんなことを私に気づかせてくれた。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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