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俺のオネショは我が子を救う


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記事:成澤ゆう(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「まだ大丈夫」
 
「もう少しなら大丈夫」
 
「あと、5分」
 
「あー、もう無理!」
 
というところで、ハッとして目が覚める。
もしかしてと確かめて安堵する。
今でこそ見なくなったけど、大人になっても年に一、二回は見ていた夢。
 
その昔はこの時点で股間周りがぬるく湿っていた。「あー、やっちゃったー」と思いながらも、慣れたものでそのまま寝ていた。
 
そう、これは私のオネショ体験とその記憶からくる夢の話。いつから始まったのかは知らないけど、小学校に上がってから何年もの間、私はオネショ常習犯だった。多分、1日おきくらいに犯行を繰り返していた。後半は手慣れたもので、犯行後の後始末もお手のもの。布団を自分で拭いて、干してから登校する日々。もはや大した反省もしていなかったから、裁判長がいたら判決理由を先に述べ始める実刑判決だろう。
 
反省はしなかったものの、オネショをしたかったわけではない。湿った感じは気持ち悪く不快感しかないし、恥ずかしいという思いはあった。学年が上がれば上がるほど、その恥ずかしさは強くなっていった。幸い頻度は歳とともに減っていき、最後にした記念すべきラスト・オネショは、五年生だったと思う。でも、オネショには、有終の美なんてものはない。不快感と恥ずかしさしかない経験である。
 
こんな経験、何の役にも立たない、忘れたいものでしかなかったのですが、何と! 役に立つ時が訪れたのです! それも最終的に人を二人も救うことになったのです。救った二人とは、タイトルの通り我が子である。この文章を書いている時点で小3と年長の娘と息子です。
 
二人とも私より根性がないので、年少の頃にはオネショをしなくなった。オネショ・マイスターの私からすると「最近の若いもんは」といいたく……は、ならない。素直に良かったと思うし、早々に克服した二人を少しだけ誇らしく思ふ。
 
でも、克服するまでは、本人も嫌だったと思う。不快感はあったと思うし、何よりそれが良くないこととして教えられていたから、オネショのたびに失敗したという意識があって、凹んでいるように見えた。特に息子はま娘より頻度が多く、ママを苛立たせることもしばしば。小言を言われてしまい、しょぼくれることが多かった。
 
そんな様子を見ると、私の頭では小学生までの経験が思い返されるのだが、いつも私は思っていた。「まだこの子は年少だよな。俺は小五でもオネショしていた。全然良いじゃないか。」と。だから、そんな我が子にこんな風に伝えていた。
 
「オネショ、またしちゃったねぇ!でも、パパなんて小学校の5年生のお兄ちゃんになってもオネショしてたんだよ! そのうちしなくなるから気にしなくていいからね」
「え! パパ、そんなに大きくなってもオネショしていたの?!」
「そうだよ。パパもバァバに怒られてたよ」
「へぇー、そうなんだぁ」
 
こんな会話をすると、「へぇー」という息子の顔からは先ほどの凹んだ雰囲気は消え失せ、明るく元気になっている。同じことは娘でもあって、同じような反応でした。
 
恐らく、彼らの自尊心は少なからず失敗したことで傷ついていたと思う。でも、彼らに比べて何でも出来てしまう「完璧なパパ」が、まさか小学5年生までオネショという失敗をしていたとは思いもよらず、その事実は彼らにとって驚きであったとともに、救いであったはずた。救われたからこそ、傷が癒やされ、勇気が湧いたのだと思う。
 
そう、お分かりいただけるでしょうか。私と私の母を苦しめたオネショは、よく出来た小説のように、我が子に伝えることで見事に伏線として回収されたのです。私のオネショは、無駄ではなかった。このためにあったのだと、高らかに叫びたい(笑)
 
でも、私はこの話を通じてオネショ経験のある方々に、「皆さんのオネショが無駄では無い」ということを伝えたいわけではありません。お伝えしたいことは、オネショに代表される私たちの「失敗」は、誰かのために使うべきなんじゃないかということです。
 
私は、オネショに留まらず過去に沢山の失敗を経験してきましたし、今も失敗ばかりです。その失敗を通じて学びもあるわけですが、自分の利益とするだけでは勿体ないと思うのです。せっかく人生の大切な時間を使った上で経験した貴重な失敗なのだから、有効活用しないと勿体ない。
 
その有効活用の一例が、失敗を人に伝えることなのではないかと思うのです。失敗は恥ずかしいことであり、人に話すことに勇気がいるかも知れません。でも、それを伝えることで、伝えた相手に安心や勇気を与えることが出来るとしたら、伝える価値があるのではないでしょうか。
 
そして、伝えることで二次的な価値が生まれることもあります。それは、自分の失敗を肯定することが出来るようになるということです。私のオネショ話でいえば、過去の恥ずかし体験が我が子の安心と勇気になり、それによって自分の恥ずかし体験がポジティブなものに上書き更新されました。子どもの自尊心を守るだけでなく、自分の自尊心も高まる、一度で二度美味しい感覚でした。
 
安心や勇気を与えることは、簡単ではありません。でも、失敗経験を使えば、思いの外、簡単にそれが出来ます。ぜひ読者の皆さんも、ご自身の失敗体験を思い出してみて、その失敗がどんな人の役に立つか考えてみてください。これから起こす失敗も、将来の誰かのためになることかも知れません。失敗は真摯に受けとめつつも、過度に落ち込むことなく前に進んでみてください。
 
失敗から学んでプラス、失敗を誰かに伝えてプラス。考えようによってはマイナスの経験なんて存在しないのかも知れません。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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