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青春はなま物で、足がはやい


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記事:藤野宏隆(ライティング・ライブ京都会場)
 
 
「先輩! 久しぶりに当時を思い出して一緒にやりましょうよ!」
4年前、私は地域のイベントサークルの代表を務めていた。
そこの後輩で今も現役で活動しているメンバーから久しぶりに連絡が入った。コロナも落ち着いてきたので、来年度は以前のように大々的に活動を行うらしい。そこで昔みたいに一緒に活動してくれないかということだ。
連絡をもらって、私はすごく嬉しかった。今も現役で活動しているメンバーは私が代表を務めていたときに、声を掛けたことがきっかけで入ってきてくれたメンバーだ。当時は、何も知らない彼らに、イベント運営の知識だけでなくサークルの魅力や地域の魅力など色々なことを教えながら面倒を見てきた。一方で、私自身も彼らに支えてもらうことで活動を続けていくことができた。そんな思い入れのある後輩たちが、今も私のことを仲間として考えてくれているように声を掛けてくれたことはとても嬉しかった。
 
しかし、私は「分からないことや頼りたいことがあったらOBとして力は貸すよ。でも、前みたいに主として一緒に活動することは難しいかな」と連絡を返した。
こう返答しながら、私は「ああ、私の人生であのイベントサークルを舞台とした青春は終わったんだな」と感じていた。
それに対して、寂しさはなく、少しの驚きのあとに、大きな満足感のようなものが込み上げてきた。私自身が先輩に誘われて始めてイベントサークルに参加し始めてから、気づけば代表となり、メンバーの勧誘や団体の運営と試行錯誤を重ねて活動に取り組んできた一連の思い出がよみがえってきた。当時、すでに20代なかばだったが、私にとってまさにそれは青春だと胸を張って言える日々がそこにはあった。
そして、今、また同じ舞台に当時と同じメンバーに誘われた。状況は当時と同じである。しかし、自分が代表として率いていた時に感じていたような、どうすればいいのか分からない不安や先の見えない恐怖と好奇心が自分の心の中に湧き上がってくることはなかった。
おそらく、この私が代表を務めた時期がもう少し早かったら、私自身がリーダーとして最高のパフォーマンスを残すことは出来なかっただろう。あるいは、もう少し遅かったら、年齢が五つ以上離れている後輩たちを巻き込んでいけるような熱量は発揮できなかっただろう。その時の私がそのタイミングで体験したからこそ、あの舞台は私にとって青春となったのだ。
 
青春には賞味期限があるのかもしれない。そう思って、私は過去を振り返ってみた。
 
高校生のとき、私の青春の舞台は部活動だった。弓道部に所属し、平日は授業終わりから、日が暮れるまで。休みの日はお弁当をもって、一日中。夏休みなどの長期休暇はそれが毎日だった。今となってはそんな日々を過ごすことは想像することもできないが、友達と多くの時間を共有しながら一つのことに打ち込んでいたことは、まさに青春だった。
部活を引退したあとは、大学受験勉強が青春だったといえるかも知れない。部活動に充てていた時間がすべて勉強に置き換わった。一日中、図書館で勉強したあとの帰り道の気持ちの良いやりきった感情を覚えているが、当時の生活を今もう一度再現しても同じような感情を抱くことはできないだろう。
 
やはり、青春にはその時に味わうべき賞味期限があるようだ。
では、青春に年齢制限はあるのだろうか。私は、希望も含めて年齢の制限はないと答えたい。
どこかの詩人が言ったように、青春はその人自身の心の持ちようだと思うからだ。
生活のすべてを野球に注いで甲子園を目指す高校球児も、志望校を目指して毎日机に向かう浪人生も、自分の為にあるいは家族の為に毎日の仕事に精を出すサラリーマンも、ドラマのような一世一代の恋愛模様を繰り広げる恋人たちも、本人が青春だと感じているならそれは青春に間違いないのだ。だから、青春に年齢制限はないはずだ。
実際、私の人生でも、年齢を重ねながら、部活やイベントサークルといったようにその時々で舞台を変え、青春と言える瞬間を感じてきた。
 
そこで、ふと考える。では、今の私は、これが青春だと言えるような舞台に立っているのだろうか。……。まずい。今、私はどこの舞台にも立っていない。一丁前に自分の目標や理想は持っているが、燃えるような情熱も、脅威に立ち向かうたくましい意志も、未知への探求心も、自分の心の中に備えてはいない。
青春はなま物で、あしがはやい。
「私は! 今! まさに青春の真っ只中にいる!」と大声で叫べるような毎日じゃなくていい、ふと思い出したときに「ああ、私の人生であの時はあれが青春だったな」と考えられるように、日々を全力で生きていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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