メディアグランプリ

ヲタクが滅亡すると世界経済がちょっと危うくなるかもしれない


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記事:溝口弘子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
ヲタクは、滅びない。
というか、ヲタク魂は死ぬまで消えない。“推し”につぎ込む金額も衰えを知らないと自覚した2022年、私55歳の春。
 
確かに私は物心ついた頃からマンガを描いており、10代からコミケに関わり、1980年代のマンガやアニメはほとんど見ていたヲタクだった。
しかし、大人になって結婚し、育児に追われた頃からマンガを描くことも全くなくなり、そして息子も独立。それからも私は会社員として着実に歩ませていただき、帰りは遅いがやりがいのある毎日を送っていた。
 
2020年、新型コロナウィルス感染症の流行で世界は変わった。
 
外出も自粛、仕事もリモートワークが主流となり、働き方が変わった。毎日片道1時間半かけていた出勤時間が有効活用できることに気づかされた出来事だった。
 
そして私も変わった。というか、コロナを期に私の中のヲタク魂が復活した。
 
そのころ注目されはじめた映像配信サービスに入会してみたところ、育児でアニメからも遠ざかっていた約20年間を取り戻すように、とにかくアニメや映画を見まくった。
その中で、「なんでこのアニメ作品をリアルタイムで見ていなかったのか。私の馬鹿馬鹿馬鹿」と思わずにいられないほど、私の心に深く突き刺さって抜けないアニメがあった。
 
その作品名は「ゾンビランドサガ」。
 
私が住んでいる福岡県の隣の佐賀県を舞台とした作品だった。佐賀県といえば最近、都道県魅力度ランキング最下位だったのは世間の人の記憶に新しいかもしれない。
 
そのアニメのストーリーは、過去に事故などで死亡した7人の少女たちがゾンビとして生き返り、佐賀県を盛り上げるアイドルとして活躍する、という荒唐無稽を絵に描いたようだが、ところがどっこい、この作品、大笑いさせられたかと思うと、途中でハラハラしたり、最終回は号泣するというなんとも忙しい。
 
そして、アイドルアニメなので新曲を歌うシーンが毎回出てくる。この歌の歌詞が年代を超えて私の心に突き刺さってくる。
「あなたは人生を本当に一所懸命生きているのか」と、ゾンビ少女たちが歌の中から問いかけてくる。私といえば返事が返ってくるはずもないのにテレビ画面に向かって「うん、私も自分の人生がんばるよ! 」と不思議な決意表明をしてしまう。
当時、管理職への打診をされて迷っていたのだが、この少女たちの歌に励まされて管理職になる決心をしたことは、夫にも上司にも言っていない。
 
また、このアニメの登場人物である男性の音楽プロデューサーが少女それぞれの性格ごとに指導方法やかける言葉を変えているところはコーチングの勉強にもなる。最初はバラバラだったアイドルグループの結束が固くなるところは、まるでチームビルディング。いろいろ書いたが理屈抜きで少女たちのドタバタっぷりや支え合うチームワークや歌が元気や勇気をくれる。
 
そこから私の中に眠っていたヲタク心に火がついた。
 
CD購入はもちろん、声優さんたちのライブBlu-ray、関連本、ライブ配信などに惜しげもなくクレジットカード決済をし、アニメに出てきた佐賀県の建物やお土産屋さんや神社、飲食店への聖地巡礼は複数回。
駅の観光協会の方から「コロナ前は海外からもたくさんファンが来てグッズもすぐ完売だったのよ」と聞けば「やっぱりヲタクが経済回していますよね」と、まるで他人事のような言葉を口にして気づいた。
そうか、ヲタクは世界経済の一部を担っているのか。
 
その後も、佐賀県内の全市町に7人の少女たちのデザインマンホールがあると聞けば、高速を飛ばして佐賀の全エリア30か所をコンプリート。車中で流す音楽はもちろん音楽配信サービスからダウンロードしたゾンビランドサガの曲。
マンホールが設置されている県内の道の駅では、海苔、みかん、工芸品、コラボ商品のおつまみ、サイダー、作中に出てきたお菓子の購入はマスト。購入する時は金額の確認なんてせずに支払う。(個人差あります)
 
これまで年に1回くらいしか行ってなかった佐賀県だったが、今ではすべての市町の位置も覚えた。
ついに今年の正月はゾンビランドサガに全く興味がない夫と息子を巻き込み、作中で少女たちが泊まった温泉旅館に宿泊。(もちろん私が全額負担だが後悔はない)
 
今も、全話のセリフはほぼ覚えているが、飽きもせず毎日1話ずつ見ては力をもらっている。「不完全体でいいのだ前に進め」と歌う少女たちから今日も背中を押されながら、ヘッポコ管理職の自分は前に進める。
 
今後、世界がコロナ前のように海外旅行がもっと盛んになったら、心を奪われた作品のためにお金を注ぎ込む人たちもたくさん来日するだろう。ヲタクが世界経済の一助を担っていると確信する。
 
そして、そんな私の息子がどんな仕事についたかというと、大学で培ったICT技術を活かしてしっかりエンタメ系の会社に勤めて、休日は自分の好きなアニメ作品の聖地巡礼もしている。血は本当に争えないが、そんな息子にも自分の道を貫いて、ついでに世界経済を回して欲しいと願っている母である。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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