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短期語学留学への道


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記事:鈴木 洋子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「私、このコースに申し込みます!」
そのとき、これまでの悩みがうそだったかのように、一気に霧が晴れた。
 
30歳代の前半、私は人生の岐路に立っていた。
私は当時、知的に障害のある方の支援をする仕事をしていた。
専門用語では、障害者自立支援法における「就労継続支援B型事業所」、分かりやすく説明すると、いわゆる「作業所」の支援員、作業指導員である。知的に障害のある利用者さんに、各自の適性に合わせて、仕事を分かりやすく教えたり、日常生活のサポートをしたりする仕事である。
 
やりがいがあり、自分にはこの仕事は向いていると思っていた。
しかし、向いている仕事だからといって、ずっと続けられるほど人生は甘くはなかった。
部署異動があり、3ヵ所目に配属になった事業所で、私は人生の転換期を迎えることになった。
 
1ヵ所目、2ヵ所目の事業所は、職場の雰囲気、仕事のペース、人間関係が自分に合っていると感じ、多少の苦楽はあるが、楽しく仕事ができていた。
 
3ヵ所目の事業所で、人間関係という壁が私の前に立ちはだかった。
職場の雰囲気や人間関係が合わないなと思いつつ、どうにか4年が過ぎた。5年目、職場の方針で納得できないことがさらに積み重なっていった。
 
とうとう私は、仕事を辞める、という決心をした。
 
在職中に、転職活動を始めた。
同じような職種の仕事の面接に行ったが、今までの仕事の経験を語っている途中で、面接官の前で涙があふれ出てきてしまった。
その面接の結果は不合格だった。
 
仕事をしながら転職活動をするのは難しい。時間的にも、心にも余裕がなかった。
何より心の傷を抱えたままで、次に踏み出す自信が持てなかった。
 
3月という年度の区切りで退職をし、心身の休養期間を設けようとシフトチェンジした。
 
休養期間を設けるのであれば、海外旅行に行ってリフレッシュしようと思い立った。
選択肢は2つ。
 
1つは、ペルー、マチュピチュへの海外旅行。
もう1つは、短期語学留学。
 
とりあえず、海外旅行のパンフレットをもらいに、旅行会社に行った。
語学留学については、インターネットで調べた。以前テレビ番組で、芸能人が海外の孤児院で子どもたちと交流していて興味があり、探してみた。
ボランティアの活動団体はあるようだった。発展途上国の孤児院で子どもたちと遊んだり、日本の文化を英語で紹介したりするという体験談が載っていた。英語は高校以来ほとんど勉強していなかったため、英語で日本の文化を説明するのは難しそうだと思った。
 
旅先をどこにしようかと考えつつ、ある日、名古屋駅の商業施設で買い物をしていた。買い物を終えて帰ろうとしたとき、奥の方にオフィス棟への通路を見つけた。エレベーター前の各階のオフィス名の看板を見た。そこに「留学センター」の文字があった。
 
こんなところに「留学センター」があったのか!
 
導かれるようにエレベーターに乗り、留学センターがある階のボタンを押した。
留学センターの入り口に着くと、受付と待合室があり、待合室のソファーに数名のお客さんが座っていた。
 
受付の方に、
「留学について話を聞きたいのですが…」
と尋ねてみた。
すると、相談は予約制で、今日は満席のため難しいとのことだった。
「明日以降で予約をとるので、まず受付票に名前や相談内容を記入してください」
と言われた。
受付票に名前と必要事項を記入して提出した。
 
数分後、名前を呼ばれて再度受付に行くと、
「あなたの電話番号は、〇〇〇ですか?」
と聞かれた。
私は、
(え? さっき提出した受付票には電話番号は書いていないはずなのに、なぜ知っているのだろう?)
と一瞬戸惑った。
「なぜ私の電話番号を知っているのですか?」
と尋ねると、
「以前、留学フェアにお越しになった時のデータが残っていたので…」
と言われた。
 
すっかり忘れていた。
私はその6年前に種を蒔いていたのだ。
 
2ヵ所目の配属先のとき、電車で「留学フェア」の広告を見つけた。
語学留学には、学生の頃から憧れていた。英語が話せるようになりたい、異文化を体験してみたい、と漠然と思っていた。しかし、大学生時代、サークル活動やアルバイトをしていたりして、時間が取れず実現できなかった。
 
「留学フェア」の広告には、「短期語学留学」の文字があった。
社会人でも、1週間程度の連休を利用して、短期留学ができるのだろうか、と留学フェアに行ってみた。
その留学フェアに来ていた留学紹介団体や語学学校では、短期語学留学には最短で2週間必要だった。残念ながら、社会人で仕事をしながら短期留学というのは現実的に難しい、とそのときは諦めた。
 
ただし、今回は違う。
仕事を辞め、休養期間として2週間以上の自由な時間がある。
後日、相談予約をした日に、再度留学センターを訪れた。
 
相談員の方に、短期語学留学で、英語が学べて、休日には観光もできるプランやコースを尋ねた。
すると、30歳以上のクラスがある語学学校があるとのことだった。
しかも、カナダで、休日にナイアガラの滝に観光に行けるコースがあった。
 
まさに、今の私が求めていたものだった。
ナイアガラの滝を見る、というのも夢の1つだった。
6年前に蒔いた留学への種が、必要な環境、条件がそろった今この瞬間に、芽を出したのだ。
 
その後、このコースに申し込み、無事に憧れの短期語学留学を実現できた。
 
私の人生の中で、大輪の花が咲いた。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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