プロ論~日本語教師編
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三浦 千尋(ライティング・ゼミ4月コース)
日本語教師、という職業をご存じだろうか。
日本語教師とは、外国人に日本語を教える職業である。日本には、200万人以上の外国人が滞在していて、その内訳は、日本にルーツを持つ日系人、留学生、労働者、日本人を配偶者に持つ人、など多岐に渡る。これらの外国人は、日本人並みに上手に日本語を操る人がいる一方で、知っている日本語は「こんにちは」と「ありがとう」だけという人もいる。そんな外国人たちに、日本語を教えるのが日本語教師である。日本語学校、専門学校や大学、企業、そして自治体など、さまざまな場所で、さまざまな理由と目的で日本語が必要な外国人に、日本語教師は日本語を教えている。
さて、そんな日本語教師だが、実は深刻な人材不足である。いや、正確にいえば「優秀な」人材不足。日本語教師の中には、実に困ったちゃんが多いのだ。
まず「イベント楽しみ型」タイプ。海外経験があったり、外国語を少しかじったりして、外国人に興味がある人に多い。このタイプは、外国人と話すことに喜びを見出し、自分自身が楽しんでしまう。自分が行ったことがある国の出身者に思い出を語ったり、自分が勉強中の言語を話す人を捕まえて自分の先生にしてしまったりなど、どちらが何を学びに来ているのかがわからない状態になる。日本語教師にとって、海外経験や語学力は、あくまでスパイスだ。適材適所で使うから、相手との距離が縮まったり、相手のモチベーションが上がったりする。雑談くらいと思うかもしれないが、できる日本語教師は雑談中でも間違いをさりげなく修正したりして、学習者と話すときにはいつでも気を抜かない。のほほんと会話を楽しんだりしないのだ。
次に、年配の方に多い「自称外国通」タイプ。日本語教師は、日々、異文化に触れる仕事である。広い土地があるからという理由で小学校の校庭で勝手にネギを植えて育てたり、面接の時間に遅れそうだからと会社のフェンスを乗り越えて侵入したりと、びっくりするエピソードは山ほどある。そのたびに思うのが、日本の常識は世界の常識ではないということ。彼らには彼らの習慣や文化があり、それに基づいて行動している。それが時に日本社会と合わずにトラブルを起こしてしまうが、決して悪気があるわけではない。しかし、「あの国の人は〇〇だからねえ」としたり顔で語り、「まだまだ遅れているなあ」などと言ってしまうのが、このタイプである。文化間にあるのは「違い」だけで、優劣はない。日本語教師がすべきことは文化の評価ではなく、失敗してしまったときに謝る言葉と、なぜそうしたかを説明できる日本語能力を身につけさせることである。
そして、「偽マザーテレサ」タイプ。日本に滞在する留学生の国籍トップスリーは、中国、ベトナム、ネパールだ。中には、母国の親の仕送りで悠々自適の生活を送っている者もいるが、大多数の留学生はアルバイトをして自分で学費を稼ぎながら、学校に通っている。時給がいいからと深夜の居酒屋で働き、眠い目をこすって授業に参加している姿はまさに「苦学生」で、がんばっているなあと心から思う。しかし、このタイプは「思う」だけに留まらず、行動に出てしまう。雨の日に自家用車で送迎をしてあげたり、食べ物に困るだろうからと自宅に招いて食事会をしたり。さらには、お金を貸してしまい、それが発端でトラブルになることもある。ニュースなどで仲介業者に高額な手数料を支払い、借金を背負って苦しむ外国人がしばしば取り上げられている。国にも帰れず、狭く汚いアパートで暮らしている様子は確かに胸が痛むが、「日本で稼げる」という言葉を信じ、お金を支払い、来日を決意したのは、他でもないその人自身なのだ。その大前提を忘れ、相手をひたすらかわいそうな外国人だと思って間違ったサポートをしてしまうこのタイプは、相手を下に見ているということに気が付いていない。教師と生徒は、あくまで日本語を教える側と習う側という関係で、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
こうして見ると、困ったちゃんに共通するのは、プロ意識が欠けているということだ。本来の職務を忘れ、教師と生徒の役割を逆転させてしまったり、感情に流されたりしてしまっている。これは、日本語教師を目指す人の、その動機の多くが「外国人との交流」というところに起因しているからではないかと思う。それを裏付けるかのように、日本語教師養成講座のうたい文句も「グローバル」や「異文化交流」という文字が躍り、「日本語」はひっそりと添えられているだけだ。これでは優秀な日本語教師はなかなか生まれない。
新型コロナウィルスの影響で外国人が激減し、多くの日本語学校が倒産し、日本語教師も職を失った。しかし、アフターコロナに入り、来日する外国人は増え、日本語教師の需要も回復し始めている。人材不足にあえぐ日本と稼ぎたい外国人にとって必要なのは、交流を楽しむ日本語教師ではなく、日本語を教えることを使命とする、プロの日本語教師である。
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