調剤薬局のこと、薬剤師のこと、知っていますか?
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記事:あんこ(ライティング・ゼミ2月コース)
体調が悪い時、病院で受診した後、もらった処方箋を持って病院の前や家の近くの調剤薬局に行って薬をもらうことが多いと思います。薬局で待たされている間、薬局事務や薬剤師は何をしているのか、ご存じですか? 今回は、薬局の裏側についてお伝えしたいと思います。
私は、薬剤師として調剤薬局で働いています。薬学部を卒業後、薬剤師の国家試験に合格し、数年病院薬剤師として勤務した後は、長い間調剤薬局の薬剤師として働いてきました。調剤薬局は、患者さんにとって比較的身近な存在だと思うのですが、その業務のほとんどが患者さんの目に触れないことが多く、業務内容をあまり知られていないと感じることが多いです。「薬剤師は、錠剤の数を数えて患者に渡すだけでしょ?」と面と向かってはっきりと言われたこともあります。「そんなことないのに……」と悔しい思いをすることも、いままで何度もありました。
薬局では、患者さんから処方箋をお預かりすると、まず薬局事務が保険番号や氏名、生年月日や処方の内容などの処方箋の記載内容をパソコンに入力します。
皆さんは病院を受診する時、保険証を見せると思います。なぜなら、保険証に記載されている保険番号を使うことにより、通常、患者さんには医療費の1~3割(年齢や収入による)の負担をしてもらい、残りの7~9割は社会保険や国民健康保険に医療費を請求しているからです。そのため、医療費の計算を正しくするために保険番号等の必要事項を専用のソフトが入ったPCに入力して計算をします。しかし、薬局で保険証の提示をお願いすると、「病院で見せたのに」「個人情報だから出したくない」と渋る方も多いです。確かに処方箋に記載はありますが、病院と薬局はあくまで別の組織。保険証の変更などがないかを薬局でも確認したいため、提示をお願いしているのです。
次に、調剤です。
錠剤なら錠数を数えます。高齢者の方は薬の量が多いことが多く、飲み間違いを防ぐために1回分の薬をパックすることがあります。これを「一包化」と呼んでいます。1包化するために手間がかかるので、通常よりもお渡しに時間がかかります。
散剤(粉薬)や水剤(シロップなど)であれば、必要なg数やml数を量り、指示によっては混合します。ここではただ混ぜるだけではなく、一緒に混ぜて良いのかもチェックします。物によっては、混ぜると沈殿物ができたり、薬の成分が悪くなったりするからです。また、粉薬は、成分の薬の量が少なすぎるため、飲みやすくするために乳糖などが加えられて量を増やしているのですが、薬によって濃度が違うので、適切な量で処方されているのか? 調剤されているか? をチェックすることが必要となります。(例えば、カルボシステインドライシロップ50%という薬があります。これはカルボシステインドライシロップ1gの中に、カルボシステインの成分が500mg入っています。通常大人量は、カルボシステインの成分量として250~500mg/回なので、カルボシステインドライシロップ50%の量は1回に0.5~1gとなります)また、粉薬の場合には、量った粉薬を分包機で分包するため、時間がかかります。
最後に最終監査です。
PCの入力が正しいか? 薬は正しい数量で揃えられているか? の他、処方箋の内容がきちんと正しいのかを最終的にチェックします。
最近、処方箋と一緒に「お薬手帳」を持っているかを聞かれると思うのですが、それは監査の時に他の病院から薬が出ていないか? 重複していないか? などをチェックするためです。
また、新患だとアンケートを書かされると思うのですが、それを元に、アレルギーや副作用歴がないか? それらに該当する薬は出ていないか? 等もチェックします。再来の場合も、過去のデータと合わせて、これらをチェックします。
処方内容に間違いがないかも最終チェックします。これは、医師のヒューマンエラーによる処方間違いを防ぐための2重チェックの意味もあります。最近、病院やクリニックではPCによる入力をする際に、薬品名を3文字入力することが多いのですが、薬の名前が似ていることもしばしばあり、それが医療過誤に繋がることもあります。例えば、「ノルバスク」と「ノルバデックス」。3文字入力では同じ「ノルバ」となります。この薬、薬効が「ノルバスク」は血圧の薬、「ノルバデックス」は乳がんの薬となります。20年近くこの仕事をしていて、実際に1度この間違いを見つけたことがあります。循環器内科から乳がんの薬が出ていたり、男性に乳がんの薬が出ていたりした場合には疑問に思い、問い合わせをします。手持ちがなくなって、イレギュラーで循環器内科から乳がんの薬をもらうケースもありますし、ごくたまに男性でも乳がんになることがあるので、必ずしも間違いとは言えない場合もあるからです。
間違いを見つけたり、処方内容等を確認したりしたい時には、病院やクリニックに電話やFAX(今時! と驚かれると思いますが、文章で記録を残すということで、医療現場ではまだ普通に使われています)をします。先生が診察中で折り返しになることも多く、患者さんにお話しすると「急いでいるので、そのまま出してください」と言われることも多いです。「君は先生の処方にケチをつけるのか?」と怒鳴られたこともあります。しかし、間違いを確認して渡すというのは私達薬剤師の仕事でもあるので、ご理解いただきたいと常々思っています。
最後に投薬。服薬指導です。
「今日はどうされました?」と聞かれると思います。大体の方は「病院でも話しましたけど…」と怪訝な顔をするのですが、これにも意味があります。処方箋には病名がありません。そのため、薬剤師は処方を見て、何の病気かを推測します。例えば、抗生剤と解熱鎮痛剤が処方されていたとします。その場合、歯科であれば抜歯や歯茎の痛み、皮膚科であれば切開しての排膿、耳鼻科なら中耳炎などの耳の痛みなどと、薬剤師は推測するのです。その推測を元に患者さんの症状を聴き、その処方が適切かどうかを判断するのです。先ほどの「ノルバスク」と「ノルバデックス」の例なども、「血圧が高くて」という患者さんに乳がんの薬である「ノルバデックス」が出ていたら、問い合わせをしなくてはいけないとわかります。
このように、薬剤師はただ薬の数を数えているわけではありません。しかし、この一連の流れは、外から見ているだけではなかなか伝わりません。
数年前、「アンサングシンデレラ」という漫画原作の病院薬剤師のドラマが放映され、話題となりました。病院薬剤師と調剤薬局薬剤師の違いはありましたし、現役薬剤師としてドラマへツッコミを入れたい部分もなかったわけではありませんが、大まかな薬剤師の仕事を知ってもらう良い機会になったのではないかと、個人的には思っています。
今度調剤薬局に行く機会があったら、調剤室の中が行われているのか、観察してみるのも面白いかもしれません。
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