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人生は「選択」がいっぱいだった


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記事:佐藤京子(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
1999年6月6日。私が31の歳に3320gの女の子を出産した。
1ヶ月後の検診で、先生に言われたのは「娘さんは、心臓に異常がみられます。心雑音があります。「AかB。どちらの病院を紹介しますか?」だった。
我が家に与えられた試練。ここから、娘の「選択の旅」が始まった。
 
Aは、自宅から車で30分の距離にある総合病院。
Bは、高速道路を利用し、車で1時間かかる小児科専門の病院。
 
その場で回答を求められ、夫に相談もできない。
この選択で、私は自分の直観を信じ、Bを選んだ。
娘の運命が、Bコースに託された。
 
このBコースは、進んだ先に、さらに「大きな選択」が2つ待っていた。
 
Bコースでは、S先生との出会いが待っていた。
いくつかの検査の結果「動脈管開存症」であろうとの診断。
娘の心臓には動脈管が1本多く存在しており、心臓から肺にかけての血流が増えることで、心不全や感染症を起こす可能性が高く、治療が必須とのこと。
 
1つ目の「大きな選択」は、治療方法であった。
A 開胸手術
B 最新医療による治療(カテーテル治療)
Aは、比較的、簡単な手術であるとのことだったが、娘の身体にメスを入れることで、傷が残ってしまう。S先生の提案もあり、その当時(24年前)、最新医療とされていたBを選ぶこととした。
 
これは、足の付け根の動脈からカテーテル(細い管)を心臓まで挿入し、1本多い血管をコイルで塞ぐという治療法。
新素材(コイルの素材)の許可が下りるのと、成長を待ってからの治療を勧められ、1歳の誕生日に行うこととなった。
 
しかし、Bのカテーテル治療は、半分成功、半分失敗という中途半端な結果に終わった。
コイルで塞ぐ行為はできたものの、動脈は完全に塞がらず、コイルの隙間から血液が漏れてる状態。
血小板がコイルに付着することで、隙間が埋まり、壁となって動脈を塞いでくれる可能性を信じ、ただ待つしかなかった。
 
娘が5歳になった頃、S先生からの提案があった。
「これ以上、自分にはコイルを追加するカテーテル治療を行うことはできない。今後の治療方法は、開胸手術となる。一方、2回目のカテーテル治療を引き受けてくれる先生もいる。その先生にお願いもできる」
 
2つ目の「大きな選択」だった。
A S先生執刀による、開胸手術をお願いする
B 引き受けてくれる先生にお願いする
Aを選ぶことは、これまでの月日が無駄になってしまうし、他の病院の先生を紹介してくれるS先生への恩もある。
願いを込めてBを選んだ。
 
娘が6歳の時、新宿にある東京女子医科大学病院で、第2回目のカテーテル治療を受けた。
結果は、大成功だった!
娘の動脈は、先生が追加で挿入したコイルで、完全に塞がれた。
 
その後、年に一度、定期検査で東京の病院を訪れ、娘が16歳の時、「完治としましょう」とのお言葉をいただけた。
私の決断でスタートした、娘のBコースが、16年の歳月を経て、やっとゴールした瞬間だった。
 
現在、娘の心臓には、Ⅹ線(レントゲン)検査で写る、2つのリング(コイル)が存在している。このリングは二人の先生が与えてくれた唯一無二のリングで、娘の勲章。
 
これまで、3つの「大きな選択」に迫られ、決断しなければならない場面では、選んだ後に「これでよかったのだろうか。もしかしたら……」と、最悪の結果を想像してしまい、悩み、迷いながら進んできた。
判断を間違えることが、娘の「死」へとつながる。それが怖かった。
だから、決断が最悪の結果とならぬよう、神様にお願いをしながら進んできた。
 
自分の人生であれば、決断した結果に納得せざるおえないが、娘の人生を左右する選択を間違えるわけにはいかなかった。
 
16年という長い年月はかかってしまったが、娘の身体に傷を残すことにはなく、心臓は完治した。
あの日、Bコースを選び、信頼できるS先生に出会えたことが、この結果に繋がったと思うと、あの日のあの選択での決断は、間違いではなかったのだと思える。
 
今は、親としての役割一つに、終止符をうつことができたことに安堵している。
 
「人生は選択の連続である」
これは、劇作家ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」の中に出てくる名言と言われている(注:諸説あり)
 
選択も、人生を左右するような大きな選択もあれば、中くらいの選択、小さい選択もある。
 
ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授の研究によると、驚くことに、人は1日に最大35,000回もの選択をしているらしい。
これは、約2秒に1回、何かしらの決断をしていることになる。
 
選択は、朝、目が覚め「起きる」「起きない」から始まり、決断した2秒後には、また選択が待っていている。
スマホを見る・見ない、水を飲む・飲まない、スリッパを履く・履かない、などなど改めて自分の行動を思い出してみると、選択が連続していることに気付かされた。
 
大きい選択は、家族や友人や経験者に相談し、慎重に決断するが、小さな選択は自分に甘く、楽な方を選びがちになるとのこと。
 
決断の結果次第で、その後の人生が変わるとすれば、小さな選択のシーンでも、意識して決断してみてはいかがだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2023-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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