黒色の洋服がマストと言われるプロカメラマンの現場で、常識を覆された理由
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:水嶋 仁彦(ライティング・ゼミ10月コース)
まず「カメラマン」と言って、どんな姿を想像するか?
きっと一眼レフカメラを構え、写真を撮る人を想像するだろう。しかしカメラマンとは、静止画を撮るスチールカメラマンや動画を撮るビデオグラファーなどプロ・アマ問わず撮影を行う人物のことを指している。ちなみに私は、動画を撮影するカメラマンだ。
次に「動画を撮影するカメラマン」と言って、どんな姿を想像するか?
大きなカメラを担ぎ、全身黒色の洋服を身にまとった姿を想像した人も多いはずだ。
このイメージは概ね間違っていない。撮影に使用するカメラは撮影現場によって異なるが、プロの現場においてカメラマンが黒色の洋服を着ることはマストとされている。
黒色の洋服を着ることは「汚れても良いように」「洋服に興味がないだけ」と思われるかもしれないが、実は、しっかりとした意味がある。
外撮影のロケ現場では、クリアの自動扉や水面、ガラスや車など、様々なものに反射して自分が映り込んでしまうことが多々ある。
画面上にカメラマンの姿が映り込むと、見栄えが悪くなってしまい、視聴者が本当に見たいものから視線を外しかねない。
もちろんカメラマンは、撮影中に自分の姿が映らないように気をつけてはいるが、どうしても避けられない場面もある。
そんなとき、カメラマンの洋服が白や蛍光色の派手な服だと視聴者はどう感じるだろうか。
正直何も感じないかもしれないが、カメラマンの派手な服が映り込んだその一瞬、視線は主役ではなくカメラマンになるだろう。これは制作側の人間として有るまじき行為。
もちろん、黒い服を着ていれば映り込んでも安心という訳ではないが、目立ちが少ないので私たちは黒い服を着ていることが多い。
しかし、とある撮影現場で全身黒い服を着用し、指摘を受けたことがあった。
アパレルのメイキング動画撮影だ。主となる撮影は、翌年の春夏シーズンの洋服を着用したモデルのスチール撮影。店頭の広告やウェブ上の着用イメージとなる静止画の撮影だ。
そこで私が任されていたのは、現場のメイキングムービーの撮影。モデルのオフショットや、撮影時のスタッフの裏側などに密着する内容だ。
撮影スタジオも初めて行くハウス型のスタジオなので、映り込みがどのくらいあるかわからない。撮影当日は10月の雨の日。いつも通り、黒色のトレーナーにカーゴパンツ、防水の黒のスニーカーという動きやすくラフな黒子スタイルで現場入りした。
しかし、スタジオの扉を開けた瞬間にミスったと感じた。
撮影スタジオは白ホリと呼ばれる真っ白な部屋なのだが、そこでセッティングしているスタッフたちは、色鮮やかな衣装を身にまとい、各々、撮影準備を進めていた。
カメラのセッティングをしているスチールカメラマンはスカイブルーのシャツを着ており、スケジュールの確認をしているディレクターはボリュームのあるピンクのスカートを履いている。
おそらくアシスタントと思われるスタッフも、明るい衣装を着ており、一見、誰が演者で、誰がスタッフなのか見分けがつかない程、明るい現場だった。
そしてもう一つ気付いた事がある。スタッフのほとんどが薄着なのだ。
半袖のシャツや薄手の衣類を身に付けている。
しばらくスタジオ内を見渡していると、華やかなスタジオに、黒子の私がいることにクライアントが気付いたようで、「控室はアチラです」と場所を教えてくれた。その声色から少しピリついた空気を感じた私は、他のスタッフの視線を避けるように控室へ向かった。
控室に入った後も、しばらくは現場の華やかさに圧倒されていたが、気持ちを撮影モードに切り替え準備を始めることにした。
撮影現場には、モデルが着用する春夏シーズンのウェアがディスプレイされている。
ブランドイメージに合わせた明るい発色のシャツやパンツが並び、飾られているその一角は10月だというのに、もはや初夏を感じる程だ。
改めて、自分の服装が場違いだと焦り始めたが、撮影中は、カメラマンとして撮ることに集中していたので何も気にならなくなっていた。
幸い、撮影自体は順調に進み、ほぼオンタイムで撮影を終了する事ができた。
撮影終了後、スタッフ全員で集合写真を撮影することになり、私も端っこで参加させてもらった。
その時、画角を確認するスチールカメラマンにこう言われた。
「黒い服の子もっと内側に入って」
周りの視線が私に集まった。そうだ、現場で真っ黒でラフな格好をしているのは自分だけだったと思い出した。少し気まずさを感じながら、笑顔をつくり、記念撮影を終えた。
帰宅準備をしている最中、クライアントが声をかけてきた。
「今日はありがとうございました。次回は4月頃に秋冬の撮影を予定してますので、またご相談させてください」
お礼を言われ、ほっとしたのも束の間、軽くご指摘も受けた。
「アパレル商品は、真逆の季節でリリース準備をしています。
モデルも寒い中、肌を出し撮影することになるので、少しでも現場の雰囲気を良くするために、スタッフも薄着で明るめの服装を選ぶようにしています。
メイキングとして参加するムービーのカメラマンも、モデルの明るい表情を引き出すために出来れば意識してもらえれば、さらに良いものが作れると思います」
これは盲点だった。
黒子で地味にしていることが、正解と感じていたが、良い現場環境を作り上げるという意味で選ぶ服装が変わることもあったのだ。
郷に入れば郷に従え。自分たちの常識も、他の業界からすれば非常識になり得ることを学び、同時に、現場作りに妥協を許さないプロ根性を改めて感じられた撮影現場となった。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325