私の耳。聞こえない難聴だけが困っている症状だと思わないでほしい。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:六車優那(ライディング・ゼミ10月コース)
私は難聴ではありません。
10年ほど前に、メニエール病になったことで、一時的な難聴を4、5回繰り返した経験はあります。そのため、調子が悪いと聞こえない音域があるかもしれません。でも、お陰さまで聴力は正常範囲まで快復しました。
聴力は正常で、難聴もない私ですが、聴覚で困っている症状を2つ持っています。
1つは、「聴覚過敏」。
もう1つは、「聴覚情報処理障害」。
聞いたことあるでしょうか?
もしかしたら、「聴覚過敏」は聞いたことのある人もいらっしゃるかもしれません。
発達障害のある人にも多くみられると言われている感覚過敏の1つです。
「聴覚情報処理障害」は、あまり聞いたことのない人のほうが多いのではないでしょうか?
私自身、自分がそうであると診断を受けるまで知りませんでした。
それぞれどんな症状で、どんなことで困っているかお話ししたいなと思います。
まずは「聴覚過敏」について。
漢字からも想像できるかもしれませんが、ひと言で言ってしまえば、音に対して過敏であること。ただ、ここで間違ったイメージを持ってもらいたくないのですが、大きな音に対してだけ過敏になってしまうのではありません。他の人にとっては、なんてことない、それこそ意識もしないような音が不快に感じ、それこそ生活が難しい方もいらっしゃいます。
私を例であげると……
・テレビの音
・人の大きな声
・バスや電車の案内放送や降車ボタンの音
・車の音
・飛行機の音
・掃除機の音
・食器の音
・救急車の音
・冷蔵庫の音
・洗濯機の音
・電話のコール音
・空気清浄機の音
・エアコンの音
・トイレの自動洗浄の音
などなど
日々の生活で困っている音をあげてみたのですが、いかがでしょう?
私はドラマが大好きだったのですが、今ではテレビの音が不快すぎて、テレビそのものを見なくなりました。家族とテレビの音量でよく揉めたことも見なくなった理由の1つではあります。
また、外出するときは、ノイズキャンセリングのイヤホンかヘッドホンをします。家の中でも不快な音があるのに、外に出ればいろんな音が溢れていて、塞がずにはいられません。もちろん音楽を聞くこともありますが、だいたい無音です。ただ、周りにある音を静かにしたくて、自分を守るようなつもりでつけています。
書き並べた音だけ見ると、「そりゃ、うるさいよ」と思う音もあるかもしれません。例えば、掃除機。私の部屋は戸建ての2階にあるのですが、1階や階段下で掃除機をかけている音が我慢できないことがあります。そんなときは我慢せず、イヤホンやヘッドホンで塞いで、好きな音楽を流して気をそらします。なので、自分の部屋を掃除するのもちょっとひと苦労です。
聴覚過敏を数値化すると、不快閾値というみたいなのですが……。
通常の人の不快閾値 80db
普通の会話の声 60db
私の不快閾値 40〜50db
そう。私は会話の声すらも、不快と感じることがあるのです。ただ家族や友人と食卓を囲むこと、ただ職場のデスクに座って過ごすこと、それすらも正直疲れます。体力的にも精神的にも余裕を持っていないと、人と過ごすことが苦痛に感じることすらあります。でも、私は人と過ごすことが嫌いなわけではないので、音を遠ざけようとして孤独を感じ、寂しくなることもあります。
ほんの少しでも、何となくでも想像していただけたでしょうか?
そして、「聴覚情報処理障害」について。
「聴覚過敏」とは違って、「聴覚情報処理障害」と聞いても……
「何それ?」って感じだと思います。聴覚情報処理障害は、聴力に問題はないのにもかかわらず、雑音の多い場所になると聴きとれない症状のこと。
「聞こえているのに、聞きとれないの?」と思われるかもしれませんが、「聴きとれない」のです。音としての認識はあるのですが、雑音に邪魔されてしまって、言葉として頭に入ってきません。
例えば、よくありそうなシチュエーションで、友達と居酒屋さんへ飲みに来たとします。
私がまず気になるのは……
・BGMの音
・両隣の会話の声
・店員さんの挨拶の声やオーダーの声
この3つは自然と気にしてしまいます。
これだけでも、私は友達との会話を聴きとりづらくなり、きっと聞き返しが増えてしまうからです。
まず、BGMが邪魔してきます。なので、意識的に目の前の友達との会話に集中しようとするのですが、両隣の会話の声が耳につきます。すると、意識がそちらに引っ張られ、目の前の友達との会話ではなく、必要のない隣の会話が耳に入ってきてしまいます。それでもなんとか友達との会話に……と思っているところに店員さんの元気な声が……。
もう、とんでもなく疲れます。楽しいはずの居酒屋さんも疲れるところでしかなくなります。だから、私がお店を決められるときには、基本的に個室や静かなお店を選びます。それが難しいときは、聞き返したり、大きな声で話してもらったりしますが、それでも聴きとれなかったときは、きっと笑顔で曖昧な相槌をしています。私が、よくわからない返答をしたり、相槌だけで会話を終わらせたときは、きっと聴きとれなかったときです。
居酒屋さん以外でも、人混みの中や電車、カラオケ、他の誰かが会話しているところでの会話などは避けたいですね。こういう状況での会話は、全神経を耳に持っていって集中しないと聴きとれません。
それでも私は、意識的に集中することで何とか会話ができているほうです、きっと。おそらく症状の強い方はもっと聴きとれないのではないかと思います。
ここでお気づきの方はいらっしゃるでしょうか?
私の「聴覚過敏」と「聴覚情報処理障害」は矛盾していることに。
大きな声が苦手なのに、雑音の多いところでは、普通に話しても聞き取れない。音に過敏で、我慢して音の中にいるのに聞きとれないもどかしさ。
だけど、私が伝えたいのは「こんな症状があるから困っています!」「助けてください!」「静かにしてほしいです!」ではありません。
静かな空間にいたいときと、大きな声で話してほしいときと、時と場合によってお願いすることが違うことを理解してもらいたいです。
『配慮していただけたら有難いです』という言葉が伝わったら、嬉しいなと思っています。
みんな外見が違うように、目に見えないだけで、人によって症状も様々です。私が困っている症状も、性格や個性で悩んでいる人と同じようなものかもしれません。
かく言う私にだって、知らない病気や症状も絶対にある。
私たちに必要なのは、『知っている世界だけで生きないこと』のような気がします。
私がうるさいと感じる、バスや電車のアナウンスの音だって、もしかしたら、おじいちゃんおばあちゃん、難聴者の方には聞き取りやすい音にしてあるかもしれません。
持ちつ持たれつ。想いやりを持つこと。
知らなくても、想いやりを持っていれば、配慮できる心があれば、きっと何とでもなると想います。障害があってもなくても、『お互いさま』の気持ちを持つことができれば、今よりもっと優しい世界になるような気がします。
***
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