初めてのボーリングで、ポケモンゲットだぜ!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:うえやん(ライティング・ゼミ2月コース)
初めての運動会。園児たちはきっと緊張するのだろう。息子が通う幼稚園でのこと。
まだ3歳だった息子は、段ボールで作った電車に入ってコースを一周し、リレー形式で次のお友達にダンボール電車をつないでいく、という競技に出た。
どうしていいのかわからない上に、取り囲む大人たちの視線に緊張して泣き出す幼児が多い中、息子は平然と走り出していた。
お、やるね。心臓強いかも。と喜んでいたのを思い出す。
いつの頃からだろう、何でも物怖じせずにやっていた息子が、クネクネし始めた。とにかく、嫌がる。人が見ているのも気に入らない。2歳から始めて、コーチから「センスありますよ」と言われた体操教室でも、多くのギャラリーの目を気にして「やめたい」と言い始めた。
ギャラリーと言っても、同じ体操教室に通う子どもたちの親御さんで、「自分の子どもしか見てないよ」と説得するも、結局やめてしまった。
5歳になり、妻がサッカーをやらせると言い出し、近くのサッカー教室に連れて行くが、最初のかけっこ(ダッシュ)でギャン泣き。
帰ってきた息子は「もう二度と行かない」の一点張り。あまり強引に連れて行き、本当にサッカーが嫌いになったらいけないということで、妻と相談し、少し様子を見ることに。
息子とは正反対で、小学2年生の娘はとにかく何でもやりたがる。そろばん、習字、スイミング、お絵かき教室……。1週間のスケジュールが大人並みに忙しそうだ。最近、新たに卓球も始めた。「楽しい」「早く行きたい」いつもルンルンだ。同じ親、同じ環境で育っているのに、何が違うのだろう? 子育ては難しい。
その娘が、地域の子ども会でボーリングに行くことになった。まだボーリングをしたことがない娘は、「本番の前に家族でボーリングに行きたい」と言い出した。もう十数年、ボーリングをしていない私は不安を覚えたが、愛する娘のお願いは断れない。週末、妻と息子も一緒に近くのボーリング場に出かけることになった。
向かう途中から、息子の言葉数が少ない。昨日までは、娘と一緒に「ボーリング、ボーリング」と騒いでいたのに。そして、案の定、息子は「やらない」と言い出した。場の雰囲気が悪くなるといけないので、妻も私もすんなりと受け入れ、3人でやることに。
十数年ぶりにやるボーリング。やってしまった……。
第1投、助走をつけすぎてレーンの中に入ってしまい、すってんころりん。派手にこけてしまったのだ。後ろで妻と子どもたち、それだけじゃなく、隣のレーンでやっている、見ず知らずの人たちからも笑いが漏れる。帰りたい。息子以上に私は「もう、やりたくない」と顔を真っ赤にした。
娘と妻の手前、簡単に途中で放り出すわけにもいかず、何とか気を取り直し、2ゲームやって帰宅。半ばから要領を思い出し、ストライクも何度か出て、それなりに楽しめた。何より娘が「また、したい」と楽しそうだったことが収穫だ。息子はというと、1人だけ参加していなかったこともあり、ちょっと居場所がなさそうな感じで寂しそうだ。
その日、息子とお風呂に入った。湯船で私の膝に乗っかった息子が「父ちゃん、転んでた」ボソリと呟く。
「父ちゃん、転んじゃったね。でも、みんなでボーリングできて楽しかったよ。転んだのは恥ずかしかったけど、ボーリングやれてよかった」
ちょっと真面目に、息子に答える。
娘のボーリング熱がすごい。子ども会のボーリング大会後も、しつこくボーリングに行こうと言う。何にでも興味を持つことはいいことだということで、家族で二度目のボーリングに行くことになった。
移動中の車の中で、
「僕も、やる」
恥ずかしそうに息子が言った。
一瞬、車の中が静まった気がしたが、みんなの気持ちはひとつだ。一気に車中は盛り上がった。
私、娘、息子、妻の順番で投げる。息子の順番のときは、家族が一致協力して見守る。
1本でもピンが倒れたら、ストライクのような騒ぎが起こる。なかなかピンが倒れないことにイラついていた息子も、みんなの騒ぎっぷりに自然と笑顔になっていた。
2ゲームを終え、ボーリング場を後にするときには、世界を救ったヒーローのように歩いている息子がいた。それはまるで、「アルマゲドン」を観た後、映画館から出てくる私のようだった。
帰りに寄った本屋さんで、偉業を成し遂げた息子は、それが当然のように大好きなポケモンの図鑑をおねだりする。
息子が自分の殻を破り、初めてのボーリングに挑戦した日を最高の思い出にしてあげたい。甘いのかもしれないが、今日は言うことを聞いてあげよう。
「また、ボーリングする?」
「うん、してもいいよ」
ポケモンの図鑑を見ながら、ちょっとはにかんで、息子が答える。
その姿を見ながら飲むビールは、格別だった。すってんころりんも無駄じゃなかった。
***
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