居酒屋ムーンショット
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記事:オカタツ(ライティング・ゼミ2月コース)
空から雪が舞い落ちる2月某日。僕は大阪、京橋のとある居酒屋にいた。袖振り合うも多生の縁、とはよく言うけれど、お隣の席の見知らぬ方々と袖どころか肩も膝も触れ合うほど近い、そんな席に僕たちは座っていた。ちなみに、その日、胸ドキの出会いがあった訳ではない。 久しぶりに会った僕ら男2人は大学時代の話、ガールフレンドの話、そして仕事の話、つまり、他愛もない話を延々と繰り返していた。両隣と席が近い代わりにと言ってはなんだが、この店はとにかく飲み物、食べ物が安い。ビールもとにかく安いので、この日は早くも3杯目に差し掛かっていた。右手に残り3分の1ほどになった少しぬるいビールを持った、そのときだった。
「なあ、ムーンショットって知ってるか?」と友人が尋ねてきた。
お、もう2軒目の話か。気が早いねえ。
「新しくできた店のことかな?」
「ちがうよ」
うーん。あ、新しい飲み方ね。
「ウイスキーの新しい割り方か?」
「ちがうよ」
ほな、なんやねん。あ、ゴルフの話ね。
「おニューのドライバー買ったんかいな」
「ちがうよ。内閣府が2050年までに実現することを目指している目標のことだよ」
「ほ、ほう。もうちょっと詳しく」
友人が続けて語る間に、3杯目のジョッキが空になった。
急に難しい話が飛び出してきた。サイバネティック・アバターがどうのこうの、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放されるうんぬん、といったSFチックな話だ。
どうやら友人の会社で話題の一つになったそうだ。こちとら昔からこの手の話が大好物だ。
検索してみると実際にその計画が書いてあった。この目標に向かって日本という国は進んでいるのだ。4杯目が届く頃、2030年の1人10体アバター生活について思いを馳せていた。身代わりロボットがたくさんいるような生活。考えただけで面白い。子どもの頃、夢中になって見ていたアニメに、ついに現実が追いついてくるのだ。いろんな妄想に2人で耽りながら、ふと思った。
今日も飲み過ぎ、食べ過ぎた。安いからと言って頼み過ぎた。小さなテーブルに乗り切らないほどの料理、大ジョッキになみなみと注がれた飲み物。
少し前からお腹周りが気になり始めていたので、一念発起し、仕事帰りにジムに行き始めた。ジムに行くと効果テキメン、なんてことはなく、お腹はぷにぷにのままだ。
なんとかお腹周りをシュッとさせたい。願いの叶った姿を想像するとワクワクする。ピタッとした服を着ても大丈夫。水着になった時にへこませなくていい。
だけど、キツい。仕事で疲れた体に鞭を打ち、上半身トレ、下半身トレ、腹筋、背筋。筋肉痛にもなる。朝食もちょっとだけ減らしている。昼前にはお腹が鳴っている毎日だ。
結構やっているはずなのに、なぜ引き締まっていかないんだろう。
あ、そうか。お菓子食べてるからか。よく飲みに行ってるからか。
でも、やめられないんだよな。
聞いただけでワクワクした内閣府の掲げるムーンショット目標。
思い描くとワクワクするシュッとしたお腹になる目標。
違いは?
互いにハードルが高くて、キツくて、ワクワクするってところはおんなじ。
そう、簡単なことだ。目標に期限を決めているか、いないかだ。
ムーンショット計画には2030年にはここまで、2050年にはここまで、という期限が設けられている。たった6年後に、こんなところまで僕たちを連れて行ってくれるのかと、ワクワクする。いつの日か、なんていう夢物語じゃない。
あと6年で、ここまでいくと決めているのだ。
一方、僕のお腹シュッと計画にはこれまで期限を決めていなかった。
こうなったらいいな、くらいの思いだったからお菓子や飲み会でついつい食べ過ぎ、飲み過ぎていたのだ。
これだ。世のお腹ぷにぷに男性の方々。
いつまでにどれくらいシュッとさせるのか期限を決めましょう。
割れたお腹に憧れるのをやめなくったっていい。いつまでに達成するのか決めないのをやめましょう。
昔憧れたSFアニメよろしく、自在に世界を巡ることのできる未来がきっと訪れる。
それと同じく、少し前に憧れた、シュッとしたお腹でビーチを駆ける未来が僕らにもきっと訪れる。
そう、期限さえ決めてそれに邁進すれば。
***
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