観光地では財布のひもを締められない
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:春澤 寛善(ライティング・ゼミ2月コース)
寒さが優しくなり、ようやく春らしく暖かい陽が当たるようになってきた。
風に吹かれても力まないこの季節は何度出会っても心地よいものである。
春には桜がピンクで艶やかな彩りを見せ、満開の時にはまるで異空間に包まれるような
感動は毎年味わっているのに新鮮だ。
綺麗な景色には心を躍らせる説得力がある。
私は春や桜に限らず、『綺麗な景色』に出会うことが人生の楽しみであり、
生きていく理由の一つでもある。
初めて見る場所、何度も行く場所、懐かしむ場所、
様々あるが、一歩ずつ歩きながら“未知の遭遇”を楽しめる初見の時が一際好きだ。
昔はそんなに関心高くなく、20代30代のころはまさしく「花より団子」
言い換えて「景色より酒」「文化より買物」という感覚で観光した時でも
無駄に時間を費やしていた。
感性とは何か、当時の自分に説教したいくらいだ。
40歳を過ぎた頃、無性に“時間”というものに敏感になり、
『一合一会』という言葉の重みを真剣に考えるようになった。
“遅い!”と一斉にツッコミされる声が聞こえそうだが、
仕事と遊びに翻弄されていたため、
本当にそんなタイミングでようやく気づいた。
その反動あってか、とある出張ついでに寄った『京都』に惚れ込んでしまった。
幼少期から京都を知らない訳でもなく、幾度も行く機会はあった。
だが、
歴史・文化・景色・食事など、
その魅力に目もくれず足早に名所から名所へ時計を見ながら移動していた。
限られた時間の中でいかに数多くのスポットに合理的に行けるか、
“せっかくここに来ているのだから”と、
思い出づくりとなるスポットへ行く“量”にこだわっていたように思う。
お土産は次から次にカバンや袋へ、袋のデザインを見て気持ちよくなるほどの衝動的な買物だった。
「今しかないし、これぐらいはいいでしょ」とカバンから幾度も財布が登場する。
もちろん、神社へ行けば“お守りとおみくじ”は「自分のため」と無条件購入である。
無駄遣いしてしまったという後悔はない。
でも、「遣いすぎたかな」となんとなく省みることはあった。
このような感覚は私だけだろうか?
普段の私は衝動的に買物することはまずない。
お出かけ先ではウィンドーショッピングを楽しみ、次第に買いたいリストが頭の中に整理される。
そして、最後に総仕上げのようにお会計をしていく。
当日のうちに終始することもあれば、後日に購入することもある。
そこに時間を費やすことには厭わず、
“後悔だけはしたくない”という一心である。
そんな自分が観光地に行くと、今でも変わらず決まっているかのように
景気よく消費する。衝動買いしてしまう。
省みても後悔はない。
現地ホテルに着いて荷物を置き、
外出する際に財布を持つと散財するかもと自制し、小銭入れだけを持ち歩く。
でも結局は「何かあるかといけない」と自分に問いかけ、紙幣を十二分に入れて出発する。
部屋に帰ると想像以上にお金を遣い、小銭入れの中もスッキリしているが、
翌日に備えてリアルチャージ。
そう、またもやお札を補充して安心しているのだ。
そんな観光を何度も繰り返している。
私は観光地に酔いしれて馬鹿になってるのか。
これは一体なんだろうか?
真剣に考えてみた。
衝動買いを肯定することは、やはりあり得ない。
文字通り、“衝動”であり、それは無駄遣いの部類になるのだから。
“考えるな、感じろ”と買物目的でぶらぶら歩いていた訳でも無い。
しかし、一体なんでだろうか?
そんな自分が知らない“自分”を初見する楽しさが沸いてきた。
そこで、また観光に行く機会にお金を使う意味を考えてみた。
魅惑の京都。
一番胸が躍る都、ステージに不足はない。
京都御所で御朱印を買う。
なんで?
こんなことを言うと怒られるかもしれないが、社寺でもないのに御朱印を買う?
カラーで見栄えがあるし、参拝ではないが近いものがある。
いいではないか。
平等院で御朱印に加えて、金の鳳凰バッジを悩みながらもゲット。
だからなんで?
冬のコートに付けたくなった。イメージはある。オシャレかも。
宇治での抹茶御膳。
何を食べてるのかって?
緑色のつゆそば。珍しい。どんな味か衝動的に食べたくなった。
観光客向けの価格であるのだと、自分自身に“冷静になれ”と言い聞かせても抑制はきかない。
他のメニューも見ていたが、店員に注文聞かれた時「えーと、抹茶」というワードが咄嗟に出ていた。
御膳のほとんどが緑一色で覆われていたが、想像以上に美味しかった。
何より見た目が楽しかった。
でも今思えば、
貴重な夕飯時には他にも厳選しても良かったし、
もしも東京で同じ看板を見かけたら食べていたのか……。それはないかもな。
きっと、これも衝動だったのだろう。
こんなことを重ねながら、その後も自分考察は続いた。
散財かもしれないが、やはり楽しいし、その時しかできない、得られないもの。
現地では“二度と来ることがないかも”という思いが勝っていた。
振り返っても肯定感しかない。
しかし、今回はいつもよりお金遣ったなぁ。
そんな思いにふける中で、
金の鳳凰バッジを見ながらある思いが蘇ってきた。
「これをいつか見たとき、今の“凜”としている気持ちを思い出して自分を引き締め直せるかも」
無駄遣いにならないよう葛藤していた記憶だった。
そうか、
寺院でもないのに御朱印も、
鳥の形した金のバッジも、
緑のそばも、
その他なにがしも……。
深層心理で何か思い浮かべているな。
京都御所では昭和天皇の即位の礼があり、その当時の裏方にいた料理人たちの壮絶な挑戦スピリッツを。
平等院では、不死鳥のような威風堂々を。
宇治では、“緑のつゆ”に、“今後は滅多に来れないであろう地“に強い記憶の中で結びつけておきたい。
それぞれに惹かれた理由と、今後も同じ気持ちを維持させたい、という明確な要素があったのだ。
買った物にはそれぞれ今も続いているストーリーがあり、
その感動を忘れないようモノに託していたのだ。
つまり、私にとって「衝動買い」とは「感動買い」であり、
その買ったモノが感動を呼び戻してくれていた。
こうした納得感が、散財後の肯定感を支えていたのだ。
お金は活かすよう遣われるべき。
それならば、これからもっと現地での購買理由を明確にしよう。
一合一会で与えられた情景、人への想い、自分への誓いを忘れないよう
強い記憶として“感動記録”を集めていこう。
今年も春がやって来る。
桜満開の京都に行きたいな。
***
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