人生に絶望することが、人生を好転させることもある
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:淋代朋美(ライティング・ゼミ2月コース)
きっと、私は、ここから先、ひとりで生きていくことになるのだろう。
市役所を後にし、駅へと向かう道のりで、私は、そう覚悟した。
離婚届の提出は、あまりにも淡々としたもので、余韻すらなかった。
心とは裏腹に、雲ひとつなく晴れた空が、やけに眩しい。31歳の夏だった。
度重なる浮気に、知らぬ間の借金、私が仕事中にも関わらず携帯に執拗にかけてくる電話……。モラハラという言葉で片付ければ、離婚理由は格好がつく。実際、私たちふたりを知る人からは「100%相手側が悪い」「慰謝料の請求もできたんじゃない?」なんて言われたこともあった。
でも、私はわかっていた。
自分にも責任があるということを。
浮気癖があること、わかりやすい嘘を平然とつくことは、結婚前からわかっていた。
借金があることまでは知らなかったが、浪費癖があることは、感じていた。
人当たりは良かったが、車のハンドルを握ると、人が変わったかのように煽り気味な運転をした。思えばそれが本性だった。
全部、なんとなく、ずっと前から、わかっていた。
気づかないふりをしたのは、私だった。
5年も付き合っていたから。
付き合い始めの頃から、相手のご両親には家族同然にかわいがってもらっていたから。
いくつもていの良い言い訳だけは、用意していた。
でも、私はわかっていた。
この結婚にすがったのだ。
「この人と一生一緒にいたい」と思ったんじゃない。「結婚」がしたかった。
結婚さえすれば幸せになれるという、幻想を抱いていた。
しかし、気づいてしまった。
私では、「結婚しても幸せになれない」ということに。
当時、私は、ファイナンシャルプランナーの仕事をしていた。
懇意にしてくださっていたお客様に「いやぁ、女ひとりで生きていくのは、やっぱり大変ですからね〜! マネープランニングのスキルがこんなところで自分に役立ちましたよ!」
なんて、笑いながら改姓後の名刺を差し出すのも、なかなかしんどかった。
ちょうどそのタイミングで、昇進の話があった。加えて、地方への転勤。過去の私を誰も知らない場所で、仕事に打ち込めるなんて、願ったり叶ったりだ!
「神様は見てくれている! 全て一からやり直そう!」と意気込み転居したのも束の間、仕事でも挫折して、半年後には実家に戻っていた。
恋愛や結婚もうまくいかない、仕事もうまくいかない、これからの人生にひとつも希望が見えなかった。どうやって生きていったらいいのか、わからなかった。
こんなはずじゃなかった。
大それた夢は持っていなかったけど、温かい家庭を築くことは当たり前のようにできると思っていた。
子供は2人か3人欲しい。子供部屋はあっても、毎日自然とリビングに全員集合していて、「部屋いらないじゃん!」なんて笑って文句言う、そんな家庭を想像していた。
ファイナンシャルプランナーは、誰かの人生を応援したい、そう思って始めた仕事だ。お金の不安がなくなれば、人は夢に挑戦しやすくなるから。夢に挑戦し、笑顔になる人を増やしたい、そんな志があった。しかし、笑顔になる人を増やすどころか、自分すら笑顔にすることができなくなっていた。
変わりたい……!
人は、変化を恐れる生き物だと、どこかで聞いたことがある。しかし、どん底にいると、変化を恐れる気持ちすらなくなるのだと知った。これ以上は悪くならないだろう、そんなヤケクソな気持ちがあるから、だろうか。
心理学を学び、自分を変えられることは、何でも実践しようと決めた。
一番、私を大きく変えてくれたのは、『セルフラブ』だ。
そのままズバリ、「自分を愛する」ということ。
自分と向き合い、自分が心から喜びを感じることが何かを知ることに始まり、その価値観を大切にすること。欠点も含めて自分を受け入れること。
『セルフラブ』を実践することで、
「今日やろうと思っていた○○ができなかった」「今日も○○がダメだった」
こんな自分へのダメ出しがあまりにも多いことに気づいた。むしろダメ出ししかしていなかった。
私の『セルフラブ』は、「今日もダメだった……でも、△△はできた!」こんな言葉のかけ替えから始まった。
そして、それを続けるうちに、わかったのだ。
私は、私に対して、いつも「自分は無価値である」という言葉をかけていたことが。
「私には価値がない。誰かのために我慢する、犠牲になることで、役に立てる」
これが、私が私に、日頃から思っていたことだった。
自分でも気づいていなかったということが驚きなのだが、いや、気づいていないから、変えようがなかったのだろう。
そうか……。私は、自ら望んでいたんだ。ああいう男性と、一緒になることを。
「我慢することで役に立てる」ことを、私は自ら、証明したかったのだ。
証明できなかったのは、それが私の本当の望みではなかったから。
私は、自分へかける言葉を意図的に変えた。
「あなたは生きているだけで価値がある」
離婚から10年以上の月日が流れた。
今の私は、あの日絶望して想像した未来には立っていない。
浮気も借金もしない夫と、娘と、3人で、平凡だけど毎日笑って生きている。
「家事」と「子育て」という、夫や娘が夢に挑戦できるように力を尽くして、生きている。
20代の大半を棒に振り、離婚という痛手を負ったことへの後悔の気持ちは、まだまだ消えない。
ただ、彼も、今はどこかで、心から笑って生きてくれていたらいいなぁと、時々思うのだ。
***
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