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抹茶ラテはカレー味


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Yuki(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
あなたは「人生を救ってくれた出来事は何ですか?」と聞かれたら、何を思い出すだろうか? 
私にとっては、間違いなく「抹茶ラテ」である。
 
私は自他共に認めるスタバ愛好者で、会社員時代はオフィスに入る前に必ず立ち寄り、起業後は週に4回、多い時には週に6回、パソコンを片手にスタバに通っている。
コーヒーが好きだからではない。むしろ、コーヒーは少し苦手だ。
なので、私のオーダーは毎回「抹茶ラテ」と決まっている。そして、広い空間の窓際にある少し大きなテーブルを陣取って仕事をするのが日課となっている。
 
私は、2018年に生き方をガラッと変えて起業した。
パソコン一つで好きな場所で仕事が出来ると言えば聞こえは良いが、起業して時間が経過するにつれ、起業当初の「楽しい」という気持ちはどこかに消え、いつも何かに追われているような感覚と空虚感との戦いだった。
 
いつも1人でスタバに向かい、抹茶ラテを片手に作業をし、Zoomで画面に向かって話す日々。
自由なはずなのに孤独に過ごしている憂鬱な日々が続いていた。
何か大きな原因があったわけではないが、漠然と「煮詰まる」ような感覚を感じ、小さな「このままでいいのか」が積み重なっていた。
 
このまま、ずっと、1人で仕事をしていくのだろうか。
このまま、ずっと、1人で生きていくのだろうか。
これから、私はどうなるのだろうか。
 
ちょうど「人との距離を取る」ことを推奨された時期でもあり、人のぬくもりを無意識に求めていたことも重なったのだろう。
 
そんなある日、いつものようにスタバに行くと、「抹茶ダブルフラペチーノ」が期間限定商品として発売されていた。
数日後、抹茶ダブルフラペチーノは空前のヒットとなった。
 
そして、大事件が起こってしまった。
抹茶ラテがSOLD OUTになってしまったのだ。
つまり、抹茶ダブルフラペチーノが売れすぎたおかげで抹茶粉の在庫が無くなり、抹茶ラテが飲めない事態となってしまったのだ。
 
唯一の楽しみの抹茶ラテが、しばらくこの世から消える。
生きるエネルギーとも言える抹茶ラテなのに。
大袈裟に聞こえるかもしれないけど、私は脳天をハンマーで叩かれるくらいの衝撃を覚えた。
 
その日以来、私の相棒は抹茶ラテからカフェラテに変わった。
それでも、私は相変わらずスタバに通い、いつもの席で仕事をし続けていた。
そんなある日、いつものようにカフェラテをオーダーし、いつもの席で仕事をしていると、ある店員さんがカップを持って寄ってきた。
 
「お店で提供出来るほどの粉は残っていないのですが、一杯分の粉は有るので、良かったらどうぞ。お仕事頑張ってくださいね」
そう言うと、店員さんはカップをテーブルにそっと置いて去っていった。
 
大袈裟ではなく、彼の後ろ姿が神のように思えた。
私は、久しぶりに抹茶ラテを頂いた。
ふと、抹茶ラテの味がいつもと少しだけ違うように感じられた。
もちろん、いつも通りに美味しいのだが、何かが違うのだ。
 
その時、なぜか私は母が作ってくれたカレーを思い出した。
じゃがいもと人参と牛肉と市販のルーで作る、どこにでもあるカレー。
だが、同じルーを購入して自分で作ってみても絶対に同じ味にならない、母の思いが込もったカレー。
学校で嫌なことがあり、泣いて帰ってきた私がいつも母におねだりしていた、あのカレーだ。
 
そうだ。きっと人は寂しさを感じた時、無意識に食事から「優しさ」を感じ取ろうとするのだろう。
そして、その隠し味を味わった時、全ての憂鬱が吹き飛ばされるのだろう。
それこそが、人の心にパワーを与えてくれるのではないかと思うのだ。
あのカレーも、この抹茶ラテも。
 
そんな彼が、違うお店に移動することになった。
私がいつものように仕事をしていると、また彼がそっと寄ってきた。
今度は、手に、試食用の小さなカップを抱えて。
 
そのカップには一口サイズの試食用のケーキが入っていて、カップの外にはメッセージが書かれていた。
「ありがとうございました」
 
「ありがとうございました」は、こちらのセリフである。
あの日、私はあの抹茶ラテに救われた。あの一杯のおかげで、「また頑張ろう」と思えた。あの一杯は、私にとって「神レシピ」の一杯なのだ。
 
もちろん、飲食店にも料理にも「レシピ」が存在する。
ただ、レシピを超える「愛情」という隠し味に勝るものはない。
お店であれ、母であれ、ただ相手を思う時、それは神秘的な化学反応を起こすのだ。
 
あれから4年。
あの店員さんは、きっと今でも何処かのお店でラテを提供しているのだろう。
全てのドリンクに「愛情」という隠し味を込めて。
それは、もしかしたら、あなたが手にしている、その一杯かもしれない。
 
 
 
 
***
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2024-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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