道を拓く
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:さとうゆみ(ライティング・ゼミ4月コース)
「肝は課題を出すことです。みなさんには16回その機会が与えられているのです。とにかく出してください」というようなことを講師が力説していた。
天狼院ライティング・ゼミ、第1講の中でのことである。
ゼミを視聴リンクから受講したのは、すでに“その機会”を3回逃した後だった。
「あーあ。だからさ、もっと時間が取れるようになってから申し込めばよかったんじゃないの?」と、心の中でつぶやく。はなからタイムリーに受講できないのはわかっていた。
「じゃあさ、なんで申し込んじゃったのよ」
さらに自問自答する。
天狼院ライティング・ゼミの広告をSNSで頻繁に見るようになったのはいつの頃からだろうか。最初に見た時からなんとなく気になっていた。謳い文句は「人生を変える」「受講生が書いた記事が次々にバズを起こせる」などなど。
むむむ、ややや、魅力的ではないか!
私は今年還暦になるフリーアナウンサーだ。
ひとくちにアナウンサーと言っても、明確な資格があるわけではない。そのキャリアはさまざまで、“フリー”をつけてしまえば名乗ったもん勝ちのようなところもある。ただ、NHKや民放などで活躍されたトップの方達をのぞくと、それだけで食べていくのはなかなかどうして大変なのである。そうした中、ハッタリと運と努力の三位一体攻撃により、おかげさまで35年間、なんとかこの仕事だけでここまで来れた。そして今もなおしぶとく現役で働けている。
身体ひとつ、完全出来高制の仕事は、大袈裟ではなく風邪もひけない。結構綱渡りな仕事にもかかわらず貯金と呼べる蓄えはなく、退職金なんてもちろんなし、老後の資金などあるわけがない、刹那を楽しんできてしまった計画性のないこれまでの生き方のツケは「一生働く」ことで払うしなかさそうだ。
「憎まれっ子世にはばかるの」法則でいくと長生きしてしまうかもしれないし、そうなった時にアナウンサーだけでずっと食べていくのはさすがに現実的ではないと思われる。他にも何か見つけなくては。次の手を打つときがきた。遅いぐらいだけれど。
さて、どうするか。
私は日本語が好きだ。話すのも好きだけど、書くのも好き。
そうだ、書くことを生業にしていこう。
いや、「いこう」って意気込んだところでそんな簡単なものではないだろう。
と、そんな時に見つけたのが天狼院の広告だった。年に何回か開講しているようだったのでうまく時間がとれそうなときにタイミングを合わせて、と様子を見ていたのだが、なかなかそんなタイミングは訪れそうにない。それに、暇になってからじゃダメなんだ。今、そう、今からその力をつけなければ!
還暦の誕生日を迎える夏までに次のステップへの足かがりが欲しいという気持ちにも後押しされて、ええい!と申し込んでしまった。
広告にうまく捕まったのか、私がうまく捕まえたのか、今はまだわからないけれど、こういうものは直感勝負だ。きっとここに道を拓くための道具があるはずだ。今はまだ、どこに向かってどんな道を作ればいいのか、ロケーションも、そしてその道を作るのにどんな重機や道具が必要なのかもわからない。さしずめ天狼院は私にとって道路建設を請け負ってくれるインフラ整備会社のような存在かもしれない。
未開の地に飛び込んでいくこの感覚、アナウンサーの仕事を始めた頃に何だか似ているな、と思った。
当時はまだ高卒で、知識も技術も、一般常識すら欠如していた私が、無我夢中で進み続けるうちに、草ぼうぼうの荒地の中になんとか歩けそうな小道を見つけ、そのうち砂利道に出て、ついにハイヒールで歩ける舗装路にたどり着けた。
折に触れ私を励ましてくれたのは「諦めなければかならず回路はできる」という、日本を代表する評論家であり思想家である加藤周一氏が何かに寄せて書いていた言葉だった。努力を惜しまず、ひたむきに取り組んでいれば、最初は不可能と思えたことでも必ず頭の中に回路ができてくる。道は拓けるのだと。
これは件のライティング・ゼミ第1講で講師が「ライティングとは自転車に乗るようなものである」と例えたのに共通しているのではないだろうか。確かに、自転車に乗れないときは、補助輪なしであんな細いタイヤでバランスをとって走るなんてできるわけがないと臆してしまう。でも、練習すればほとんどの人が乗れるようになる。もうちょっと頑張ればロードレーサーにだって乗れるし、うんと頑張れば一輪車にだって乗れるかもしれない。
一番重要なことは、どれだけ熱意を持って取り組めるか。やるかやらないか、なのだろう。
「肝は課題を出すことです」
そうか、開拓の第一歩はまずはそこか。
時間がないとか、評価がこわいとか、言い訳を考える前に、とにかく飛び込まなくでは道は作れない。
機会はあと13回、肝に銘じて取り組んでみよう。道を拓くために。
***
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