メディアグランプリ

密やかな勇気 ようこそ人生を変える書店へ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田三佳(ライティング実践教室)

※この記事はフィクションです
 
 

紺地に白の小さな水玉模様の服を着たそのひとを見たのは、夏の夕暮れだった。
白い貝ボタンをきっちりと留めている胸がすこし窮屈そうだ。
「ワンピースとてもお似合いですね」
うつむいていた顔が可憐な花のようにほころんで私まで笑顔になる。
20代前半だろうか。
心なしか淋しげに見える彼女が私は気になった。
ここは湘南天狼院。海に面した静かなブックカフェだ。
私はスタッフとして週3日働いている。
閉店間際でほかにはもう誰もいない。
「そうだわ、お客様、ここ屋上もあるんですよ。あがってみませんか?」
私は店に鍵をかけ彼女を屋上にお連れした。
 

「わあ!! 最高!」
沈んでいた彼女が明るい声をあげた。
そう、このロケーション。思わず声を上げずにいられないはず。
遮るもののない空と海、刻々と変わるくれないの中に浮かび上がる影絵のような富士のシルエット。
秋めいた風の中で彼女が深呼吸をし「ちょっと気が晴れました」そう言って微笑んだ。
「お住まいはこの近くですか?」
そんな問いかけから彼女はポツリポツリと語り始めた。
湘南で生まれ育って、この春から社会人になったこと。
なかなか仕事で認められず落ち込んでいること。
彼と今日エノスイ(江ノ島水族館)に行くはずだったのにドタキャンされてしまったこと。
「何がいけないんでしょうね。最近なんだか空回りばかり……」そう言ってため息をもらす。
私は彼女を見ながら遠い昔を思い出していた。
上司から厳しい言葉をあびて給湯室で泣いたあの日。
彼からデートを断られこの世が終わったように悲しかったあの日。
親子以上に歳の離れた初対面の私に心を開いてくれる彼女が愛おしかった。
 

私はふと思い出しポケットから1枚のチラシを取り出した。
ここ天狼院で人気の「秘めフォト」だ。
「お客様、これご存じですか? 自分史上一番Sexyな写真を撮影するイベント。
このクーポン最後の1枚だからあげちゃうわ」
「やだ! 私なんか全然。本当に自信ないんですよ」
風に髪を梳かせながら恥ずかしげに微笑む笑顔が眩しかった。
彼女は自分の美しさにまだ気がついていない。
けれどきっと輝ける瞬間を心の奥底で待っている気がした。
 

「秘めフォト」は単に色っぽい写真を撮影するイベントではない。
ありのままの自分を受け入れるための体験だ。
私は若い頃、美大で来る日も来る日もヌードデッサンをしていた時期があった。
そこで私は女性の躰がいかに美しいかを知った。
パーツは同じでも誰ひとりとして同じ躰は無い。
太っていようと痩せていようと、女性だけが持つ曲線に包まれた滑らかな躰は何と美しいことか。
だからこそ「秘めフォト」はできることならすべての女性に受けてほしい企画。
たとえ誰にも見せることなくアルバムに秘めたとしても、その方だけがもつ「美」を閉じ込めた1枚はきっと明日へ踏み出す勇気をくれるに違いない。
 

それから数日後、思いがけず彼女からお電話を頂いた。
「秘めフォト、受けてみようかと思うんです」
私の気持ちが通じたのだろうか。
「きっと素敵な1日になりますね」
彼女の勇気に胸が熱くなった。
 

そんな彼女の秘めフォトの日。
おずおずと緊張した面持ちで入ってきた彼女だったが、だんだんと周りの方の高いテンションに刺激されたのか表情が変わってきた。
撮影が始まった。
「うん、いい表情だ」
シャッター音が鳴るその度に、花がゆっくりと開いていくように美しくSexyに変化して行くその表情と躰は、同性の私をもうっとりとさせた。
「素敵!!」
「綺麗……」
取り囲む参加女性たちから口々にたくさんの賞賛の言葉と拍手をもらって、彼女はくしゃくしゃの笑顔を見せた。
 

「楽しかった~!!」
撮影後、上気した頬で私に駆け寄ってきたその表情は、もうあの日の彼女ではなかった。
ほんの少しの勇気をもって秘めフォトに参加し、ありのままの自分をさらけ出し、こんな晴れやかな表情ができるなら、もう大丈夫。
仕事も恋もきっといい方向に進むだろう。
私はほっと胸をなでおろした。
その後、店を訪れる度に美しくおとなの女性へと変貌してゆく彼女に会った。
密やかな勇気をもって「人生の扉」を開けた彼女は今いっそう眩しく見える。
 

そうここは、そんな不思議な書店なんです。
あなたの人生を変えてしまうかもしれない書店。
「秘めフォト」はそのほんの一部です。
書くこと、写真を撮ること、AI、デザインなどなど……。
ここには数え切れないほどの「扉」があなたを待っています。
さあ貴方もぜひ一度、湘南天狼院に足を運んでみてください。
静かな時間の中で、自分の中に眠る何かが目を覚ますかもしれません。
それが新しい情熱や、たとえ忘れていた夢であったとしても。
湘南天狼院は、いつでもあなたをお待ちしています。

 
 
 
 

***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2024-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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