メディアグランプリ

紫式部 2024年現代を生きる


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記事:かのん(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

「いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。」(『源氏物語』桐壺)
 
高校の古文は、原文をひたすら音読する授業だった。現代語訳や文法解説は最低限しか触れず、古文の先生は「声に出して読むと、文章の美しさがわかるでしょう」と、うっとりした表情でおっしゃる。
たしかに、最初はつっかえつっかえだったが、繰り返すうちに、日本語のDNAなのか、文章のリズムにのって読めるようになってくる。
特に、『源氏物語』には授業の時間をかけていたせいか、40年以上経って今も、冒頭の部分を暗唱できる。頭でなく身体が記憶しているような感じはあるが、古文の教科書より、大和和紀さんの『あさきゆめみし』を読みふけり、雅な世界の恋愛物語の中に登場する姫君たちのことを「いとあはれ」と思うくらいだった。
 
ところが、歳を重ねるにつれ、紫式部が傍で息づいているような感覚になることがある。
NHKの大河ドラマ『光る君へ』の影響? いや、大河ドラマ放映前から『源氏物語』の冒頭をふと思い出し、筆を持っている紫式部の気配を感じる。
10日ほど前、滋賀大津を旅行し、紫式部のゆかりある石山寺、三井寺の参拝までした。『源氏物語』を書き始めたと言われている石山寺の奥の方を歩くと、1000年以上前に、紫式部も歩いたかもしれないと感じられる。『源氏物語』の構成を練りながら、筆を走らせていたかもしれない。
また、琵琶湖で仲秋の名月に近い月を見上げていると、長い時を隔てて、紫式部と同じ月を観ているような不思議な感覚もあった。その時、紫式部はどのような思いで琵琶湖の風景を眺めていたのか想像してしまう。
 
『紫式部日記』や、彼女にまつわるさまざまなエピソードから、紫式部は「男の子に生まれていればよかったのに」と言われるほど賢かったこと。晩婚の上、すぐにシングルマザーになってしまったこと。等から、我慢することも多く、少々、屈折した部分もある才女だったのではないかと伺える。
そう想像すると、キャリアを重ねて頑張っている現代の女性の中に、紫式部のような人はかなりいるのではないかと思う。
頭が良く、努力して勉学に励み、男性より優秀な成績をおさめる。(性別で比較するのもどうかと思うが)しかし、男性のように出世するチャンスはなかなか与えられない。男性だけでなく、同性である女性とも上手にコミュニケーションが取れず、距離を置かれてしまう。晩婚ながらも子供ができたのに、シングルマザーになり、子供を預けて働く。日々、ため息をつきながら、一生懸命に生きている女性。そして、現実にはあり得ないことを空想したり、ブログやNoteに書いたりすることで気晴らしやストレス解消をしている人。私の周囲にもこのような女性はいる。
 
高校生の頃、「紫式部と清少納言とどっちが好き?」と会話していたことを思い出す。
なんとなく「私は紫式部の方が好きかな。」と答えていたが、今、改めて、彼女たちの人物像を想像してみる。私の偏見だが、紫式部は、真面目で負けず嫌いのキャリアウーマンで、複雑で陰陽があるタイプ。清少納言は、プライドは高く好き嫌いがはっきりしているキャリアウーマンで、推し一筋なわかりやすいタイプ。(紫式部からも清少納言からも「何もわかっていないくせに」と言われそうだが)と仮定すると、ふたりのように頑張っている女性は現代にも大勢いると思う。
 
なんだか、大袈裟になってきてしまったが、でも、1000年以上の時を経て、紫式部や清少納言は現代にも息づいているように思う。
世界最古の長編小説やエッセイを書いた遠い人たちではなく、仕事や人間関係に悩み、健気に自分の信じる道を歩もうとする人として映る。
そして、現代を生きる女性を観察すると、紫式部や清少納言たちに見えてくる。十二単をまとった彼女たちが取引先と交渉したり、部下とミーティングしたり、という姿を想像し、つい微笑んでしまう。そいう私も十二単を着て、筆の代わりのキーボードをうっているのかもしれない。
現代の紫式部さん、清少納言さん、共に頑張ろうね。と声をかけたくなる。
 
初めての天狼院のライティング・ゼミ。
文章を書くことで得られるものが大きいと夢見ながら、何とか綴り続けたいと思う。
ライティングの機会。滋賀大津の旅行。蘇る古文の授業。さまざまな要素がつながって、文章を書くことと向き合っている。これも縁だろうと思い、この時間を大切にしていきたい。
紫式部も応援してくれているだろう。
 
 
 
 
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2024-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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