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おばあちゃんと不思議な出来事


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記事:ふみふみ(ライティング・ゼミ 9月コース)
 
 
みなさんは不思議な出来事に直面したことはありますか?
私は今まで両親や姉から「亡くなったおじちゃんがソファに座っているのをみた」「誰もいないのに階段をあがる音がする」などと不思議な出来事が起こった話を聞いたりしてきたが、実際に自分が直面したことはなかった。
しかし、あるとき不思議な出来事が私に起こるのである。
 
当時はコロナ大流行期。
私は第一子を妊娠しており、里帰り出産のために実家である北海道に帰省していた。
帰省するとまず行くのはおばあちゃんの家。
実家からおばあちゃんの家はさほど遠くない距離であったため、帰省すると頻繁におばあちゃんに会いに行くのがいつものことだった。
 
おばあちゃんは4年前におじいちゃんが亡くなってからも一軒家で一人暮らしをしており、週に1回デイサービスを利用して色んな人と話したり身体を動かしたりと気分転換しながら、週に何回か私の両親がおばあちゃん家を訪れて買い物を支援したりすることで自宅での生活をすることができていた。
おばあちゃんは気配り上手で、いつも私の話を「うんうん」と聞いてくれる優しいおばあちゃん。
お腹が大きくなった私をみたおばあちゃんは、「ふみ、今お腹にいる子の予定はいつ? ふみの子どもが生まれてくるのが楽しみだね」と私のお腹にいる子に会えるのを楽しみにしてくれていた。
 
帰省して直後は元気だったおばあちゃん。
しかし、おばあちゃんに会いに行くたび、徐々に「全身がかゆくて」「身体がなんだかだるい感じがする」等と言うことが多くなり、発言の量と比例してなのか肌の色が黄色くなっていったのだった。
 
「これはおかしい」と気づいた私や両親。
母がおばあちゃんを連れて病院へ受診すると……
 
「癌です」
母が先生に言われたそう。
 
きっと母は頭が真っ白になるぐらい衝撃的なことだったろう。
「現在ステージは4くらい。余命は長くても1か月程度です。病院で治療しますか、どうしますか」
 
母はすぐに母の弟と電話し、どうしていくか相談。
「治療できるのであればしていただき、最期は自宅で看取りたいです」
そう伝えた。
 
伝えてから、行動は迅速だった。
緊急性が高いため、より大きな病院におばあちゃんはすぐに入院し、手術も成功。
あとは自宅のどこに介護用ベッドを置くか、車いすはどうするか、どの程度支援してもらうか等ケアマネージャーさんと話して、話が決まり次第退院の予定だった。
 
しかし、おばあちゃんが自宅に戻ることはなかった。
手術が成功して数日後の朝、容体が急変。
そのまま帰らぬ人となった。
 
太陽が照り付ける夏の暑い時期だった。
 
コロナが大流行中であったため、母以外は入院中の面会もできなかったし、「危篤です」と言われてからも母とおばあちゃんの弟以外はおばあちゃんの最期に立ち会うことを許されなかった。
だからこそ不思議なことが起きたのかもしれない。
 
母が最期の面会をしている中、私と父はおばあちゃんの家に行っていた。
いつおばあちゃんが帰ってきてもいいように、仏壇前の掃除や少々家具の配置を変えようとするために2人で一足先におばあちゃん家に行ったのだった。
いつものように、リビングに繋がるドアを私が開けてリビングへ入ろうとしたときだった。
リビングに繋がるドアを開けると最初に目に入るのは仏壇とその前にある椅子なのだが、
誰もいないはずの椅子に一瞬誰かが座っているように見えたのだ。
 
「おじいちゃん……?」
 
そう、私は4年前に亡くなったおじいちゃんの背中が仏壇を見るように座っているのが見えた。
 
いつもおじいちゃんが着ていた青い服。
優しい雰囲気と丸い背中。
瞬きをした瞬間見えなくなってしまったけれど、あれは間違いなくおじいちゃんだった。
 
少し驚いたが、「おじいちゃんはおばあちゃんを迎えにきたんだよね。きっと2人の集合場所はこの仏壇の前なんだね」と私は直感で感じた。
おじいちゃんが見えた後すぐに母からおばあちゃんが亡くなったと電話がきた。
 
その後、父と2人でおばあちゃん家の掃除と家具の配置を変えて数時間後、亡くなったおばあちゃんが家に帰ってきた。
おばあちゃんが帰ってきてからは、おばあちゃんの弟や母の弟が来てドタバタしていた。
その夜、おばあちゃんの家で母と2人で夜ご飯を食べながら、おばあちゃんの話をしていた時のこと。
またしても不思議なことが起こる。
 
母が私に「おばあちゃんのお母さんはね、素敵な人でね……」と話しをしていた時だった。突然「キュワ! キュワ! キュワ! キュワ!」と地震速報を受信したときの警報音のような音が部屋に鳴り響いたのだ。
 
私と母は突然の音に驚き、顔を見合わせ、音のなる方へ視線を動かしてみた。
なんと音がなった方向はおばあちゃんが眠っている場所の近くだった。
母と「スマホとか、何か似たような物はおばあちゃんの近くに置いてたっけ?」と話しながら眠っているおばあちゃんのそばまで行き、音の原因を探したがスマホのようなものは何も見当たらなかったし、音が鳴るようなものは近くにはなかった。
かなり大きな音であったし、警報音のような音であったため一瞬怖かった。
しかし、母と「きっとこれはおばあちゃんが鳴らしたものじゃないかな?」と話すと、近くにおばあちゃんが「いるよ」って言ってくれたように感じ、嬉しくて涙がこぼれた。
 
それからは不思議な出来事は起こることなく、出産のためお葬式に出席できない私はおばあちゃんにお別れを告げたのだった。
私はおばあちゃんが亡くなってお葬式の日の当日、朝から私は病院のベッドで陣痛促進剤投与され、お昼過ぎに陣痛がきた私は初産にしては早い約3時間の分娩で無事娘が誕生した。
 
両親と姉はおばあちゃんのお葬式へ、私は立ち会い出産ができなかったため1人で出産だった。
きっとおばあちゃんは1人で出産する私のために、おじいちゃんと一緒に出産の立ち会いに来てくれたのかもしれない。
出産後ひと段落して、なぜか自然と「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう。おじいちゃんとおばあちゃんのおかげで私頑張れたよ。ひ孫、近くでみてくれてありがとう」と心からの感謝を病室の窓に向かって、独り言をつぶやいていた。
 
病室の窓から見えたのは綺麗な夕焼けだった。
 
不思議な出来事は「ありえない」と思う人もいるかもしれない。
私の目がおかしいと思うかもしれない。
母と私の耳がおかしいと思うかもしれない。
でも、その不思議な出来事のおかげで私は亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんを身近に感じることができたのである。
 
きっと説明できないような不思議な出来事は今後また起こるのかもしれない。
しかしそれは怖いことではなく、誰かが私に会いにきてくれているだけなのだと思えた時、不思議な出来事は不思議ではなく嬉しい出来事に変化するのだと私は思う。
 
 
 
 
***

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