日常の大事さに気づかされたこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:HIROMI(ライティング特講)
「ちょっとこっちにきて」
週末、旦那と娘と3人でリビングで話していた直後に旦那に別室に私だけ呼ばれた。
「どうした?」
「実は、今日の午後から左手の感覚がおかしいんだよね いつも使っているドアのノブをつかもうと思ったらうまく掴めなかったり ブラインドタッチで左だけうまくできなかったりしてさ 自転車で転ぶこととか俺無いんだけど 2回も転んだんだよね……」
「え? やだ大丈夫? すぐ病院につれて行こうか? 私まだお酒飲んでいないし」
「いや 明日どうしても職場に行かないといけないから もし早退できるようなら明日病院に行こうと思う」
確かにさっき呂律が回っていなくて言葉が聞きづらかった。 思わずソファーから振り返って聞き返すぐらい、いつもと話し方が違っていた。 旦那は自分では自覚はないと言っていた。 でも私に指摘されてやはり何かおかしいと気づいたようだ。 このまま左半身不随になったら……。もし旦那がこれで働けなくなったらどうしよう……。 不安でいっぱいになり、その晩は殆ど寝られなかった。
月曜日の朝、私はいつも通り在宅で仕事だった。 お昼前に会議が終わり、携帯を見ると、旦那が職場から早退することができて自宅にむかっていると連絡が入っていた。 慌てて脳外科専門の病院を調べると、こういう時に限って近くで外来を受け付けている所がなく、車で40分ぐらいかかる総合病院に行くことにした。
「私先に出て車出してるね 保険証忘れないようにね」
「うん」
返事を聞いてから玄関をでた。 病院に到着し、私は自分の不安を感じ取られたくなかったので、平静を装い車で待っていることにした。 まずはCTや検査があるだろうから、もし診察するときに一緒に入れそうなら私も行くと伝えた。 旦那もそれでよいと了承した。 しかし5分もしないうちに電話が鳴った。
「もしもし どうした?」
「ちょっと病院の受付まで来てくれるかなあ」
旦那は受付で問診票に記入をしていた。
「保険証忘れて来ちゃってさ 診察受けるのに現金5万円先に前金として渡さないと診察できないって言われたんだけど現金持ってる?」
「え? 保健証忘れた? 病院にはATMがあるだろうから受付で聞いてみるわ」 しかしATMは病院には無く、近くのコンビニまで行かないと現金がおろせないと言われて、コンビニまで往復した。 保険証を持ったか確認したのに忘れたのには、高校生の娘よりタチが悪いと後で思ったが、その時は目の前で起きている事を一つ一つ受け止めるのに必死だった。
まずはMRIを撮影し、即診察室に呼ばれた。 医師から、
「脳内出血していますね」
と診断された。 MRIの画像を見ると、半分より左側の頭頂部の一部が長方形に白くなっていた。 何か兆候があったかどうかを聞かれ、旦那が説明をすると、
「この長方形の位置が横になっていますが、これが縦に長方形に出血していたらもっといろいろ不具合が出ていたと思います ラッキーでしたね」
と言われた。
「こういう出血は経験上止まるので問題ありません 出血がなくなると症状も治まってくると思います」とのこと。
「通常だとこのまま1~2日入院してもらった方がいいのですが、思ったより元気だからどっちでも大丈夫です」
との判断だった。
「ただこういう症状が出た時には次回は救急車を呼んですぐに病院に行ってください」
と最後に言われた。 旦那は、
「そうなんですか 知りませんでした……」
っと驚いていた。 そして自宅療養を選び、2人で帰宅した。
旦那は、仕事人間で毎晩帰宅が遅く、仕事を理由に家事は何もしない。たまに何か手伝いを頼むと不機嫌になる。 「自分の事ぐらい自分の事でやってよ」っと私はいつも心の中ではイライラしていた。 それがである。 明日から急に生活が変わるかもしれない不安に襲われたときに一気に不満が吹き飛んだ。 まだ53歳なのに、85歳の実父より先に介護が始まるのではないかと不安に襲われ、旦那の行動への不満より、日常が変わるかもしれないという恐怖が上回った。 今日の診断で、後遺症も無いと言われ、もう一度普段の生活に戻れるチャンスをもらったように思った。 お互い仕事で忙しい事を理由に会話は最小限しかして来なかった。 日常は永遠には続かない。 身をもって今回体験した。 旦那の存在の大切さを改めて痛感した。
旦那は翌日だけ休んで2日目から仕事に行くと会社に伝えた。 しかし上司からは、これを機に1ヵ月ぐらい休養を取ったらどうか、少なくとも今週は休むよう促されたようだ。 旦那は殆ど有休を使った事がない。 夏休みの家族旅行は、「仕事が入った」と2年連続ドタキャンされ、仕方なく子供2人を連れて3人で出かけた。 今回は上司からの休養の提案だったので、健康あっての仕事だからと私も説得し、旦那は1週間休むことにした。 4日目にはほぼ症状は消えて、普段通りの生活ができるようになった。
5日目の金曜日も私は在宅勤務をしていた。 お昼休み前後に会議の予定がなかったので、外へお昼を食べに行こうと旦那を誘った。 最近自宅近くにオープンしたレストランがあったので、気になっていた。
「2人で平日にランチにでかけるなんて初めてじゃない?」
と私が言うと、
「そうだね そうかもしれない」
っと一言だけ返ってきた。
これからは、真面目に仕事ばかりに時間を費やす人生から、もう少し肩の力を抜いて、平日お休みを取って出かけるのもよいのではないかと思った。
そして1週間の休みを経て旦那は翌週から出社した。 何事もなかったかのように、また日常が戻ってきた。 しかし心の状態はこの1週間で大きく変わった。 あと何年この生活を続けられるのだろうか。 あとで振り返った時に後悔のない日々を生きたいと思った。 今晩のおかずはいつもより1品増やそうと思った。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00