うまくいかない妊活が教えてくれたのは、走り続けるだけが全てじゃないということ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:アオノスミレ(ライティングゼミ・1月コース)
夫婦喧嘩の果てに、夫をぶん殴り一発KOしたことがある。
そんなことを書くと、「旦那さんは何をしたんだろう。不倫? それとも借金?」と思われる方もいるだろう。原因は、もう思い出せないくらい些細なことである。使ったマグカップを片付けていないとか、おそらくその程度のことである。「そんなことで?」と思う人もいるかもしれない。しかし、当時の私は不妊治療でストレスMaxだったのである。
結婚が遅めであった我々夫婦は、結婚してすぐに妊活を開始した。しかし、半年してもできない。そこで大慌てで不妊治療専門院へ駆け込んだのだ。今思うと、どう考えても焦りすぎである。そもそも、犬や猫と違って人間の一回での妊娠率はそう高くないのだ。
そして、失敗したなあと思うのが、体調を整えずに不妊治療に臨んだことだ。当時の私の状態を例えるなら、整備してないスポーツカーで走ろうとしていたようなものである。体外受精や人工授精などの治療は、最速で目的の妊娠まで連れて行ってくれるスポーツカーのようなものだ。確かに早いが、最速で走るにはメンテナンスが必要である。私はそこをすっ飛ばしていたのである。
当時、仕事のストレスで体調を崩した私は、会社を退職していた。会社を辞めて時間ができたことだし、妊活に専念しようと思った。体調が万全でない状態で不妊治療を始めたが、当然の如くうまくいかない。また、不妊治療はホルモン値に合わせて通院しなくてはいけない。「明日の午前中に来てください」「2日後に来てください」と突然言われるため、不妊治療以外の予定を入れずらい。それがまたストレスだった。おまけに大量の薬もある。これをそれぞれの決まった時間に飲むのが、また苦痛であった。
元々、仕事のストレスで体調を崩しているのに、それに加えて不妊治療のストレスで体調はさらに悪くなった。これで結果が出てくれればいいのだが、こんな状態で妊娠などするわけがなく、ますます精神状態が悪くなっていく。
勉強でも仕事でも頑張れば、ある程度の結果は出る。私は不妊治療で、頑張っても結果が出ない世界があるということを初めて知った。そして、自分がこんなに頑張っているのに、何もしていないように見える夫の姿に殺意が湧いた。
そして、食器を片付けないとか、そのレベルの些細なことで、夫をぶん殴るという事態が発生したのだ。うちの夫は180センチ半ばの大男である。その大男がしばらく動けなくなるくらいの力で殴ったのだ。もちろん、道具は使わず、素手である。夫より20センチ以上背の低い女とはいえ、精神的に追い込まれるとここまでの力が出るのか。
さすがにこれはまずい。大男が一発でノックダウンする力で殴るなんて、そのうち殺人事件が起きてもおかしくない。
夫をぶん殴ったのと同時に、我慢して見ないようにしてきた不妊治療の辛さが、堰を切ったように溢れ出してきた。
「もうやだ。やめたい」と叫ぶ私に、「そんなに辛い思いをしていたのか。全然、気づかなくてごめん」と私を必死に宥める夫。私は、辛くてもう嫌だという感情を全部ぶちまけた。そして、ふっと気づいた。
「なんで私だけこんなに辛い思いしなきゃいけないのよ」「なんで私だけこんなに頑張らなきゃいけないのよ」と思っていたが、それを夫に全く伝えていなかった。勉強や仕事みたいに頑張れば、結果が出ると信じて、夫を置き去りにして、1人でストイックに走り続けていた。
そうだ、整備してないスポーツカーに乗って、エンスト起こしかけているのに、無理やり走り続けていたのだ。そして、事故が起きたのだ。
夫と話し合った結果、私たちには合わないのかもということで、不妊治療はやめることにした。とはいえ、妊活はやめずに、自然の流れに任せることにしたのだ。スポーツカーは降りて、2人で手を繋いでテクテク地面を歩いていく方を選んだ。とりあえず、不妊治療は中止だ。
不妊治療をやめて、のんびりまったり過ごすようになったら、体調が良くなった。そして、今度は内科医の先生のもとで再度妊活を始めた。不妊治療というと産婦人科や不妊治療専門院があるが、内科でもやってくれるところがあるのである。内科での治療は、体外受精や人工授精ではなく、体内のホルモンバランスを整えて妊娠しやすくなる体を作る治療というのに限られる。
現在でもまだ妊娠していないので、今後も子供ができるかは分からない。でも、それでもいいかなあと思っている。
不妊治療では、結局子供はできなかったけれど、今ではやってよかったなあと思っている。世の中には頑張ってうまくいくことばかりじゃないということに気づかせてくれた。頑張って、走り続けるだけが全てじゃない。困った時、悩んだ時、隣にいる夫に色々相談しようと思えるようになったのは、一番の収穫だ。
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