100円ショップから毛糸が消えたのは脳が喜んでいる証拠かもしれない
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記事:冨山繁美(ライティングゼミ3月コース)
「100円ショップから毛糸が消える」
メディアなどで取り上げあれているが、一年以上前から100円ショップの毛糸の棚からしだいに毛糸が消えていった。なぜ、毛糸が消えるのだろう?
私はそこそこ手芸が好きだ。「そこそこ」というのがポイントで、素材や道具にこだわりもなく、手作りを楽しんでいる程度のものだ。「図画工作 2」「家庭科 2」という成績の私だが、子育て中に「手作り」という難題を突きつけられたことがあった。幼稚園や小学校の準備品。既製品を買っても良かったが、「ママが作ってくれた自分だけのもの」に子どもは喜び、その笑顔を見て作ってあげたいという気持ちも合わさって、かなり無謀なチャレンジをした。そのおかげで「そこそこ」手芸が好きになり「そこそこ」作品を作れるようにもなったのだ。
編み物はというと、昭和50年代、私が中学生の頃に好きな男の子にマフラーを編むことが流行っていた。それも、とてつもなく長いマフラー。その時、祖母が教えてくれた。バレンタインデーの前には女子が集まってワイワイ、ガヤガヤマフラーを編んでいたが、40年の時を超えて、毛糸が消えるくらい編み物が流行っているらしい。
大きな要因の一つには道具が安価で手に入るということだ。100円ショップで編み棒や編針などの用具も毛糸も手に入る。手芸店で売っている編み物ブランドの道具は600円以上、毛糸も高いと700円・800円してしまう。糸の太さや種類によって色々なサイズの編針を揃えるだけでもかなりの金額。それが一律108円。一般の手芸店の毛糸より若干量は少ないのだが小物を編むにはちょうどいい。それに失敗したり途中で挫折してもその値段ならまぁいいだろうという手軽さもある。毛糸の種類も豊富で冬にはアクリルの毛糸だけではなくウールの混ざった手触りのいい色とりどりの毛糸や、春から夏にかけてはコットンの糸やレースなど種類も色も選べるのだ。
そして最大の要因は、YouTubeやTikTokで編み方の動画がとてもわかりやすく、本などにはあまり載っていないような柄や編み方が丁寧に解説されていることだ。編み物の本を買う必要も無くなりさらに手軽になった。流れてくるTikTokを見ながら、「これ作りたい」と私も思い、100円ショップに急いだ。
やはり棚はスカスカだが気に入った色の毛糸を買い込み小物から編み始める。するとどうだろう。あっという間に時間が過ぎるだけではなく手を動かすことによってさまざまな効果が出始めたではないか。編み物は繰り返しのため、編み方を覚えてしまえば黙々と作業をすることとなる。すると手を動かしながら頭は冴えてきて、色々なことを考えるようになった。
ライティングゼミ提出コラムの内容や題材について、絵本専門士として活動する内容やイベント、そこに関わるチラシや関連機関への書類提出のこと、自分の抱えている各方面へのアプローチや次へのアクション。今日の夕食のおかずや明日やるべきことなど、手を動かしながら次々浮かぶのだ。浮かんだ内容はメモを取りあとで見やすいようにすることでかなり考えをまとめることができた。手を動かしながらいつの間にか脳を使っていたのだ。
これはいったいなんなんだ! 物を作る楽しさや手作り品を使う喜びもさることながら、考えをまとめ思いにふける、その時間を確保できていることに私は驚くとともに、手作業の可能性を改めて感じていた。
私の祖母の時代まで、普通の家庭の普通のお母さんたちは繕い物をしたり、刺し子の布巾を作ったり、着物を縫ったり、蕎麦やうどんを打つなど手を動かしていた。お父さんたちも道具の修理をしたり、かごなどの日用品を編んだりもしていた。もう少し前の時代ではお米の脱穀もお米を入れた瓶に棒をさして突いたり、糠床が自宅にあり毎日かき回していたり「手作り」「手作業」が日常にあった。
しかし色々なものが便利になり、そして忙しくなったことで手作業が減る現代、この編み物ブームは単に安く材料が手に入り、簡単に作り方がわかるというだけでなく、手を動かすことは自分の意識とは全く別次元で脳が喜んでいる証拠ではないか? だから思わず手に取ってしまうとは言えないだろうか? 昔から痴呆予防に「手作業」が有効的だとか幼児教育に「手を動かす遊び」を取り入れるなど、当たり前に言われていたことを今更ながら思い出した。
大型温泉施設の一角で女子高校生が楽しそうに編み物をしている。「こんなところまで来て編み物?」と思ったが、そうではない。編み物をしながらおしゃべりに興じているのだ。つい最近まで、若い世代は集まっていてもそれぞれが携帯の画面を見ていたのに、私の中学時代のように楽しそうにおしゃべりをしながら編み物をしている。それはまるで時代を遡ったようなコミュニケーションだった。
手を動かすことで「脳の活性化」や「コミュニケーション」が復活。その兆しこそ編み物が流行り毛糸が売れる現象へと繋がっているように感じずにはいられない。ちょっと行き詰まったら毛糸と編針を買い、試しに編んでみてはどうだろう? 216円で良いアイデアが浮かんだり考えをまとめるきっかけになるだけではなく、思いがけないようなコミュニケーションが生まれるかもしれない。
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