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AIを読書に使い、家の積読タワーを崩そうとした話


 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:國分厚彦 (ライティング・ゼミ、2026年5月開講・渋谷、4ヶ月コース)

 

 

最近、とある変わった読書会に参加することになった。

聞くところによると、課題図書を普通に読むのではなく、AIを駆使してより早く、深く読み解いていく、というものらしい。

読書会の話を聞いた時、俺は飛びつき、すぐに参加したい旨を伝えた。浅はかながら「AIを読書に使うことができれば、もう面倒なアナログ読書からは逃れられるし、何より家にある大量の積読の山にメスを入れることができる」と思ったからである。

 

 

実を言うと、俺は、読書という行為が苦手である。勉強自体は好きで、書店に通うたびに大量に興味の湧いた本を買ってしまうような人間だが、全て読み切るには時間と労力が足りず、結局本の物量に負けて読み通せず、途中まで中途半端に読んだ積読が増えていってしまうのだ。

 

「この積読本の内容は概ねなんとなく理解した(気がする)が、それを読み切るには時間と気力が足りない」なんて、フェルマーの最終定理みたいな言い訳をしつつ、また性懲りも無く好奇心に任せて新しい本を購入しまくる、ということを繰り返していたら、気がついたら積読が山となって家の中を占拠しているという惨状となってしまった。

 

最初のうちは本棚を新たに増設したりして、都度本棚に入れて対応していたのだが、気がついたら家の中に置ける範囲ギリギリまで増やした本棚が全て埋まっていた。デスクの上に積読を置いていたらいつしか違法建築スレスレの積読タワーが乱立し、時々凄まじい音を立てて崩落し、パソコンや貴重品が埋もれたりして大変なことになった。それでもなお積読は増殖を止めず、現在は床をも侵食しつつある。

何より恐ろしいのは、それだけ積読の山が増えて行っても、結局俺の知識量や知的生産能力などは全く増えていないことである。

 

 

このような惨状を打破するのに、AIを使用して概要を理解し、「読んだこと」にしてしまえば、我が家の知的不良債権となりつつある積読タワーの内容を効率よく身につけ、必要に応じて深化したり、不要なものは処分したりしていくことができる。

そう目論んだ俺は、AIに救いを求めたのだ。

 

読書会に参加した時、冒頭で講師が本の内容について話をしていた。最初の課題図書は、健康がテーマで、睡眠についての本だった。講義の中で使用しているAIを見てみると、衝撃を受けた。どうやらオリジナルのAIを使用し、本の内容をリサーチし、詳細なレポートを作っていた。

それについてAIとディスカッションを行いながら、内容を深めていた。

効率よく学ぶことはできそうだが、少なくとも、俺の手元のAIではすぐにはできなさそうだ。

 

「こりゃあ、このAIを手に入れないことには話にならないな」

そう悟った俺は、そのAIの出所について調べた。どうやら読書会の大元で販売されている読書ノートの付録としてついているようだ。早速ノートを購入し、付属のAIを自分のGeminiに組み込み、積読の一つとなっていた本について、レポートを作ってもらった。

 

ものの数分で、レポートができた。読書会の時と同じく、詳細な内容が書いてあった。

読んでいると、著者のことや、本の内容はもちろん、それに対する批判まで書斎に調べて、まとめてあった。内容自体も、5〜10分くらいあれば読み通せそうだ。

 

「しめしめ……これを使いまくれば、家の中の積読の内容を一気に把握していくことができるぜ……」

 

 

しかし、すぐにアクシデントが発生した。

その後調子に乗ってレポートを乱発していたら、すぐに機能停止し、レポートを作れなくなってしまった。どうやらDeep Research機能を使うようで、Geminiを無料契約にしていたため、使用回数制限に引っかかってしまったのだ。有料契約にしようと思ったが、最近浪費が増えていてサブスク整理をしており、これ以上の出費はしたくないという思いが先行して、踏み留まってしまった。

 

しょうがないので、せめてさっき出力したレポートだけでも読んで、積読を処分してしまおうと思い、レポートを読み直そうとした。その前にどれだけ内容が定着しているかレポートの内容を思い出そうとしたが、5分くらい前に読んだはずなのに、何一つ内容が思い出せなかった。レポートを一読しただけで読んだ気になっていたが、全然頭に入っていなかったのだ。再読しても、目線が文字の上を上滑りしている感じがして、前提知識がないまま読んでいると、全く疑問点や深めたいところもなく、いわば「わからないところばかりだけどどう質問すれば良いかわからない」という状態に陥ってしまった。

 

「すぐに役立つ知識は、すぐに役に立たなくなる」

どこかで聞いた言葉が脳裏を掠めた。結局本文をちゃんと読み込んで、それから予備知識について検証したり、深めていかないといけないようだ。

 

「ちくしょう! 結局読まなきゃいけねえのかよ!」

 

俺は毒づきながら、読書ノートを開いた。そこでは、「まずは読んで、ドッグイヤーのついた箇所を記録し、内容について思考を展開する」ことが推奨されていた。俺は言われるがままに、半ばヤケクソで本の内容を速読し、ざっくり内容を見直して、内容をノートにまとめ、それから先ほどのレポートを見直した。

不思議なことに、さっきまで目の上を滑っていたレポートの文章が、今度は驚くほど頭に入ってきた。

「これは本のあの部分に対する批判なのか」「そういえば、別の本にも似た話があったな」と、次々に引っかかりが生まれる。
わからないことすらわからなかった状態から、自分でAIに聞きたいことが浮かぶ状態に変わっていた。

なんだかさっきよりも世界が広がった感じがして、他の本も読みたくなってきた。

 

よくよく読書会のアーカイブを視聴してみると、講師はAIと相談する前に、本の内容について明確に把握して話をしており、明らかに「事前に一通り目を通して」から話をしていた。結局、AIを使って読書するためには、自分で本のページをめくり、自分の頭を使って理解し、手を動かしてノートにまとめ、気になったことについてAIを使って深めていったり、他の知識と結びつけていかなければいけないのだろう。

 

そんなことを積読の山を眺めながら思った。

結局、AIで読書の楽しみを知ってしまったからには、積読タワーはさらに加速度的に増えていきそうだ。

 

《終わり》

 

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