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外国人アレルギーをなくす方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:YANG MIAO(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「日本語が上手ですね~」と言われて、がっかりしました。
心の中では「またか!」と思っていました。
 
「ところで、お名前は?」
「ヤンです」
「えっ?なにさんですか」
「ヤンです!」
「あれっ、日本人じゃなかったんですか!」
そして、10秒ぐらい沈黙が続きます。
 
それまでスムーズに進んでいた会話が、名前を聞かれてから急に空気が変わりました。
東洋人の顔をしている私は、初めて会う方とこのようなやりとりをするのが、10人中8人ぐらいです。
 
20kgを超える大きなリュックを背負って初めて成田空港に降りた時に、周りに飛び交う日本語がただのバックグランド音のように聞こえていました。まだ日本語が分からない私は、国際大都市の東京に来て、しばらくは英語で暮らそうと思っていました。
 
学校の寮に入って数日経ったある日、ドライヤーを買おうと、繁華街にある大型家電量販店に出かけました。
「いらっしゃいませ~!」ことばの意味はわかりませんが、あちらこちらに聞こえる店員の元気な声がとても心地よかったです。いたるところに商品がぎっしりと並べられ、どれを見たらいいのか、目線が歩くスピードに追いつきません。東京に着いたばかりの私にとって、活気づいた店内が賑わいがさらに買い物の楽しみを倍増させてくれました。
 
なんとなくウロウロしているようなに見えたのか、一人の若いお兄さん店員がニコニコして私に近寄ってきて、「ご案内しましょうか」とでも言ったのかな(その当時、私は店員の話が全くわかりませんでした)? ちょうど困っていたので、私はドライヤーを買いたいと英語でお兄さん店員に話をしました。そしたら、先までニコニコしていたお兄さんが急にびっくりして緊張した表情で「えーと、えーと……」とことばを詰まらせ、身振り手振りで待つように合図してくれました。どうしたのかなと私はその場で待つことにしました。
 
しばらくすると、お兄さん店員さんが中年の女性店員を連れてきました。私は先ほどと同じことを女性店員に伝えましたが、今度女性店員も笑顔が消え、急に落ち着きがなくなり、あちらこちらに目を配り、何を探し始めました。話していることが分かりませんが、店員の仕草でやっぱり待てと言われているようでした。
 
広い店内はたくさんの商品がぎっしりと並べられ、どこに何かがあるかが一目で見てとても見つからないような状況でした。しばらく待っていたが、二人の店員がなかなか戻ってきませんでした。私が欲しい商品を取りにいったの? 私の英語がおかしかった?! 何が起こったのか状況が読めませんでした。このまま待っていいかどうかもだんだん不安になり、仕方なく自分で探そうと思って売り場をウロウロし始めました。
 
その時ようやく二人の店員が戻ってきて、なんと、さらにもう一人の店員を連れてきました。「えっ、また人が増えた?!」と思わずびっくりしてしまいました。
3人目の店員が来てようやくドライヤーを買いたいことを理解してくれて売り場まで連れてもらい、私の初めての買い物がこんな予想外の騒ぎの中で終わりました。
 
この買い物では、日本語を学ばなくちゃ生活できないことを悟られました。
 
あの頃からあっという間に19年が経ちました。その間、大学で学び、企業で仕事し、今は独立して事業をしています。生活はもちろん、仕事においても日本語で苦労することがなくなり、自分から名前を言うまで、外国人だと気づかれないことがほとんどでした。
 
アレルギーとは、簡単に言えば過剰反応です。ことばから見えてくる外国人アレルギーは様々のようです。京都で生まれ育ったフランス人と日本人の両親を持つ友達がいます。彼は見た目が西洋人なので、京都弁で話すと一芸のように周りを沸かすことができます。でも、彼もいつも日本語上手ですねと言われることにうんざりしているようです。また、同じ小学校に通うハーフの子と遊ぶときは、ほかのママたちがなぜか普段全く使わない英語でその子に話しかけたりします。それに、外国人から日本語で質問してきたのに、わざわざ英語で返す人もよく見かけますよね。
 
最近、女性の活躍が進む中、妊娠した社員への「マタニティハラスメント」が注目されるようになりました。例えば、女性社員から妊娠の報告を受け、多くの上司が発した第一声が「えっ、うそ!」だそうです。もちろんほとんどの上司は悪意がなく、単なる驚きを表した一言だと思いますが、しかし、そう言われた女性社員が嫌な気持ちをしている人がとても多いという。対策としては、心の中で「うそ!」と驚いても、口に出すことばは必ず「おめでとう」にしてくださいというアドバイスでした。
 
マタハラ対策と外国人に対する反応は無関係に見えますが、第一反応を少し変えることで、相手が受け取るメッセージがまるで違うという点では共通しています。
 
皆さんはロンドンやニューヨークに行っても、どこの人であろうといちいち英語が上手ですねなんていうことを話題にしませんよね。ことばは文化の違いを感じさせる大きなものではありますが、それに反応しないことが外国人アレルギーをなくすいい方法だと思います。「日本語」をほめる代わりに、もっと近所の人と話すように共通の話題を見つけてみたらいかがでしょう。
 
善意でほめてくれるのがわかりますが、しかし、もう「日本語上手ですね」と言われない日がきたら、東京が本当の国際都市になったのかもしれません。

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2018-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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