メディアグランプリ

ヒーローに質問をしてはいけない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:羽衣姫 香耶(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「好きな人にどうアプローチしていいか分からないんです」
 
カウンセラーという生業をしていると、そんな相談を受けることもある。
「来週の都合の良い日はいつですか? ってメールで聞いても、『まだ予定がはっきりしません』とか言われちゃうんですよ。なんだか、いつもそんな感じで……」
と不安そうに語る相談者さん。
でも、話を聞いているとなんとなく「ああ……そのアプローチだと、その反応が返ってきちゃうんだなぁ」ということが分かってくる。
「いつもそんな感じで、彼に都合を聞くんですか?」
私がそう聞くと
「そうですね。なるべく彼の負担になりたくないので」
という答えが返ってくる。
うん、そうだよね。普通、そう思うからそのような文面になっちゃうよね。その気持ちはよく分かる! 分かるんだが……
 
そんな時に彼女の携帯が鳴る。
「あ、ちょっとすみません。電話が……」
と、嬉しそうに携帯を取り出すのだが、画面を見た途端に彼女の眉根が寄ったところを見ると、意中の彼からの電話ではないことは察することができる。
「もう! 今週の土曜日はダメ。都合が悪いんだってば! 来週の日曜日にして!」
彼女は電話に出るなり不機嫌そうに返事をすると、言いたいことだけを言って携帯を切り、「すみません」と頭を下げた。
「彼からの連絡ではなさそうですね」
私が苦笑すると
「ああ、男友達からです。今週は都合悪いって言ってるのに飲みに行こうとか言うもんだから。こいつからの連絡を待ってるわけじゃないんですけどね~」
と、こちらも苦笑する相談者さん。
その姿を見て、嫌な予感がしたので質問してみる。
「あの……いつも男友達にはそんな感じで『こうして! ああして!』って口調で話をしてますか?」
「ええ。あ、でも、こいつはいわゆる、くされ縁みたいなものなので、こういう口調でも全然大丈夫ですよ。はっきり言ってもお互い全然、凹む仲じゃないし」
自分の電話の口調がきつかったので、それを咎められたように勘違いしたのか、彼女はこれっくらい平気ですよ。と言いたげなのだが私が気になるのはそこではない。
「あの……やってることが……恐らく、彼と男友達と、逆です」
「は?」
私の言葉を聞いてビックリ顔の相談者さん。
うん。普通はその反応になるよね。分かる。分かるけど、逆なんだな~。残念ながら。
 
「え? 彼にこんなぞんざいな態度とか、とれないですよ!」
と彼女は「無理! 無理! 無理!!」と言わんばかりに首を振る。
まぁ、確かにさっきみたいな横柄な態度を意中の彼にしろというのは無理な話だろう。
けれど、私が言いたいのは、態度の話ではなく、文章の問題だ。
 
普通、女子は気になる彼には、つい質問文で会話を組み立ててしまう。
どんな物が好きですか? どんな映画が好きですか? 都合あいてますか? いつがいいですか?
好きな人だもん。失礼な態度をとって嫌われたくないし、相手の負担にもなりたくない。だから、なるべく相手が居心地の良いようにあれこれ質問してしまう。
ところが気のおける男友達となると、気遣いなんてどこかに追いやって、あのお店へ行こう。あの映画が見たい。来週だったら空いてるから。日曜日はダメだから金曜日にして。
そんな風に断定的な物の言い方をする。
それはまるで「私の都合に合わせろよ」と言っているようにも聞こえる。
だから、好きになってほしい人にはそんな物の言い方はしない。
 
けれどこれが逆なのである。
 
男性は実は断定的な物の言い方をされた方が心地いいのだ。なぜならば男性は、昔々、狩りをする時にいちいちお伺いを立てて会話をしないからだ。
命をかけて狩りをしている時、彼らは
「後ろに回れ!」「ここで待て!」「左右からはさみうちにするぞ!」
というように、全て命令形で会話するのである。
なので、潜在意識として、断定的な物の言い方をされた方が、判断が楽なのだ。
予定を決める時にも「いつ空いてますか?」と聞かれると「あ~、来週の予定がまだ出ていないしな~、もうちょっと待ってみないと何とも返事の仕様がないよな……」と連絡が遠のくのである。
ところが女性側が「来週の日曜日にこの映画を見に行きましょう!」と誘うと、「来週の日曜日は都合が悪いけど、土曜日なら」と代替案を出し易いのだ。
 
なので、男性を誘いたい場合「○○に行きませんか?」と誘うよりは「ここが楽しそうのなので、是非一緒に行きたいです」と誘った方が、相手にとっては心地よいのだ。
 
考えてみて欲しい。ヒーローものの映画などで、ヒロインはヒーローに対して
「今お時間あるかしら? 助けてもらえる?」
とは聞かない。
ヒーローの事情など全くおかまいなしに
「助けて!」
とこちらの要望だけ伝えているのである。
逆にヒーローの方が
「お嬢さん、何か困っていることはないかい?」
と聞いてくるではないか。
 
自分がヒーローになりたい場合は、相手に質問するのはとても効果的だ。
だが、ヒーローの彼とおつきあいをしたいなら、彼に質問を投げかけるよりも「私はあなたとここへ行きたい」とか「私はあなたとご飯が食べたい」とはっきり要望を伝える方が、話がスムーズに進むのである。
 
ヒーローに質問をしてはいけない。
ヒーローはいつだって、言い切りで頼むことが、もっとも彼を輝かせてあげられるのである。
 
この話をし終わった時には、相談者さんは言い切り型の文章でメールを送り直していたので、彼女の元に気になる彼からの連絡が来るのも、そう遠い話ではないだろう。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/54525

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事