転落人生から始まる自分再設計
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:ココアラテ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「あれからもう3年経つのか……」ふと、パソコンのキーボードから手を離しコーヒーを飲みながら呟いた。
3年前、ボクはうつ病になってしまった。本当に悪夢だった。もう回復は見込めないとして退職を勧告された。人生で初めて、無職となった……あの時の喪失感と言ったら言葉に出来ないものだった。正直、自分の人生を恨み、自暴自棄になって毎日を悲観しながら過ごしていた。週刊誌等に掲載されている転落人生の典型だった。的なパターンだと思う。そんなどうしようもない時に、ボクをまた再起動させてくれる出来事があった。
「今度ボクの講演会に来ませんか」ボクとほぼ同期のI君からだった。I君は勤務先で疲弊する事の馬鹿らしさに早々と気付き半年で退職して、起業している若手実業家である。そんな順風満帆な彼からの思いもよらないお誘いのLINEだった。ボクはそんな成功している彼が羨ましくも妬みも正直感じていた。そんな二律背反的な感情を持ちながらも特に予定が無い為、「行きます!」と非常に短いメッセージを送った。
「眩し過ぎる ボクには場違いだったかな……」講演会の会場に来られている参加者の方々の表情の明るさを感じ、ボクは思わず講演会に参加した事を後悔した。
「やっぱりボクみたいな失敗者が来る所では無い もう帰ろう……」玄関の方に向きを変えた瞬間、「ココアラテさん お越し頂きありがとうございます」満面の笑顔でそれもとびっきり大きな声でI君に挨拶をされた。
「これでは帰れないな……」ボクは心の中で呟いた。しばらくI君と談笑し、講演会の時間となった。
I君は、今までの自分自身の経歴や仕事での体験等の話しをしばらく続けていた。そして中盤ぐらいに、実はI君もメンタルを病んでいたとの事。そして何もかも上手くいかなくなり転落していく。反対に周囲の人間達は成功していく。その現実を見て泣き崩れてしまったと涙ぐみながら話しをされた。
その話しを聴きながらボクも涙が溢れていた。I君の気持ちを痛いほど共感出来るからだ。しかし、ここでI君とボクとの間で決定的な違いがあった。
「私は泣き崩れて涙が枯れた時に思ったのです この人生をどうすれば回復や新規まき直しが出来るかを……」涙で顔をぐちゃぐちゃにし、声にもならないぐらいの声でI君は一生懸命に話しをされた。もう会場中の全員が泣いていた。
「絶望な時にこそ勉強をするのです これだけは誰にも負けないものを身につけるのです」このシンプルな言葉が失意のどん底にいたボクの心に火をつけてくれた。
ここからがボクの新規まき直しが始まった。I君の講演会後、なんと奇跡的にうつ病の症状が緩和されてきた。もう回復は見込めないと思われていたのに……
しかし、ボクの再起動は順調とは言えなかった。就職活動に苦戦した。今までは簡単に転職先を見つけてきたボクには信じられないものだった。
10社受けて筆記試験は受かるけど、面接で全滅。やっぱりうつ病になった人間には再チャレンジは許されていないのか……と諦めかけていた時にI君から「会計系の資格の勉強が重宝されますよ」と言われたのを思い出し、それに望みを託すかのように学生の頃に戻ったみたいに死に物狂いで簿記の勉強を行った。問題を解く度に自分の人生を回復させると言い聞かせ一心不乱に1ヶ月学習を続け、簿記検定初級に合格したのを皮切りに小さい事務所の会計見習いとして社会復帰を果たす事が出来た。これがゴールでは無い。自分はこの会計という仕事を一生の仕事にしていこうと決意し11月の本試験に向けて学習を継続している。人生転落したからこそ、自分を再設計する楽しみを感じられるのだと思う。
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