家をオフィス化する
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:縞隈 千代子(ライティング・ゼミ平日コース)
みつからない! ほんとにみつからない!
かれこれ探しものをはじめて3時間。たったひとつのものを探すのにまだ見つからない。部屋の中はぐちゃぐちゃだ。
本、書類、領収書。同じようなペンがいくつも。こんなもんがよく押入れのみならず、棚の引き出しにはいっていたなぁ、と驚くばかり。
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結婚してはや10年。いや、夫婦間で「お互いがお互いのことを口出ししない」が暗黙の了解となってはや10年だ。家具を共通で使っているものの、それぞれのエリアの棚や押し入れの領域は治外法権。なにが入っているかはわからない。
去年話題になった契約婚ではないのだが、それに近い「独立」に近い生活をしてきた。つまり、わが家は合衆国政治。
かといって、それぞれの実家と交流がないというわけではない。お互いの独立を認めるならば、お互いを尊重することも大事なこと。夫の実家にいったときも、わたしはのびのびと義母とお酒を楽しみ、麻雀の勝ち負けで地団駄を踏むような状態だ。
このような話をすると、「理想的だわー」と言われることが多い。
でも、わたしはこの生活は間違っていたのではないかと、探し物をしながら思っていた。
なぜか? それは、あまりにも夫に対して構わなすぎたような気がしているからだ。
このモノ探しは、夫の急な入院で発生したこと。看護師に渡された入院生活リストを元に、鉄板のパジャマやメガネ、歯ブラシ、スリッパなどを夫の棚からひっぱり出した。
さらに今回はもうひとつのものを持っていこうとしていた。それは、wifiルーター。病院からは「wifi設備は病院にありませんが、ご自身のを使っても大丈夫ですよ」と話を聞いたので、夫から持ってきてほしいとリクエストがあった。
そのためのルーターはどこにある?
「部屋の右側にあるチェストのひきだしか、左側にあるチェストの上にある箱の中のどっちかにあると思うよ」がヒント。
まあ簡単に見つかるだろう、と甘く見ていた私がいけなかった。
ガサガサ。ない。ガサガサガ。あれ? 言われた棚にはないぞ。どこだ?
一応共有棚の引き出しの中をひっくりかえす。これは思った以上の作業で、大掃除というより引っ越しに近い感じになった。中身をひとつひとつ検品していく。「これNINTENDO-DS」「これは使っていないバッテリーチャージャー」ああ、引っ越しというよりも、突然現れた遺跡の調査に似ている。一つ一つを確認しなければならない。
それでもWifi ルーターは見つからない。
私の一人遺跡調査は押入れに突入した。今度は夫のエリアだけではない、私のエリアもだ。そこにあるのは、スーパーマリオの着ぐるみだったり、イカのかぶりもの……。なんと、わたしの黒歴史まで発掘してしまっている。
その結果。Wifiルーターは私のエリアで見つかった。カンフー映画「燃えよドラゴン」をフィーチャリングした肩もみ器と一緒に箱にはいっていた。
なぜ!? と何度も叫んでしまった。でも、よくよく思いだすと、夫からルーターを借りて、あたしがそこにいれていたのだった。
見つかったはいいが、あたり一面ひっくり返したあとだ。これを片付けなければならなのか? と思うとトホホモードだった。
でも。そもそもこんなトホホホモードにならなければいけなかったのはなぜだろう? それはわたしたちの生活が10年たっても「共同」になっていなかったからだ。「お互いを尊重する」「お互いを侵犯しない」その言葉に隠れて、知らなければいけなかったこと、知らせなければいけなかったことを伝えあっていなかったのだ。
もし、もっとお互いがわかりやすいようにものをおいていれば。
わたしのモノ探しも早く終わっただろう。
もし、もっとお互いがおせっかいをやいていたら。
夫は倒れなかったのかもしれない。
もしも。もしも。
そんな言葉が繰り返されると、夫が入院してしまったのも、わたしにも責任があるのだとずっしり重みを感じる。
かといって、入院中の夫に「ごめんなさい」と謝ってもすぐによくなるわけではない。わたしは夫がいない間に家を快適なオフィス化しよう! と決めた。
快適なオフィスは、居心地の良さと仕事の効率性に優れている。今の住居には住み慣れているので、居心地の良さはあるだろう。足りないものはただひとつ。「だれにとっても使いやすいか」という視点だ。
そこで手を出したのが、テプラを代表とするラベルライター。
多くの人が、ラベルライターはオフィス用と思っているだろう。でも、フォントの種類も多く、ラベルも透明なものを選べば、「ガチガチのオフィス感」は弱められる。
なので、とりあえずはわたしのルールでものをまとめ、棚を整理した。
棚の扉や引き出しに「コピー用紙」「携帯ケーブル」などバンバン貼った。
マスキングテープのラベルを使ったので、夫がわかりにくいと言えば置き場所の移動も、ラベルの張替えも簡単だ。
すべての作業にトータルで10時間はかかったのだろう。でも、前よりはどこに何があるのか? が簡単にわかるようになった。
それだけではない、わたしもつい「どこかにおいてわからなくなった」というのもなくなった。所定の場所がすぐにわかり、そこの戻すようになったからだ。
「オフィス」で長く働いていたから、その形になれてしまったからこそなのかもしれない。
オフィスみたいな家でも、より快適で過ごしやすい生活ができるのならいいではないか! と今は思う。退院した夫も「どこになにがあるかわかりやすくなった!」と大喜びしているしね。
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