ハレー彗星よりもラグビー
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ特講」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:加藤 しのぶ(ライティング・ゼミ特講)
先日、100万円の支払いをした。
買ったのは、2019年日本で開催されるラグビーワールドカップのチケット。今年に入って始まったチケットの先行抽選にダメ元で山ほど応募したら、どうしたことかほとんど当たってしまい、総額が100万円になってしまったのだ。
こういうと当選率が高いように聞こえるけれど、私の周りでは10試合応募して2試合しか当たらなかったとか、そんな話ばかりなので、私の当選率は異常なのだ。
もうこれは神様からの観に行けという指令なのだと思っている。そもそも私がラグビーを好きになったきっかけは、第一回のワールドカップだったのだし。
第一回大会が開催されたのは、1987年。
あのハレー彗星が地球に最接近した翌年のこと。ハレー彗星の方は、生で観られるのは75.3年に1度ということで世界中が大騒ぎしていたので覚えている人多いだろう。
でも、ラグビーのワールドカップはを覚えている人、少ないんだろうなあ。
我が家は逆で、ハレー彗星を話題にする人は誰もいないかわりに、第一回大会のことは思い出話の常連だ。
うちの父親は大のラグビー好き。国内外あらゆるラグビーをチェックし、本棚にはラグビー関連の書籍がずらり、毎年の早明戦や日本選手権は家族で強制視聴だ。
だから第一回大会も、もちろん強制視聴。中学生だった私はその頃まではあまりラグビーに興味がなく、大好きなお父さんに付き合ってあげる、といった気持ちが大きかった。
そんな私にガツンと衝撃を与えたのは決勝戦だ。
ニュージーランド対フランス。ニュージーランド、強かった。
あまりに強くて延々フランス側の陣地で試合をしているから、人のいない反対側のフィールドではカモメの群れが芝に降りてきてくつろいでいたという、衝撃的、かつ、ちょっぴり牧歌的な光景が繰り広げられていた。
当時はルールも何もわからなかったけど、どれだけニュージーランドが強いか、この映像だけで十分わかった。そんなに強い何かを、私は見たことがなかった。でも物凄く強いのに、なかなか得点は入らない。フランスだって押されながらも、粘りに粘って守っていたのだ。
なんだかスゴイ! わけわかんないけど、ラグビー面白い!
そうやって私をラグビーの世界に引き込んだワールドカップが、九回目にして遂に日本で開催する。これは、何が何でも見なければならない。
なぜなら、次にハレー彗星が来る頃まで、日本で再び開催されることはまずないだろうから、唯一無二のチャンスなのだ。
そもそも、日本で開催されることが決まった時に、私は冗談かと思ったくらい。ワールドカップはティア1の国でやるものでしょ、と当たり前のように思っていたし。
「ティア1」というのは、ラグビーの伝統がありかつ伝統的に強くて格式が高い国のことで、ランキングとは別物。全部で十か国あるけど、実は明確な定義はない。そもそも格式なんて数値化できるわけがない!
確かに実際に強い国が多いので、世界ランキング10位内はほぼティア1で占められているけど、11位以下のティア1国もある。なのに色々なところで、例えば対戦相手とか試合日程とかでティア1の国がものすごく優遇されている。
日本は格下の「ティア2」にカテゴライズされていて、ティア1とはなかなか対戦が組んでもらえない。今年はイタリア、ニュージーランド、イングランドと3つのティア1と試合が組まれているが、戦う選手は別として、日本の側からすると「対戦してくれてありがとう!」とつい思ってしまう。ラグビーの世界は階級社会なのだ。
そんなティア1の間で開催され続けてきたのが、これまでワールドカップ。
過去8回行われているが、開催国はすべてティア1。複数国による共同開催もあるので、既に2回開催している国も五か国ある。2023年の開催国フランスなんて3回目。もちろん、フランスもティア1。
そんな中で、どうして日本が招致に成功したのかはよく知らない。ラグビーが盛んでないアジア圏へのラグビー普及のためとか何とか……。
そういうまぐれ当たりのような環境で開催が決まったワールドカップが、次また日本で行われるかというと、はなはだ疑問だ。
ティア1の中でもまだ招致に成功していない国もある。「フランスが3回やるならうちだって!」というほかのティア1国も出てくるだろう。
逆に日本で開催されたことに力を得て、他のティア2の国が招致に動く可能性もある。そうなると、日本では一度やったから他の地域からだよね、と、妙に公平さを打ち出したりしかねない。
……などと、うだうだ計算していると、ざっと40~50年は日本開催がありそうな気がしない。
次にハレー彗星が地球にやってくるのは2061年だ。
その頃には第19回大会が終わっていて、私は生きていたら90歳近くになっている。例え第20回大会が日本開催になったとしても、スタジアムまで観に行くことは難しい。でも、ハレー彗星なら空を見上げればOKだ。
どうやらハレー彗星の方が、2度見る確率が高そうだ。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/54525
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。