「努力は裏切る」という言葉に救われた話。
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記事:二平 燎平 (ライティング・ゼミ平日コース)
「努力はカンタンに人を裏切る……」
この言葉にどれだけ僕は救われたことか。高校時代の野球部の監督から教わった言葉。僕自身、高校に入るまで努力に裏切られ続けていたのだから……
僕は小学校から野球をはじめている。自分で言うのもなんだか、結構マジメなタイプでほぼ毎日、バッティングが上達するように野球部の練習が終わったあと、自宅に帰ってから自主練で素振りをしていた。あまり記憶にはないが100スイングくらいしていたと思う。
毎日素振りを頑張っていた僕だったが、悩みがあった。それは、素振りを沢山してもバッティングが上達をしないということ。
自主練して努力をしているけど、打てるようにならない。そんなモヤモヤを抱えながら中学時代は、野球を行なっていた。
幸いにも僕は、足が速く、それを買われて高校は野球推薦で入学することができた。
そして僕が入学した野球部は正直言って「弱小高校」だった。昨年の夏の大会は一回戦負けだ。しかし、僕が入った年から少し体制が変わった。甲子園に何度も出場経験のある監督が指導をするようになったのだ。
その監督が教える野球は「インサイドベースボール」だった。つまり、頭を使って野球をするということだ。
例えば、打者であれば、相手ピッチャーの投げる球種を読み、狙い撃ちする。
守備の場面であれば、相手の打者の癖を見抜き、打球が飛んでくる場所を予想する。対戦相手のデータを活用する。
その他にも上げればキリがないが、データ見たり、相手の動きを先読みしたりして、頭を使ってプレーをするという野球スタイルである。プロ野球で有名なところだと、楽天などで監督を努めた野村監督がID野球と称して行なっていた。
当日の僕からすると新鮮な野球スタイルであった。
監督からは徹底的に頭を使って野球をやれということを僕は教わった。様々なことをその監督から僕は学んだが、その中でも一番衝撃的だったのが、
「努力は人を裏切る」
という教えだった。
世間一般の人は「努力は裏切らない」や「努力は必ず報われる」という言葉を使う中で全く正反対の言葉に、当時の僕は聞いた当初は、驚きを隠せなかった。
監督がよく言っていたのは、
「努力は裏切る。だから何が正しいのかを考えながら行動しろ」
わかりやすく、大げさに表現すると、野球選手になりたいのに、サッカーの練習をしても意味がなく、目的に沿った、正しい努力を積み重ねることに意味があるということだった。つまり、間違った努力をしていても意味がないということ。
中学までの僕は、目的を持たずに、ただバットを100回振る。そんな自主練しか行なっていなかった。ただただ、バットを100回降る。それだけでは上達しないのも当たり前だった。
なぜなら、自分自身がバッティングをしていて、どこがうまく行っていなくて、何を改善すればいいのかわからず、素振りしていたのである。改善点がわからないまま行う努力は意味がなく、まさに、僕は努力に裏切られていた。考えないで行なっていた自業自得である。
高校に入って、努力は裏切るという言葉を聞いてから、自分自身のバッティングをする上での悪い癖を意識し素振りをするようになった。ピッチャーが投げてくるのをイメージして素振りをするようになった。
さらに、どうすれば自分はレギュラーになれるのか?常に考えながら野球をするようになった。僕の強みは足が速いことだったから足を活かしたプレーを練習するようになった。そのおかげで高校3年時にはレギュラーになることもできた。
今思うと高校3年間、常に頭を使いながら野球を行なっていて、考える習慣がかなり身についたと思う。
お陰様で「努力は裏切る」という教えは、社会人になった今でも生きている。
ただ仕事をするだけではなく、どうしたら効率よく成果が出せる?お客様が喜んでくれるのか? 営業がうまくなれるのか?このように、考えながら行動をするようになったし、正しい努力を積み重ねようという意識が根付いている。
「努力は裏切る」
あの教えがなかったら、今でも何も考えずにただ、量を積み重ねるだけの努力しかやらなかったかもしれない。
監督が教えてくれた、考えて、目的と合致する正しい努力を積み重ねる。
毎年9月の終わり頃。高校時代の監督の命日近くになると思い出す言葉。
「努力は裏切られる」この言葉に、僕は人生が救われたのかもしれない。
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