メディアグランプリ

国語の授業で居眠りしていた人は、読書にドハマりするかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:坂田光太郎(ライティングゼミ 平日コース)
 
「まじかよ」と私は、大きいため息を漏らした。
誰しも経験がある購入ミスはじめて犯したのは忘れもしない高1の夏であった。
マンガを買ったと思ったのだが、小説を買ってしまったのだ。
よりによって小説を買うとは。と言うのは私は小説が嫌いだった。
字が縦に整列している書物を見ると拒否反応をおこすのだ。
マンガをまた買いに書店に行くか、とも考えたがお金がなかった当時の私はマンガの購入は諦めるしかなかった。
金なし暇人だった私はためしに飽きることを覚悟してその小説を読み始めた。
すると最初こそ、読む手が止まりかかったがあるページから不思議な感覚になった。ページが進む、活字から舞台の描写と主人公の心情が見える、物語の続きが気になる。そして私は「面白い、この小説」と呟き、取り憑かれたように読み進めた。
それが、私と小説の最初の出会いだった。
 
それから小説好きになるまで時間はかからなかった。
通学、休み時間、時々授業中に、小説を読み進めた。
その小説は青春ものだったお陰もあり、内容に共感しやすく、驚くほどすらすら読めた。
すっかり小説の魅力にはまった私は、面白そうで、読みやすい小説を手当たり次第読んだ。特に、伊坂幸太郎作品にはさんざんお世話になった。
 
しかし、ここであるひとつの疑問が浮かぶ。なぜこんなにハマった読書を拒み続けたのだろう。なぜ本を読んでこなかったのだろう。
その疑問を、ある先生の一言が解決してくれた。
ある日の休み時間、私は小説を読みながら、隣の席でマンガを読んでいた友人と他愛のない会話をしながら過ごしていた。
「お、伊坂を読んでいるのか」
そんな時、一人の先生が私に声をかけてきた。
先生も伊坂幸太郎作品が好きだったらしく、オススメの作品を教えてくれた。
一通り話が盛り上がったあと、先生は隣の友達を見て「お前も、マンガばかり読んでないで、小説も読めよ」と言い去って行った。
本にあまり触れてこなかった人は、言われたことがあるのではないだろうか。
「本を読め」、「本を読んだら頭が良くなる」、「マンガばかり読むな」
言われすぎて気にもしなかったが、本好きになったその時、先生の一言は心に引っかかった。
私は小説を読んでいる。友人はマンガを読んでいる。どちらも本を読んでいる。
もっと言えばどちらも紙の中で繰り広げられているエンターテイメントを楽しんでいる。でも友人だけ怒られた。なぜだろう。
その時、ある事に気づいた。
私は無意識に、小説をエンターテイメントと捉えていたのだ。
小説がエンターテイメントなんて当たり前の話かもしれないが
読書嫌いにとって、小説はエンターテイメントのカテゴリーではない。
「エンターテイメント」より、「勉強」という意識が強い。
小学校の時、授業の一環で図書室で児童文学を読む時間があった。
読書の習慣がある子は楽な時間だが、私にとって読書の時間は苦痛な時間だった。
国語の授業では名作と呼ばれた物語を持ち寄り、黒板で作者の伝えたかったことや、文法などをこと細く教師が説明している。
後のテストの設問1には「物語の主人公の気持ちを読み取りなさい」とあり、100点満点で採点される。読書を苦痛としていた私が読解能力が高いわけもなく、低い点数を連発していた。母にテストを見せるともちろん怒られた。
そんな蓄積のせいで「本を読むことは勉強」と思い込んでしまっていた。
無意識に読書は勉強なのだと思い込んでしまったのだ。
中学に上がっても読書のイメージが変わるわけでもなかった。
中学も国語の時間に読書はあったが寝て過ごしていた。
本を読むことは勉強である、その意識が強くなれば強くなるほど、私は本から遠ざかって行った。
エンターテイメントは圧力をかけられるものではない。
自分の意思が「読みたい」と思うのがエンターテイメントである。
もしかしたら、「本を読みなさい」と言うたび本が遠い存在になるのかもしれない。
苦手意識と言うのはなかなか払拭するのが難しい。それは本に限ったことではない。
私は勉強が苦手だと思っていた。
だから、資格や検定というものを20歳まで取得してこなかった。
資格の勉強をしても合格しないだろう、勉強しても苦痛だろうと思っていた。
しかし、ある資格の勉強していくうちに、不思議な感覚になった。
大変だけど勉強が楽しいと思い始めたのだ。その経験を機に私は簿記取得の勉強や、システムの勉強など自分の得意とする分野の勉強をはじめた。
私は勉強が苦手ではなかったのだ。
 
勉強が苦手なのではなく、学校で教える勉強が苦手だったのだ。
 
国語が苦手でも、読書は好きであるし、学校の勉強が嫌いでも、得意な資格は取得してきた。
それは、本がエンターテイメントと知り、勉強が嫌いな人は1人もいないと知ったからだ。
苦手意識を払拭するのはむずかしい。
でも、なにも考えずに苦手なものに手をつけてみたら意外にハマってしまうかもしれない。
 
ちなみに国語の授業中、居眠していた私は、今、文章を書くことに大ハマり中だ。
 
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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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