ハロウィンというリトマス試験紙
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記事:ぱぐお(ライティング・ゼミ特講)
10月になると街がオレンジ色になる。そしてその月末には、街中で仮装をしている人を見かけるようになった。ハロウィンだ。
数年前まで多くの人にとって触れることのなかったハロウィンが、今や多くの人が楽しむイベントの1つとなっている。
そんな街並みや楽しんでいる人たちを、私は冷めた目で見ている。
そう、私は昔からそんな街や仲間たちの盛り上がりをいつも冷めて見ている。
それは子供の頃からそうだった。
運動会や文化祭、修学旅行、そんなクラスが盛り上がる時、私一人はなんとなく冷めていた。楽しくないわけではない、ただテンション高く騒いだり、盛り上がったりはしない。というよりも、できないといった感じだ。周りのテンションが上がれば上がるほど、私は冷めていく。
そんな冷めた子どもはそのまま大人になってしまった。大人になるとこの冷めた性格はかなりやっかいである。盛り上がることを必要とされる場面が増えてくるのである。
学生時代や社会人になってからの飲み会、カラオケ、合コン。そしてクリスマスやカウントダウンイベントと。さすがに大人になると冷めてばかりはいられない。そうなるとどうにかしてその場を乗り切る術が必要となってくる。例えば気配を消したり、楽しんでいる振りをしたりと、頻繁にトイレに行ってみたり。そんなスキルを身につけることで、なんとかその場を乗り切っていくことになる。
こういったある特定の人たちが集まる場では、身につけたスキルを駆使してやり過ごすことも上手くなってきた。しかし、他にもまだ悩ませるものがある。
それは社会全体を巻き込むブームやムーブメントのようなものだ。
例えばSNS、ポケモンGO、恵方巻、そしてハロウィンと。「こんな楽しいものがありますよ」と、次から次に新しいものがやってきて、多くの人たちがそれを楽しむ。そんな新しいものを上手に楽しんでいる人たちを横目に、やはり私は冷めている。
世の中には楽しめる場面はたくさんある。次から次に新しいものが創り出されていく。そして、そのたびにそれを楽しむことができるかどうかを試されているように感じてしまう。
そう、まるでそれら1つ1つを楽しむことができるかをリトマス試験紙で試験されているように。
様々な場や新しいものを上手に楽しめる人は「陽性」、それを楽しめない人は「陰性」といった感じだ。「陽性」が多い人はより楽しみながら人生を送ることができ、「陰性」が多い人は充実した人生を送ることができないといったように。もちろん冷めている私は「陰性」だらけだ。
そんな冷めた目を持つことになった原因は何だろうか?
まず思いつくのが家庭環境。
子ども頃、家庭内でイベントを楽しんだり、またはそんな場に出かけて楽しんだりという習慣はなかった。父の性格からしてイベントごとを楽しむタイプではなく、母もそんな父と息子2人では、家でクリスマスパーティーをやろうなんていう気も起きなかったのだろう。そんな家庭環境だったため、たまに友達のお誕生日会やクリスマス会にお呼ばれすることがあると、何をどうすればいいのか分からずに、時間がただ過ぎるのをひたすら待つだけだった。
もう一つは性格的なもの。
そもそも子どもの頃からへそ曲がりなところがあった。授業中、自分一人だけ意見が違うとちょっと嬉しかったりした。休み時間、みんなが楽しんでいるドッチボールやサッカーに目もくれず、友だちと二人で校庭にある無数のマンホールの蓋をひたすら開けたりしていた。なぜか人と同じことを考える、同じことをするということをなんとなく面白くないと感じていたようだ。
そんな性格はもちろん大人になっても変わることはない。そうするとみんなが楽しんでいるものには手を出したくないといった心境になる。例えば「流行りもの」に対しては、どこか商業的な臭いを感じ取ってみたり、みんな使っている・そうしているといった同調圧力的なものには屈しないと勝手に思ったりしてしまう。
今もそんな冷めた目で世間を見ているが、少しずつではあるが心境の変化がある。それは様々な場や新しいものを上手に楽しんでいる「陽性」の人たちを、羨ましいと感じることも増えてきたのだ。あんな風に自分も楽しむことができたらいいのにと。やはり楽しむ時に、しっかりと楽しめる人生というは素敵だなと感じる。
とはいえ、簡単に変わることができるわけもない。ただ将来のことを考えると、このままでは偏屈な老人になりそうなので、もうちょっと「陽性」を増やしていこうかと考えている。
そんなことを考えていると、ハロウィンを終えた街はオレンジではなくなり、クリスマスソングが流れ始めた。
そうやってまた新しいリトマス試験紙を渡されるのである。あなたは「陽性」か「陰性」かと。
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