探し物は盲点をさがそう
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:しゅん(ライティング・ゼミ平日コース)
「鍵がないー!」
「だから、使ったらすぐにカバンの中にしまいなさいって言ってるでしょうが!」
「でも、いつもの机の上の場所に置いたんだもん!」
朝、学校へ出かける前の娘と母親のやりとりだ。
いつも使ったらすぐに元あった場所に戻せって言ってるんだけど、どうにも娘さんには響かない感じだ。
同じようなやりとりを何回も繰り返す。
「鍵がないー!」
時間もないし、怒られるしでテンパる娘さん。
いつもは喧嘩ばかりの妹が助け舟を出す。
「お姉ちゃん。私の鍵使っていいよ。今日は私使わないから」
優しい! さすが姉妹。
**
次の日の土曜日。ふと聞いてみる。
「そういえば鍵あったの?」
「まだない。でも見つかる気がしない……」
「でも、鍵だからなー。なくしましたって言われてすぐにいいよとは言えないよね。ちゃんと探しなよ」
「はーい」
机の上も下も整理整頓されているタイプではない。
荷物をひっくり返しながら探す。探す。探す。
1時間くらい経ってから聞いてみる。
「どう? 見つかった?」
「見つからない。絶対見つからない気がする」
基本ネガティブ思考だ。
「いやいや、鍵開けて入ったんだから机の上か下にしかないでしょ?」
「もしかしたら片付けた時に他のごみと一緒に捨てちゃったかもしれない……」
「さすがに鍵は気づくでしょ。それにないないと思ってたら本当に見つからないよ? あるある、と思って探してみなよ」
「でも、絶対見つからない気がする……」
なかなか頑固ものだ。
さらに1時間後。お昼ごはんのため探し物も中断。
これまで手を出さないでいたものの、この机の上と下のスペースでそんなに見つからないものか? と逆に興味がわいてきた。お昼ごはん食べてる間だけでも探してみようかな、
こんな時、自分ならどこから探すか?
まずは基本に立ち返って本来あるべき場所から探すかな。
今回で言えば、いつも入れてるカバンのポケットかな。
一応、年頃の娘のカバンなので声を掛ける。
「カバンの中見てもいい?」
「プライバシーの侵害だー! 何回も見たし」
言うことだけは一人前だ。
とりあえずカバンの外からポケットの辺りを触ってみる。
あれ? この形は?
ごはんを中断して近づいてきた娘に、聞く。
「この形って、鍵についてるキーホルダーじゃない?」
「えっ……ほんとだ! あった!」
絶望的な気分だったのが、ほっとしたのか、娘さんのほほを大粒の涙がつたう
「良かったねぇ」
心の中で、お父さんすごい! と自画自賛しながら、安堵の涙を流す娘に声を掛ける。
「もしかしたら、前の日に机の上で見つけてカバンの中に入れたのかも……?」
「ないかもと思うところも念のために探すのがコツだよ」
「ふーん」
あまり興味がないらしい。これはまた次回もありそうだ。懲りないな。
そういえば、誰に教えられたわけでもないのに、こんなところにあるわけないよね? というところを何回も探す癖がついていた。多分小さい頃、痛い目にあったんだろうな。
こんなところにあるわけないって思いこむと、そこを探さなくなる。盲点になってしまう。
これって、実は物の話だけじゃないんじゃないかな。
例えば、幸せ、とか。
ちょっと前の私は、ここじゃないどこか、今じゃないいつかを求めて苦しんでた。
もっと幸せになるために勉強しなきゃ、本読まなきゃって休みの日も必死な顔して一人部屋に閉じこもってた。家族との時間も取らずに。
理想の自分と現実の自分のギャップに苦しんでいた。
あるとき湯船につかりながら、自問自答してみた。
「どんな生活なら満足なの?」
「ゆったりと家族で過ごす休日がずっと続くように生活したい」
「それ、今でもできるよね? 少なくとも休日をそう過ごすことはできるんじゃないの? なんでしないの?」
衝撃だった。
先のことばっかり考えて今を全然楽しんでいない自分に気が付いた。
「今を楽しめてないのに、そんな生活が未来に来るかな?」
「いや、こないね。そうか、望む生活の一部はすでにかなってるんだ。」
そう思ったら急に暖かい気持ちが体の中から溢れてきた。
「ああ、幸せだなぁ」
思わず口からでた。
未来ばっかり見て幸せを探してて、今この瞬間、というのが完全に盲点になっていたらしい。
今を楽しめない人は未来も楽しめない、と今なら思う。
何かを一心不乱に目指すのも必要だし、何かにがむしゃらに取り組むのも素敵だけど、たまには立ち止まって「そもそもなんのためにこれを目指してたんだっけ?」と思い出してみることも必要かもしれない。
手段と目的が入れ替わってたりするかもしれない。
家族の幸せのために働いていたはずなのに、いつのまにか働くために家族を犠牲にしたりしているかもしれない。
自分の中で盲点になってしまった場所に気づくことで、探していたものを見つけられるかもしれない。
あなたの探しているものは何ですか?
あなたの盲点を探してみて下さい。
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