人生は、ゴールの見えないあみだくじだ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:Misaki(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「Misakiさん、あれもこれも一気には、できないのよ」
図星だった。
それは、今一番、人から言われたくない言葉だった。
私は、ナナさんという女性とビデオ通話をしていた。
彼女は、30年近くニューヨークに住んでいる。60代の女性だ。
私は2018年に入って、一気に色んなことをやり始めた。
3月にそれまで働いていた会社を退職した。
肩の荷が降りた気持ちになって、心機一転、がんばってこうという気持ちだった。
それから、時間と心の余裕ができたことで、一気に多くの情報が入ってくるようになった。
もともと好奇心が強いこともあって、どんどん新しいことに興味が出てきたのだ。
4月から今日までに色んなことを始めたつもりだった。
カメラを買った、農業に興味を持って体験に行った、ライティングゼミを受講し始めた、WEBデザインを学ぼうと決めた……などなど。
趣味も含めると、数えきれない。
でも、どれも中途半端になっている。
やりかけのことがあるのに、次々と新しいことを始めてきてしまったのだった。
そして、見事にドツボにハマって、すべて最初だけ手をつけてそのままになってしまっている。
ナナさんと出会ったのはFacebook上のあるグループがきっかけだった。
オンラインで話をするようになって、色んなことを教えてもらった。
食のことやビジネスのこと、セルフケアのこと、アメリカでの暮らしや社会の様子……私よりずっと長く生きてきた人の話(しかも海外)を聞くのはとても刺激的だった。
ある日、私がこれからの仕事や生き方で悩んでいることを相談した。
今年に入っていくつも興味のあることをやり始めたこと、今もまた、あれこれやりたいことが見えて迷っていること……。
「私もね、若い頃はそうだった。色んなことに興味があって、どれも一度にやろうとしてたの」
ナナさんの経験では、それはうまくいかなかった、という。
「興味がどんどん出てくる気持ちはわかるけど、今のMisakiさんは、向かう方向が定まっていないように見えるの。それがとても心配」
彼女が真剣に話をしてくれているのが伝わってくる。
そして、私が自分でも思っていたことをズバリと言い当てられた。
「Misakiさん、あれもこれも一気には、できないのよ」
グサリ、と音が聞こえるんじゃないかと思うほど、この言葉は私の胸に突き刺さった。
言われたくなかった。
自分でも薄々わかっていた。
なにより、こんな状態で先が描けていない自分が、恥ずかしくて仕方なかった。
同時に、誰にも言わずに隠したかった自分の問題を、そうやって誰かに指摘されたことに安心もした。
どうやって改善していけばいいのか、ヒントが見つかりそうに思えたのだ。
私は昔から、そうだった。
あれこれ、楽しさや興味にひかれて一気にやり始める。
でも表面だけかじって、続けることができなかった。
そして続けられない言い訳を探すように、また新しいことをやり始めてしまうのだ。
これじゃあ、いつまで経っても経験値はたまらない。
自分の興味があることをしたい、好きなことを仕事にしたい、もっと楽しく生きたい……。
そう思って、理想ばかり高く描いて、夢を持っている自分に安心してしまっていた。
色んな気持ちが一気にあふれてきて、私は気が付くと泣いていた。
「Misakiさん、今は少し我慢して、一つひとつやっていきましょう。今日、明日に成果はでなくても、毎日続けていくことが大切。そして、いまできることをやっていくの」
その通りだと思った。
私にこれまで足りなかったのは「我慢」だったんだと気が付いた。
ナナさんとの会話のあと、私は一人深呼吸をした。
――そうだ、今できることを一つひとつやっていくのだ。
それが積み重ねになっていく。
一度にすべてはできないのだから、まずは一つやることを決めよう。
私は、いま新たに始めたくなっていたいくつかのことを、やらないという「選択」をすることにした。
その代わりに、今年始めたことのうちの一つを続けていこう。
そう思うと、気持ちが少し楽になった。
やることが分かると、それ以外の興味があるものが見えても、惑わされずにいられるようになるのだろうと感じた。
人生は、あみだくじのようだなと思った。
私は、毎日なにか選択している。
やる、やらない、興味をもつ、もたない、どれも選択肢として私の前にあらわれてくる。
そして、一度に、一つしか選べない。
どっちに進むとどうなるかは、わからない。
私はこれまで、一度に複数の選択肢を選ぼうとしていたのだ。
なんでかなと考えると、失敗したくないからだった。
こっちを選ぶと、あっちの選択肢が消えてしまう、それがこわかった。
でも、一つ選ばないと、進むことさえできないのだと気が付いた。
あみだくじをなぞる指をすすめるには、とにかく次の線をなぞっていくしかない。
その先がどこにつながっていくのかは分からないし、ゴールは見えない。
もしかしたら、いま選ばなかったものに、いずれまた出会うかもしれない。
そのときは、また考えればいい。
ぜんぶ、私次第だ。
日々なにかを選択することを続ける限り、私のあみだくじは続いていく。
そしてそれが、私の人生になっていく。
この日、ナナさんからもらったアドバイスのおかげで、私は一つ、選択をすることができた。
「一つのことに集中する」という道を選んで、私はまた前へ進みはじめた。
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